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海の町で育ったわたしにとって、ここの匂いは故郷と同じ。
でも人との距離感、仕事への熱量、活気溢れるこの町は、少しずつ違う気がする。
思い切って輪の中に入ってみる。会う度に知る『顔』があり、快く受け入れてくれる人達の寛容さに驚く。
一瞬で過ぎ去る日々を立ち止まり、いま一度目標の確認をする。


『自分の店を持ちたい』
始めは自分を表現する場所、自由に働ける環境がただ欲しかった。
活気ある粋な大人達と接しながら変わる店のイメージ。商売をする。お金を頂く。
気になったのは未利用魚の話し。売り物にならない魚のほとんどは海に破棄されるらしい。
どう料理すれば美味しく食べられて、価値あるものに変えられるのか、その術を今、学んでいるのに。
まだ見ぬ漁場を想像して、港に届いた魚を見ていた。

未利用魚となる鰯

新鮮な魚を手に、『作業』に追われそうになる。一呼吸置き、思い出す。今手の中にいる魚が生き物で、誰かが食べること、仕事に誇りを持った職人たちの手で、水揚げされていること。
自分本位にならず、食べ手や関わった人達を想いながら、商売をする。そして、『循環する』手助けができたなら、お店は完成するのかもしれない。
そんなことを考えながら、今日も包丁を握る。

シェアハウスでの料理

(文:島食の寺子屋生徒 田村)