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書籍: サブスクリプション2.0

『サブスクリプション2.0』 日経クロストレンド編

サブスクモデルのサービスの増加に伴い関連書籍も増えてきているが、この本のように分野別に整理した成功例を挙げつつ、失敗したらどう撤退していくか(出口戦略)まで整理している本は、まだ少ないと思う

この本では、衣食住動楽という以下分野でサブスクサービスを整理し、各分野を代表するサブスクサービス例と、その特徴を整理している。

5つに分けられたサブスクリプションサービス

1.衣: 洋服、鞄、腕時計、眼鏡、ネイル
2.食: ビール、コーヒー、食材
3.住: 借家、家具、シャンプー、コンタクトレンズ
4.動: 自動車関係(タイヤのサブスク含む)
5.楽: 動画配信、電子書籍

(コンタクトレンズなんかは「衣」じゃないかと思うのだが、住の多様性とボリュームを出すためにそちらに区分されたのかな…)

撤退例(1) suitsbox

❶ターゲットのズレ

AOKIは、サービス立ち上げ時に想定していたターゲット(20~30代)と、実際の利用者層(40代~)がずれていた。サブスクによって新規顧客を引っ張りたかったが、既存顧客が食いついてしまい、従来サービスの売り上げ減などの影響を与えかねない結果になった部分は、分野を問わず考えるべきポイント。

❷商品構成のバリエーション

AOKIとしては既製品の有効活用を考えており、もっとバリエーションを増やして欲しいというユーザの期待値と会わなかった。これにより、顧客満足度が下がりLTV(顧客生涯価値)が低下してしまったことについては、ターゲットがずれていたことを含めて事前の市場調査不足の感がある。

❸運用コスト

物流網をAOKIがもっておらず、倉庫代行サービスをアウトソーシングすることで、立ち上げコストを抑えた事業モデル構築を目指したが、想定内には収まらなかった。顧客離れが始まると、運用コストが収益と合わず赤字化するのはあっという間だというところに注目したい。

撤退例(2)男性用カミソリ

米国で成功したDollar Shave Club(DSC)のビジネスモデルを国内導入したものだが、新規顧客数を十分確保できなかった。要因としては、米国とは市場が異なることが大きいと分析されている(日本国内では気軽にコンビニやドラッグストアでかみそりを購入できるが、米国ではカミソリは武器になりえるため、鍵付きケースに入っていて店員に開けてもらう店舗も多い)

サブスクは期待値の試算が難しい

提供する側としては、顧客が何か月間加入し続けてくれるかをどう試算するのかが最も難しい。しかし、試算できないとサービスの料金と提供するもののクオリティが決められないため、仮定するしかない。つまり、仮定して小さく動き出し、素早くフィードバックをかけるリーンスタートアップで立ち上げていくべきと考える。

成功しているモデルで面白かった事例

❶後発なのに成功した、レナウンの「着ルダケ」

こちらはAOKIの後発にも関わらず成功したスーツレンタルサブスクリプション。成功したポイントは顧客の要望に応えて、低コストながら新品のスーツを、セミオーダーで提供したこと。そして、交換サイクルを半年に1度に下げて運用コストを抑えたことも大きかった。

❷顧客によりコンテンツを充実させる、ユニックの「YourNail」

3万点を超すデザインから選択できるネイルシールサブスクリプション。自らがデザインを作れて、さらにそのデザインをサービス上で公開して他の利用者も注文できる仕組みは、Suzuriや、あつまれどうぶつの森にも見られる形態だが、これは利用者が増えるほど購入できるデザインも増加することで、継続利用に繋げるSNSにも共通するサービス形態。

❸月額4万住み放題、アドレスの「ADDress」

全国の契約施設にどこでも住み放題の多拠点コリビンクサービス。1親等以内は追加料金なしで家族で滞在できる。都市群からの週末の利用を想定しており、地方活性化にも期待がかかる。空き家問題を解消したい地方自治体とも連携しつつ規模拡大を狙う。


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