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酒がなくてもジャズは楽しめる

若者の飲酒量が減っているらしい。そのために当然ながら税収も減っているので、政府は若者に飲酒を勧めるキャンペーンを打ち出そうとしている。言わずもがな、賛否両論ある。僕はどちらでもなく、いつの世も国家というものは勝手な生き物だな、というのが素直な感想である。

僕の少し気にかかることは、若者の飲酒量の減少により税収が減ることでも、ずっと続いて来た酒の席でしか築けないと思われてきた人間関係でもない。

それは、大好きなジャズの、夜や酒とセットで印象づけてきたビジネスモデルへの影響である。

大人の男女がゆったりとカクテルやワイン、ウイスキーを嗜みながら、ジャズのグルーブやハーモニー、ときに美しく複雑なインプロビゼーションを楽しむ、という些か古臭い文化である。僕はこの文化にものすごく若い頃、憧れた。
お酒の味がきちんとわかるようになり、ウィットのきいた会話を交わし、ジャズの音楽に身をゆだねる。ステレオタイプであろうが、そんな大人の男に憧れた。
ジャズと酒はセットだったのだ。

音楽をより理解するようになり、そして自分でも作曲するようになると、ジャズは大人だけのものでもなく、他のジャンルと同じように溌剌としたエネルギーを蓄えた音楽だということを理解した。
だからいまでは、酒とジャズというものは切り離しているし、僕はもっと様々なメッセージをジャズは発信できるものだと今では信じている。

しかし、酒とジャズと夜、というステレオタイプが破綻しまうなら、ジャズはひとつのビジネスモデルを手離すことになるかもしれないのだ。
若者が酒に対するイメージがあまりよくないなら、若い頃の僕のように、酒もジャズをきちんも嗜める大人への憧れはなくなっていくのかもしれない。

ひょっとするとこれは良いことなのか、とも考えられる。
柔軟にジャズというものを捉え、もっとジャズというもの広く表現していくステップになるかもしれない。
酒がなくてもジャズは楽しめる。

だってジャズは最高にクールな音楽だから。



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