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どうぶつの森みたいな日々を。

「ひとりでやることが、一番簡単なんだよ。」

当時やっていたサークル活動のイベント運営委員になった私が、運営の仕事を割り振っても動いてくれない人たちへの愚痴をこぼしたときに、先輩にそう言われたことがある。

ただ単に「たいへんだな」と慰めてほしかったのに、咎めるような雰囲気のその一言に、ちょっと反発したくなった。

「どういうこと?」

たぶん、眉をひそめていた。でも、そういう私の態度も許してくれるくらい寛大な先輩だ。

「企画を考えるときに、一人でやるとなると、思いつくこともできることも自分の手の届く範囲のことだけなんだから、それをやればいいだけだろ?自分以外の人がいると、できることもやれることの幅も増える。でも、人が複数いたら調整は絶対に必要になるだろ。その調整が嫌で文句言うなら、一人で全部やるって決めて、自分の中で全部完結させろよ。」

一人だって、思いついたことを自分でできる位には自分の能力を高めなくちゃいけないけど、自分で思いついたことを実行できないのは能力不足だから他人のことは恨めないしな。

そんな風にとどめの駄目押しまでされた。胃がぎゅっとつかまれたみたいな気分。

でも、その言葉で目が覚めた。

裏を返せば、ひとりではできないことが複数ならできるようになること。ただ、めんどくささはつきまとうけど。

私にないやさしさで後輩と接していた同期のことを思いだした。たしかに、たまに喧嘩もするし、投げ出したくなっちゃうこともあるけれど。それでもひとりよりふたり、がいいな。なんて、どうぶつの森のキャッチコピーみたいなことを思った。

6年経っても、あのときの会話をわたしは鮮明に覚えている。そして、なんとなく人と関わることの拠りどころにしている。

一人では見られない景色を、私ではない人が見させてくれる。行くのには面倒なこともあるし、自分の知らない道を歩くとなるとそれなりにしんどい。でも、それを乗り越えたときに見られるものがいつもうつくしくて、なんだかんだ誰かと一緒にいてしまう。

目的地に早くたどり着くには一人で、目的地を越えて遠くへ行くにはみんなで。でも、私は欲張りだから、できれば、この1年はどちらも積み重ねていける日々になったらいいなと思う。



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