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瀬尾まいこさん『そして、バトンは渡された』を読んで

瀬尾まいこさんの著書の中で、一番有名なんじゃないかな?
メジャーを避けたがる性分だから読んでいませんでしたが、なんとなく気が変わったので読むことに。

愛とは?親とは?
普段の生活ではあまり考えない内容を、主人公の優子がずーっと考え続けます。
私は、親のことをどう思っているんだろう。
親は、私のことをどう思っているんだろう。
こんなこと考えても、なかなか答えが出ません。
気が狂ってきそうです。

森宮さんと自分がかなり重なって見えてしまうので、この作品はとても優しく暖かく苦しい。
賢いけど人付き合いが不器用で、でも人を愛するということには真っ直ぐ向き合える人。
大切な人を受け継ぎ、守り抜くと決め、それを実践してのけたこと。
とても素晴らしいと思いました。
私もきっと、森宮さんの立場なら同じようにする。
誰かのために精一杯生きることの大切さは分かってるつもりだから。

ここまで親が変わる人生はなかなかないと思いますが、お世話になる人と考えるとコロコロ変わっていますね。
私だったら誰だろう。
幼稚園の先生方、小中高の学校の先生方、習い事の先生、部活の顧問やコーチ、バイト先の雇い主、大学・ゼミの教授、職場の上司
これまでの人生、少なくとも週一、多い人は毎日のようにお世話になる人がいました。
私のことを好いてくれていた人、苦手と思っていた人、関心のなかった人、いろいろいるとは思いますか、安心感のある居場所を作っていただいたり、活動がのびのびとできるよう尽くしていただいていたり、私の見えないところでたくさんのことをしていただいていたのだと思います。
今は私が提供する側。
顧客のために、まだいませんが将来の家族のために、安心安全な環境と愛し続ける気持ちで寄り添っていきたいと思いました。

物語自体は平坦ですが、常に不安定と隣り合わせの優子と、かつて優子を守り、今も優子を守り続ける親たちの生き様を見ると、心が熱くなります。
栄養価の高い一冊でした。

【追記】
タイトルについてです。
バトンそのものは「優子」や「優子に対する思い」というもので正しい認識だと思います。

渡された先についてですが、最初は早瀬のことかと思っていました。
物語の流れ的に最後に渡される相手になるし、それでスッキリ終わるのかと。

数日このことを考えていたのですが、この考えは違うと思いました。
タイトルで示されている渡された相手は「森宮壮介」です。
この物語は、「壮介がバトンをどのように渡され、どのようにバトンを守り抜き、誰に託していくのか」という、壮介が主人公の話であると思います。

優子を「物語の舞台装置」として見ると、この本の面白さが広がる。
これが見えたので、急にスッキリとした内容になりました。

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