見出し画像

映画独り言。(怪物)

午前中に時間が取れる日があったので、映画「怪物」を観てきた。
多少ネタバレに触れるので、これから鑑賞予定の方はご注意ください。

カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞した、ただそれだけの前情報だけで観に行った。

ストーリーについては詳しく触れないが、3部構成の脚本。
最初は母親目線、次に先生目線、ラストは子供目線。

脚本は非常に良く練られていてさすがだな、と思った。
同じ時間が流れているのに、見る角度を変えたらこれほどまでに話が変わってしまうのか…

一見、何の変哲もない言葉も、無責任であったり酷く相手を傷つけてしまう。

校長先生から発せられた幸福論に私はとてもグサリと傷付いてしまった。
そして、マイノリティーを抱えた人間に希望はなく、生まれ変わるしかないのではないか?とも受け取れるラストシーン。

確かに素晴らしい映像美。素晴らしい坂本龍一の音楽。
二人がようやく手に入れたのはユートピアなのか?

心にグサリと刺さったまま観たラストシーンは、なかなかのしんどさがあった。

少し前に観た東海林毅監督の「老ナルキソス」は非常によかったと改めて感じた。
老ナルキソスはLGBTQ+の後進国、日本に警鐘を鳴らす作品。
監督が当事者なので、当事者目線で描かれている。

警鐘作品は世に溢れかえっている。ただ、当事者が求めているのは、マイノリティーが排除されない世界。
当事者であっても、幸せを手に入れる事ができるという内容なのだ。
舞台挨拶の時、客席から出た質問で
「質問というか、感想です!私はクィア映画を何本も観てきたけど、必ず誰かが死ぬんです。でもこの映画は死ななくてよかった」

という言葉があった。

怪物は、マジョリティーとかマイノリティーを意識しているわけではないと公言されていたが、果たしてどうなのか?

モヤモヤが止まらず、沢山の考察動画を見漁る。

受け取るのは観た人次第の映画だからこそ、色々考えさせられたのだろうか?

世の中は、変わらなきゃいけない。
もう何十年も前からそう言われている。でも何も変わらない。

それはもう、みんな知っているのです。

どうしたら良いかわからない、わかっているけど出来ない。
ではどうすればよいのか?

考察動画で知ったのが、パンフレットから読み取られた映画からカットされたシーン。これが映画にそのまま描かれていたら、もっと失望していたかもしれない。
なんとなく、私の好きな銀河鉄道の夜ぽいなと考えていたので、死をイメージしてしまった。
どちらにも解釈が出来る構成になっていた。

映画の脚本や俳優の演技はとてつもなく素晴らしかった。
しかし、私の中にグサリと大きな爪痕を残す映画の一つとなった。

この記事が参加している募集

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?