見出し画像

ハンバーグ

この前、新宿の某ハンバーグの名店に行ってきた。開店直後に向かったがもう列ができていた。わたしたちはハンバーグを楽しみにしていたので並ぶことにした。1時間ほど並んだところで店内に通された。注文は並んでいる間に聞かれていたのですぐにランチのミネストローネが運ばれてきた。くず野菜に甘いトマトの香りは十分に満足する味であった。スープが食べ終わる頃、ハンバーグが運ばれてきた。そのハンバーグは俵形で肉汁が詰まっていそうなパンパンのハンバーグだった。わたしはそのビジュアルに感動して何枚も写真を撮った。味も今まで食べたことがないくらい上品な味で並んだ甲斐があったなあと思った。そのハンバーグを平らげたわたしはほくほくの気分になっていた。




次の日、美容院へと吉祥寺へ出かけた。最近気に入ってるパーマをかけてもらって持ってきたスカーフを巻いてもらって超可愛くしてもらった。せっかくだからご飯を食べて帰ろうと思った。一軒の喫茶店に入った。そこはこじんまりとした店内でカウンターの席も四席しかなかった。お店のロゴがプリントしてある冷蔵庫がかわいい。カウンターの奥では腰が90度に曲がったおじいちゃんが一生懸命料理をしていた。マスターだろうか。メニューを見るとどうやらハンバーグが売りらしい。でも昨日あんなに美味しいハンバーグを食べてしまったわたしはハンバーグを食べる気にはなれなかった。その代わり、店名のついたランチプレートを頼んだ。運ばれてきたプレートは、サラダにナポリタンの上のウインナー、ちくわの揚げたやつ、骨付きチキン、しゅうまい、お麩のような揚げ物、そしてミニハンバーグ。お味噌汁も付いてきた。まるでお子様ランチのような、当たりの日のお弁当のような、具材だった。ひとつひとつの具材とライスを交互に食べ進める。どれも何の変哲もなく美味しかった。最後にミニハンバーグを食べた。わたしは安心した。昨日のハンバーグももちろん美味しかったけれどわたしはこのハンバーグが好きだと思った。昨日、実はすごく背伸びしてそのハンバーグ店に行った。背伸びした人と。わたしはその人とこのお店のハンバーグが食べたいと思った。付け合わせはミネストローネじゃなくて味噌汁だけど、このハンバーグは有名店の何倍も価値があるハンバーグだと思った。もうその人とこの喫茶店のハンバーグを食べることは叶わないけれど今度誘う人とはこの喫茶店のハンバーグを食べたいと思った。

#創作大賞2024

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?