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ムダなものこそ、すんごく大事。

ある日の夜中、わたしはキッチンに立っていた。

海外引っ越しの準備をしなければいけなかったのです。
上京してきてから、十数年。何度か引っ越しは経験してきたけど、海外引っ越しはわけが違った! コレがもう、大変で大変で……(汗)

まず、量の制限が厳しい。何でもかんでも持ち込むことはできません。断捨離 of 断捨離が必須! もちろん、お願いする引っ越し業者さんや引っ越し手段によって変わると思うけど、荷物は減らしていく必要があるでしょう。

海外への持ち込みが禁止されている品目も、多数存在します。封が開いた食品や、日用品なども持ち込めません。使いかけの洗剤とか調味料とか、そういったものもすべて、処分案件。

家具に関しては、イギリスが家具付き物件が基本なので、持ち込む必要がありません。つまり、大型の家具も処分品が多数です。

これまでわたしが頼り切っていた手段、「とりあえず箱に詰めよう」「引っ越し先で考えたらいいわ」という、"とりあえず持っていこう作戦"が通用しなかったのですよね。 

いるもの・いらないものをしっかりと選別して、いらないものに関しては、大きなものも細かなものも、すべて処分していかなければいけませんでした。

1日でやり切れるような案件じゃないので、渡英の2ヶ月前くらいからコツコツと、引っ越し準備を進めていたのでした。

「今日はキッチンを片付けてやるか」

ある日わたしは、使い慣れたキッチンを見渡した。すると、その時のわたしの目には、「いらない」ものが一つも見えなかったんですよ。

上京したてのころから使っている、愛着のある卵焼き器。
冷蔵庫や引き出しを開ければ、使い慣れた調味料たちがズラーっと。
食器だって、お気に入りを買い揃えてある。
使いやすいように、収納にもこだわっていた。

普段から使っている、大事なキッチン用具たち。料理が大好きなわたしにとって、心の隙間を埋めてくれる、大事なピースたちです。

でも、どうだ。

卵焼き器は、夫が持ち込んだものがすでにロンドンにある。
空いた調味料は、持っていけない。
食器も、6割くらいはいらないだろう。
収納は、これにてお勤め終了だ。

「ロンドンに必要なもの」という見方をした途端、キッチンにあるほとんどのものが、「いらないもの」へと変わったのでした。

家にあるものって、そうなのかもしれない。本当に必要なものって実はほんの一部しかなくて、残りは「あったらいいな」という、心の隙間を埋めてくれる、緩衝材のようなものなのかも。

ロンドンへは、本当に必要なものだけを持っていくことになる。
あったらいいなを削ぎ落として、自分に必要なものを見直す、いい機会だったのかもしれません。

でもわたしはきっと、「いらない」と分かりながら、ロンドンでも心の緩衝材をたくさん溜め込むのだろうな。

実はいらないと知っているのに、なんておバカなのだろう。でもその方が、人生が豊かだと知っているから、しょうがないのだ。

そう考えると、人生も同じだ。絶対に必要なものって、実はとても少ない。選定して処分したら、ムダから解放されて、もっと身軽に生きていけると、わたしたちは知っている。

でも頭ではわかっていながら、人はムダを手放さない。

それで、いいよね。ふわっふわの緩衝材に囲まれながら、心がパキンと割れてしまわないように、注意して生きていきたいものです。

ほな、また。

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