さよならイオンつくば駅前店。

なじみの大型スーパーが、1月末をもって営業終了した。約30年前、万博の開催とともに意気揚々と開店した(と思われる)スーパーは、ここ数年でさらにすすんだ開発による郊外化と、車で行ける場所に新たな商業施設が立ったことで急激に売り上げを減らし、ついに先月末に閉店となった。

その最終日、友達とする鍋の買い出しで、私はスーパーを訪れた。

1月末日の営業最終日。日もすっかり落ちた18時半ごろ。閉店が決まってから、スーパーでは連日、閉店セールが行われていた。家電や自転車なんかも安売りしていたからか、店周辺では大きなオーブンの箱をキャリーに乗せて誰かを待つ女性を見かけた。

入り口では、従業員が「本日が最終営業日となります。長年ありがとうございました。」と来店する客に声をかけていた。いつも見かける赤紫色のエプロンと三角巾の店員だけではなく、普段は見かけないようなジェルでしっかりと髪形を決めたスーツのおじさんも店頭に立ち、マネージャーのような人と談笑しているのを見かけた。入店すると、食料品棚の1/3はすでに空になっていて、空いたケースや棚には、赤地に黄色で『閉店セール!』と書かれた紙が貼られていた。

店員も、客すらもなぜかそわそわして見えた。牛乳や生鮮食品、チーズの安売りがアナウンスされると人がそこに群がった。ギラギラした目をした人を何人も見かけた。みんな、何かを探していた。

いつもとは違う店の雰囲気のなかで、レジだけがいつも通りだった。レジ袋の購入やWAONカードの有無を聞きながら、しゃぶしゃぶ用の肉や1/4で98円だった白菜を淡々と移動させる店員。支払いを済ませた後「長年ありがとうございました」位は言われるかなと思ったが、店員はあっさりと次の人の買い物かごに取り掛かった。勝手に空振りした気分だったが、たぶん、きっとそれが本来の姿なんだろう。だってスーパーは私たちの毎日なんだから。戦利品を手に、私はスーパーを後にした。

閉店したスーパーは大型店舗だったためか、家電製品の品ぞろえもよかった。大学生になる春、一人暮らしを始めた私は白い組み立て式本棚を二つそこで買った。家から一本だけ持ってきたドライバーを使い、一人で組み立てた。大人になった気がした。

数えきれないくらい友達と食べた鍋の買い出しでは、いつもふざけながら鍋スープを選んだ。火曜の安売りの日には、夕方の授業後にスーパーめがけて自転車をこいだ。24時の閉店ぎりぎりにすべりこんで、割引シールが貼られた弁当を買った。それらは全部、わたしの毎日の一部だった。

きっと、あのスーパーができる前にはきっと別の店があるのが日常だった。でも、その日常を私は知らない。私にとっては、あのスーパーがある風景が日常だった。そして、3月には私もこの街を去る。4月からは、スーパーのない日常を過ごす人が、この街で毎日を過ごすのだろう。

きっと、毎日はそういう風に始まって、終わっていくんだろう。もうすぐでいったん全部、さよならだ。そしてまた始めるのだ。どこかで私の毎日を。ここではないどこかで。


サポートしていただけるとうれしいです。サポートは読みものか、おいしいものに使わせていただきます。