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会計士が海外派遣の夢をかなえる方法【監査ガチ勢向け】

「海外派遣を希望しているのにチャンスが来ない」とお嘆きのあなた。できる努力は全部できていますか?


監査法人で30年強、うち17年をパートナーとして勤めた「てりたま」です。
このnoteを開いていただき、ありがとうございます。

私も監査法人から海外駐在したのですが、当時の人選はめちゃくちゃいいかげんでした。しかも昇格が難しそうな人を海外に派遣し、どさくさに紛れて昇格させる、といったうわさも。(私がそうだったのか、自分ではよく分かりません……)

今はどの監査法人も組織的に人選しています。
その選考過程をハックする方法を考えました。



海外人事担当パートナーの目から見てみると

顧客目線のない営業マンに、物は売れません。
これと同じで、海外派遣者を選ぶ責任者の立場を理解していないと、「海外に行かせてください」と言い続けても選ばれません。

海外人事担当パートナーは何を重視しているのか。
派遣元監査法人の事情、派遣先の事情、候補者の顔ぶれなどによって状況は変わりますが、一般的には次の3つが重要になります。重要なもの順です。

❶ 帰国後活躍が見込めるか
❷ 派遣先での活躍が見込めるか
❸ これまでの貢献は大きいか

まずはこの3つにしっかりと対策できていることが正攻法です。


正攻法❶ 帰国後活躍が見込めるか

海外人事担当パートナーとしては、海外派遣中よりも、帰国後の活躍の方が重要です。帰国後の年数の方がよほど長いからです(すぐに辞めなければ)。

このため、あなたが帰国後活躍できる人だと思わせないといけません。

優秀だと認められる

今の仕事が海外と関係あってもなくても、そこで優秀だと認められていないのに、帰国後見違えるように優秀になるとは考えられません。可能性はゼロではないですが、もっと評価の高い人が先に選ばれてしまいます。
まずは目の前の仕事に一生懸命取り組んで成果を上げ、高い評価を獲得することです。

帰国後に監査法人で活躍するイメージを明確に描く

要するに海外人事担当パートナーに「この人は帰国後に活躍してくれそうだな」と思わせればよいのです。
想像力を駆使しなくてもイメージできるように、手伝ってあげましょう。

実際は帰国後すぐに辞める予定があるかもしれませんが、そんなことを言っていては選ばれません。「監査法人でばりばり働きまっせ」という前提でイメージを描く必要があります。

個人的には帰国後も監査を続ける人が増えてほしいのですが、海外にいる間に「やっぱり監査で頑張ろう」と心変わりしていただくことに期待しています。


正攻法❷ 派遣先での活躍が見込めるか

派遣先での仕事ぶりが期待外れだと、派遣先事務所から日本にクレームが来るかもしれません。海外人事担当パートナーとしては避けたい事態です。
大活躍してもらわなくてもよいのですが、文句が出ないようにはがんばってもらう必要があります。

したがって、派遣先でそこそこは活躍できる人だと思わせないといけません。

英語をがんばる

英語圏はもちろんですが、そうでなくても英語でのコミュニケーションが必要になる派遣先が大多数です。
最初からストレスなく英語で仕事ができる人なんてほとんどいません。行った先でがんばることにはなりますが、それにしても発射台として現時点の英語力が高い方が有利です。

TOEICは900点台を目指しましょう。
TOEICで本当の英語力が分かるのか、という議論はあります。事実、試験対策だけでもある程度は伸ばせます。
しかし、数字の力は絶大です。ライバルが軒並み900点なのに、一人だけ830点ではかすんでしまいます。

さらに、仕事で英語をバリバリ使っているとか、1か月短期留学をしてどれくらい英語が使えるようになったとか、も売りになります。

タフさを証明する

海外で働くと、日本とは違うプレッシャーがあります。
もともと胃痛などなかった私も、海外駐在時には胃薬が欠かせなくなりました。
タフな環境で心身の健康を維持できることも、重要なポイントになります。

会計士の私が言うのは手前味噌になりますが、日本の会計士は優秀です。英語さえ何とかすれば、能力的には海外で十分に活躍できます。
ただし、それも健康があってのこと。

前述のように高評価を狙うためには、これまで以上にがんばることになるでしょう。厳しい環境でも大丈夫、という実績を作っていきましょう。

正攻法❸ これまでの貢献は大きいか

海外派遣は、ご褒美旅行ではありません。
まずは帰国後活躍できるか(❶)、派遣先で活躍できるか(❷)が検討されます。

しかし、がんばって法人に貢献してきた人には報いたい、という気持ちが生じるのが人情。
そこに訴えない手はありません。

高評価をゲットし、タフな仕事ぶりの実績を積めば、おのずから法人への貢献度も大きくなるでしょう。


なお、「ライバルを知る」を正攻法に入れるか、迷いました。
ほかの候補者が分かっていれば、有利な点をアピールし、見劣りする点をカバーすることで勝ち抜ける可能性が高くなります。
しかし、候補者の顔ぶれは分からないことが多く、顔ぶれが分かってもスペックまではなかなか分かりません。
また、候補者の中からは該当なしという結論になり、それ以外から探すということもありえます。
そんなことを考えて、外しました。


正攻法に加えてやるべきこと

取り組むべき最優先の3つを繰り返します。

❶ 帰国後活躍が見込めるか
❷ 派遣先での活躍が見込めるか
❸ これまでの貢献は大きいか

これだけでは十分ではありません。
ほかにもやるべきことはあります。

主要関係者へのアピール

選考について実質的に決定する人や決定に重要な影響を与えられる人を見極めて、アピールします。
こんな動きはイヤかもしれませんが、企業でも官庁でも、大きな組織を動かすときには誰もが当たり前にやっていることです。

誰にアプローチするかが決定的に重要です。
ひょっとすると海外人事担当パートナーは取りまとめをしているだけで、決めるのはほかの人かもしれません。組織図上の役割と実際の権限が必ずしも一致しないのが組織の難しいところであり、おもしろいところでもあります。

そのパートナーへの接点がどうしてもない場合は、その人に重要な影響を与えられるパートナーを探してアプローチしましょう。

派遣されない理由をなくす

正攻法としてお話しした「帰国後活躍できる」「海外で活躍できる」「すでに貢献が大きい」をクリアし、主要関係者にアピールできても選ばれないことがあります。

そんな理由の一つは、所属する監査チームから「今は出せない」と言われてしまうことです。
将来有望な人に抜けてほしくない、という気持ちは分からないでもないですが、身勝手と言われても仕方ない「上司ブロック」。

こんな不幸な状態におちいらないように、上司ブロックになりそうかどうか、上司とメンバーの動向をよく見定めないといけません。
上司には海外希望を何度も伝えるとともに、自分がいなくなったあとのことも考えてメンバー追加を進言したり、育成したり、手を尽くします。

選べれないもう一つの理由は、「行き先へのこだわりが強すぎる」ことです。
同行する家族などの状況もあるので単なるわがままではないにしても、行き先が限られると選ばれるチャンスが減ってしまいます。

どうしても無理な派遣先は伝えておく必要はありますが、ターゲットはできるだけ広範囲にしておく方が派遣される可能性が高くなります。


お勧めしないこと

逆にお勧めしないこともお伝えしておきましょう。

一番は、「退職をちらつかせる」ことです。
「自分の目的のために人を脅すようなやつ」だと思われて海外派遣が遠くなるばかりか、そのまま法人に残っても、退職しても、しこりが残ってしまうかもしれません。

「海外に行きたい」という熱意を何度も伝えて「ひょっとすると、海外に行けないと辞めてしまうのでは」と心配させることができるとプラスになります。


おわりに

私は、大手をはじめネットワークファームがある監査法人に所属する以上は海外を目指していただきたいと考えています。
いろいろ面倒に思われたかもしれませんが、帰国後監査法人に残っても、ほかの道を選んでも、努力して海外派遣を勝ち取ってよかったと思えるはずです。

これを読んでいただいた皆さんの中から、海外派遣の切符を手にする人が続出することを期待しています。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。
この投稿へのご意見を下のコメント欄またはTwitter(@teritamadozo)でいただけると幸いです。
これからもおつきあいのほど、よろしくお願いいたします。

てりたま

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