6月振り返り④(フリートーク)
振り返りトークも90分を越えたので、気楽にフリートークへ。料理ができるようになりたいゆえの悩みや、食育と日本料理の繋がり、今後の生徒の自主企画など。
聞き手:恒光(島食の寺子屋・受入コーディネーター)
話し手:出野、武田、三橋(島食の寺子屋生徒)
武田:みんなの話を聞いてて思ったのが、私はゴールが見えてなかったと思うんですよね。
たぶん、「こうしたい」っていうのが自分の中で思い描ききれていなかったのかもって、思いました。
出野:時間もなかったし、経験もなかったし。
武田:それは大きいと思う。とりあえずこなしたみたいな感じになった感がすごいあるかも。だから、次もしも何かやるってなったら、また違う取り組み方ができるなって思ったな。答えが見えてなかったから、先生にもすごい頼ったんだろうし。自分のもの感がなかったのかなって、作りおえたあとに。お弁当に関しては。
恒光:武田は悩みがちだね。
武田:わたしは考えすぎちゃいます。
恒光:出野と三橋からみて、武田はどんなタイプの人?
武田:え、わたしはどういう人ですか?(笑)
出野:私が武田さんと同じ立場だったら、まったく同じ悩みをすると思う。
みんな共通の悩みを持っている。いっぱいいっぱいだった。
武田:うーん、常日頃考えすぎちゃってるのかなって思っちゃう。
恒光:前にも話したことだけど、何を習得しているかわからないって悩みは聞いていて、でも「今までやってきたことを信じるしかない」っていうのを、恒光と長谷川で武田に伝えていた記憶があって。
習得ということが0から100の指標であるとして、100のものが手に入らないと人間って不安になりやすいのかなとも思う。
去年の卒業生の取材記事が、いま校正にあがってきているところなんだけど、去年のことを振り返る良い機会になって。
「一年で全てを習得しようとしていた」というインタビュー部分があって。
それは、寺子屋へそれなりに高い学費も払っているし、会社員も辞めるという決断もしているし、自分への責任感が出てきているのはすごく感じる。そうすると、この1年間で100を学ばなきゃいけないってマインドになりがちで、100のものがないと焦ってしまいがちだったのかも。
でも、鞍谷先生がよくいうのは、100にしていく為の、全ての1の大事な部分を寺子屋で伝えている。包丁の使い方から五味五法のところの、経験をこれから積んでいく為のプラットフォームみたいなもの。100にしていくのは、お店に入ってから時間をかけて100に上げていくものだって。
そういう100へのアプローチをする学校なんだって、改めて自分でも認識できた。
武田:先生の言っていることも分かっているんですけど、ここで100まで学べるとも思っていないし、その土台作りというものだって分かっているんですけど。分かっているけど、土台の中にも1の中にも段階があるわけじゃないですか(笑)
それを自分は積めているのかな?って思うし。
恒光:繰り返し練習することが大事なのかな?
武田:もちろん繰り返しは大事だと思うから、みんなのお弁当も繰り返した来た中で、作るものが違ったとしても、出汁巻きは出汁巻きで繰り返しているし、揚げ物は揚げ物で繰り返しているし。
揚げるものが違っても、繰り返す中で前はこうだったからこうだなとか、やっていく中で自分の中に入ってくるし。もうちょっと、こうしたら良かったなみたいなものも、身に付いてきているし覚えてきているものもあるけれども。なんなんだろう、自分が何にモヤモヤしているかわかりません。
恒光:だって、まだ料理始めて3ヵ月だしね~。今まで料理に触れたこともなかったんだし。
ちなみに、みんな入ってみて想像と違っていたこととかある?
想像通りってことって、まずないと思うんだけど。
武田:だって、想像すらつかなかったですもん。そんなに想像して来たわけじゃない。
出野:うんうん。
武田:うーん、想像して来たわけじゃないから、どんなんなんだろうって。だから、ここのやり方に対して、「もっとこんなはずだった」とかあんまない。「こういうもんなんか」って。
三橋:どれくらいの到達点に行けるのかって、そもそも想像できないからこそ、自分がいまどこにいるのかがわかんなくて、不安になる(笑)
武田:そういうことなのかな、そういう不安なのかな。
三橋:言葉に言い表せないからだよね。どれくらいまで、できるようになりますって提示されているわけじゃないから。だから、自分がどこまでできるようになったらいいのかとか、わからないから。
武田:何に対しても同じだけど、「これで良いや」って思ってしまったら終わりじゃん。
だし、もっと良くしたいの気持ちがあるからこそ。味もそうかも。「美味しい」って思ってしまったらそこまでやし、自分自身すら腑に落ちていないから、こんな段階で腑に落ちるなんて絶対にないと思うけど、さらに良くしていきたいってことも全てと思うから、自信もないし。もっともっとって、何に対しても思うから。
でもさー、休みの日とかも色んな予定が入るし。
三橋:すごいわかる。
武田:自分がなにを優先するべきなのかなーとも思う。でも、いろんな機会をもらえるなら、それを無駄にしたくないと思うのも事実だし。でも、もっと授業の中で腑に落ちていない部分を探りたいし、振り返りたいって思うのに、そういう時間がとれてないとも思うし。
三橋:うんうん。
武田:もっとなんかシンプルに楽しまなきゃ、っていうライトな自分もいたり。
恒光:うん、みんなの想像していた島食の寺子屋に、どれくらいお付き合いしたら良いのかなとは思っていて。出野が前の飲み会で、卒業後は食育の道に進みたいって言ってて。それと島食の寺子屋での学びって、どう繋がるのかな?って少し気になる。
出野:繋がっていますよ。食育は全てですから!
食って本当に広くて、全部ですね。食器でだって全然食育できますよ。
最近ワンプレートみたいなんが増えてきているじゃないですか、家庭でも。
洗い物が楽だし、お洒落だし、映えるし。
でも、それは子供にとったら一汁三菜という主食があって、日本人はそういう食卓を囲んできたじゃないですか。一個ずつちゃんとセットがあって。それって発達にも影響が大きくて、ちゃんと持つ力とか。ワンプレートだったらそのままだし。色々繋がっている。発達にも繋がっている。
恒光:そういうのは自分で調べるの?
出野:前職での知識ですね。
本当に一見関係がなさそうなところでも、繋がっている。
恒光:へー、10個くらい具体的に聞いてみたい。
寺子屋に来て、これはゆくゆく伝えられることだなって思うこと。
出野:魚でいうと、食べる時、給食とかでも、やっぱり切り身で全体像は見えないし、獲ってきた人もわかんないし、どこで獲れたのかも見えづらいも問題としてあったりとか。
あと、骨がちゃんととってある魚。まあ、ここでも骨を取りますけど。でも、そういう魚ばっかり食べていると、魚の骨をうまく舌で転がして出せなくなる。自分たちはできるじゃないですか、経験してきたから。でも、できない子供が増えてきているんですよ。だから、魚の骨を喉に詰まらせて病院に運ばれてしまう子も増えてるし。
恒光:小さい頃はよく魚の骨が喉にひっかかった記憶がある。食事の途中に「うっ」ってなって。親に気持ち悪いって伝えたら、「魚の骨くらいで何を言うてんの。はよ飲みこんでしまえ!」って怒られて(笑)
怒られながら、おえおえ言いながらなんとか飲み込んでたなー。
出野:それで魚を嫌いにならなかったんですか?
恒光:嫌いにならなかったね~。
出野:それは良かったですね(笑)
でも、そういうのがきっかけで嫌いになっちゃう子もいるんですよ。
よかれと思って骨を抜いちゃうと、そういう発達する機会を奪ってしまう。
それで、結局嫌いになっちゃうことになるじゃないですか。
武田:ある程度の年齢まででいいんですよ、それは。骨とかとってあげるのは。小さい子はできないし危ないからとってあげるけど、ずっとそれはね。
恒光:なんで食育をしようと思ったの?
出野:うーん。大学を卒業するときに、私はなにがしたいんだろうって悩んで、めっちゃ自己分析して、めっちゃ考えた結果、わたしは病気の人とかを治す道もあるけど、健康な人を健康にしたいみたいな。
健康な人を作りたいという言葉しか出てこない。
みんな、健康になってほしいんです(笑)
それをする為には、どうしたらいいのかなと考えた時に、人間の幼少期の食生活って基盤になるすごい大事なところと思って。それで、保育園の栄養士を選んだんです。
それで、働きながら色々と勉強することがあって、働きながら今の子供たちの問題を見てきて、なんかこのままじゃダメだなー。って。
恒光:それと日本料理って交わりあうの?
出野:はい。
恒光:ぜひ、教えてほしい。
食育って、味でもないし、お客さんの満足度でもないところだと思っていた。
出野:まず日本人には和食が一番体に合っているんですよ。先祖代々食べてきたものが、日本人の遺伝子レベルで作り上げられているから。アメリカ人と日本人の腸の長さが違う話とか有名じゃないですか。
恒光:それって、本当なのかなぁ。なんとなくのイメージなのが気にかかる。パスタ食べても元気出るし、朝食をパンよりも米にした方が絶対に良いとは、誰かに対して強く言い切れないなぁ。
武田:働いているお母さんが、子供にそういう丁寧な食事をしようと思ったら、それを負担って感じちゃう人は多いだろうし、それが難しいから疎かになってしまうから、とりあえずゼリー食べとけみたいなになって、それだけ食べて保育園に来るとか、ざらにあるから。理想でいうと、和食とかを食べて大きくなってくれたら良いよなーって。食べないよりも食べた方が良いみたいな。
でも、たしかに和食とパスタを食べたときに、どっちが良いかってのは深く説明できないなった気付きました。
ただ、食育という面では、やっぱりこの島での経験は繋がると思う。
漁港であんな風に魚が獲れているなんて、私だって知らなかったですもん。そういうことを子供たちに知ってほしい。
子供は素直だし、魚を見ただけで食べてみようってなるし、なんか単純なんですよ、すっごく、ほんとに。
出野:本当に繋がりあります。めっちゃシンプルなものだと、自分で育てた野菜なら食べられるとか。
あと、背景を知っているだけで、ありがたみであったり、食べ物を大事にしようって思うようになると思います。なんにも考えずに食べていると、色んな事に対する気持ち。もったいない心とか。
恒光:そういう「常識」を教えることって難しいよね。
論理的に説明しようと思えばできるけど、説明しても通じ合わないこともあるだろうし。
そういうものでしょ、って部分も大きいし。世代が違えばもそうだし、生まれ育った環境が違えば
出野:だから、「感謝しながら食べましょう」って、口で伝えてもできないから、体感でわかるようにしないといけない。それが生きているところを見ないとわからないとか。
島で食材に触れているからこそ、そういう感謝の気持ちが更新されるというか、ずっとあり続けるというか。
三橋:海外のもので作っているものだと、そういうこともできない。輸入してくるものばかりだし。教えるということを考えると、和食っていう方法になっちゃうのかな。
出野:あとは、季節の旬のものを食べるということ。
三橋:暑くなってくると、胡瓜とか食べたくなってくるじゃん。そういうものでもあるかなって。梅とか、科学的にいったらクエン酸とか入っているじゃないですか。暑い時期にとれるし、体が求めているものが、結局旬なものであって。そうなると、やっぱり和食。
恒光:確かに夏バテが始まると白飯が入らなくなるかも。食欲なくても夏野菜はどんどん食べられる。
三橋:例えば、冬の野菜は糖分を出すじゃないですか。あれも、科学的にいったら糖分のあるものを冬の間に貯め込んで、寒さに耐えられるようにしている。
恒光:面白かった話だなと思ったのが、以前にながたに農園さんが来た時に聞いた話で。同じように野菜が冬の間に糖分を蓄えて、自然に適応しているんだよって話をしつつ、ご自身は余りもの寒さに胃腸を数年間も壊すという。。自然の適応についていこうとして、人間が体を壊してしまうというのは、失礼かもしれないけれども笑ってしまいそうだった(笑)
三橋:それだけ、人間は弱いってことですよ(笑)
恒光:あそこは不謹慎ながら笑いそうになった。。(笑)
三橋:あとは、とれる時期とそれに合った調理法とかあるなって思います。
出野:そうそう。そういう理にかなっている調理法が日本料理にはいっぱいある。旬の食材を料理するってことそのものだし。
恒光:いやぁ、今日は疲れたし、最後に一言ずつ位で終わろうか。せっかくだし、これからみんなが1つずつ企画を立ててほしい。ツアーを組むでもいいし、なにかのイベントを離島キッチン海士か寺子屋校舎でやってもいい。
三橋:最近、町の人と関わりがあって、けっこう言われるのが離島キッチン海士ってなにを出しているの?食べたいけど、どうやったら食べにいけるの?とか。
すごい単純に、どんなものを作っているの?食べてみたいって仰って下さることがあって。
でも、お昼であれば3000円からであったり、10名様以上からとかあったりするじゃないですか。違う形でもいいから、食べていただくことで、地域の人との交流って必要だと思うし、それをオープンにしないのも恩返しできていないと思うし。そういうことできたら良いなと思うし。
料理教室をして作ってもらったものを食べてもらうとか。こっちが全部を提供するんじゃなくて。お金は多少頂くけれども、運営的にはそこまで負担はないのかなと。
色々考えたけど、郷土料理とかのおばあちゃんを招いて、郷土料理を教えてもらってアレンジしてお出しするのもありかなって。おばあちゃんが郷土料理を作っている間に、私たちもアレンジしたものを出して、一緒に食べる。ひとつは自分たちで作って、もうひとつは先生が一品出してくれるとか。
最近、まきを作ったときも思ったよ。
恒光:公民館で食べたまきは手のひらサイズだったよ(笑)
三橋:そういうことがやりたいです。
恒光:じゃあ、三橋が企画して、恒光が広報します。次は武田!
武田:なんでもいいんですか?
三橋:人のこと聞くの楽しいな。
武田:今の三橋さんの話を聞いて、堅いのではなくて、崎小とかでいつもお世話になっている地域の方とか、近くに住んでいる大人の島留学生とかが集って、ちょっと話ができたり。
この辺りに住んでいても、あのおじさんおばさんと話したことがないって子がいるじゃないですか。おじちゃんおばちゃんと話していて、分かることっていっぱいあるじゃないですか。だから、そういう風な場になるような、場づくりの中に私もいるし、なにを出してあげたいだろうな。それこそ、みんなが慣れ親しんだ食べ物。
うーん、おにぎり。おにぎりが好きすぎるなぁ、わたし(笑)
三橋:おにぎり、美味しいよねぇ(笑)
武田:おにぎりと味噌汁とか。そこにつけるおかずに、おばちゃん達のアイデアが入っているとか。そういうものを出してあげる。
恒光:婦人会の方で老人給食を作っていたりするから、そこで絡めることはできるかもね。
そういう企画は、地区内に交流施設があるし、そこを使ってやればいいと思う。離島キッチン海士は、どうしてもお店の看板があるから、あまり遊べないんだけど。でも単発の企画とかであれば遊んでいいよ。
武田:色んな種類のおにぎりを出していいなら、めっちゃ色んなおにぎりの種類を考えちゃう。
恒光:大人の島留学生の妹尾君は、本気米を売ることがミッションだし、彼とのコラボも面白そうだね。
武田:えー、妹尾君と一緒に考えたい。
もう一つは、「売る」。食べ物だけ。ちょっとしたお弁当でもいいし。
恒光:まるどマーケットとか相性が良いんじゃない。
妹尾くんのミッションとすり合わせは必要だけど。海士町産のお米が売れる為の方法が、まずは地元の若いIターンにも普及させることだったりするから、色んなおにぎりがあったら有効じゃないかな。
大人の島留学生にアンケートをとったら、若い子のお米の選び方は「安さ」が圧倒的らしくて。そこで、いかにして海士町産のお米がこういうものだから、こう食べてほしいとか示せたら、武田と妹尾君とコラボする意味が出てくるね。
じゃあ、最後に出野さん。
出野:ずっと温めてたんですけど。車でおにぎりを売る。
恒光:また、おにぎり(笑)
三橋:海士町コシヒカリ美味しいですもん。
出野:働いている人に元気になってほしい。
武田:おにぎりって色んなものを詰めれるじゃないですか。
忙しい人も、おにぎりを食べたら色々と栄養とれるじゃないですか。
おにぎりやりたい!
恒光:おにぎり企画、やりましょう!
2021年7月3日収録@島食の寺子屋校舎での放課後