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罪とバツ

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どこにでもある煩悩と傲慢と喪失の物語
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#不倫

罪とバツ

罪とバツ

2.訴状二年前の冬、それは届いた。

よりによってオレのいない時間に。書留で彼女と娘がいる時間に。裁判所からのスタンプのついた事務的な書面には、申立人としてオレの部下の男の名が記載されていた。

しまった。

「誰なの?あなたなにしたの?」

案外と人間はこういう時、妙なことを記憶している。彼女が顔の前で組んだ指がわずかに震えている。手入れの行き届いた爪がテーブルライトに映えて綺麗に見えた。

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