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パエリアが食べたくなったから。スペイン料理とソフリトマジック

土曜日の午前11時ごろ、急にパエリアが食べたくなった。

頭の中では「もうお昼も近いし、あるもので済ませようよ」という声と、「いやせっかくの土曜日だ、パエリア作ろうよ」という声が昼ご飯をめぐってせめぎあっていたが、最終的に「パエリア食べたい」が勝った。

いざ、ムール貝とエビを求めに市場へ出かける。
外を歩くといつもより湿度が低い。少し風もあって、気持ちがいい。
ワクチン接種が進んでいるのと、警戒事態宣言が終了したからか
市場にも以前の活気が少しずつ戻ってきているような気がする。

帰ってきて、まずはColaCaoで一息いれながらソフリトの準備にかかる。ちなみにColaCaoにはまだ規定量の半分しか粉を入れていない。


ソフリト Sofrito

ソフリトは野菜を細かく切って炒めたもので、スペイン料理のベースとして何にでも使える。

スペイン料理はソフリト命。
ソフリトの出来次第で料理のおいしさが決まる。パスタの具にしてもいいし、なすの詰め物に入れてもいいし、煮込みのベースにしてもいいし、とにかく何にでも使うことができる。野菜の甘みとうまみたっぷりで、これさえあれば向かうところ敵なしである。私のまわりのスペイン人もソフリトを語りだすとColaCaoと別の意味で止まらない。

ColaCaoといえば、こないだnoteにColaCaoのことを書いたら、思いのほかたくさんのコメントを頂戴した。今はまだもう少し難しいかもしれないが、ああそうだnoteでいつも仲良くしてくださる方にいつかお会いできたときにはColaCaoで乾杯をなんて思ったのだった。


話がずれた。ソフリトの話の途中だった。
この万能ベースは、例えば日本でいうところの味噌とか醤油のような、スペイン料理の基本の味付けといえばソフリト、みたいな感じだと個人的に思っている。

ソフリトは野菜の炒め物と書いたけれど、奥が深い。
スペインに来たばかりの頃、友人がいくつかレシピを教えてくれた。
全部「まず、ソフリトを作ってから」から始まっている。
ソフリトって何?と聞いたら、やれやれとでも言いたげな顔で説明してくれたっけ。

当時スペインの言葉も文化も今よりももっとわかっていない私だ。そんな私が「あ、野菜を切って炒めるだけか」と思って作ったソフリトは、ずいぶんぼんやりした味になったのを覚えている。それ以来、しばらくソフリトは作らなかった。

どうしておいしくなかったのか。
野菜炒めの要領で、強火で短時間の調理にしたからである。

その後しばらくして友人たちとご飯を作る機会があり、ソフリトとはなんぞやというのをこの目で見た。

友人の作り方はこうだ。
たまねぎ、にんにく、パプリカ、トマトなど野菜(お好みの野菜。にんにくとたまねぎは絶対入れてくれ!と言われている)を細かく切る。これでもか!というぐらいの量をフライパンに入れる。
弱火から中火で30分いやそれ以上、もう野菜たちがくたくたになり、つぶれてしまうぐらいまで混ぜながら炒める。かなり根気のいる作業だ。途中で音をあげそうになるが、そこをぐっと耐えて炒め続けてほしい。間違いなくおいしい料理が出来るし、腕の筋肉も鍛えられ一石二鳥だと思う。
しばらくすると、最初はすごいボリュームだった野菜たちがだんだん「え?これだけしかないの?!」という量になる。だから、これでもか!と入れるのが正解なのだと思う。今日はパプリカがなかったので、たまねぎを4つも入れた。

ソフリトがうまくいくと、その料理はもう成功したといってもいい。
ソフリトの魔法がかかれば、後は何を作ってもおいしいからだ。


というわけで、今日はソフリトをパエリアに使うことにした。


途中で鶏肉も少し入れた。

お米を生のまま加え、ざっくり混ぜたらムール貝とえびでとった出汁を入れる。
あ、サフランも入れないと。
ムール貝とエビを上にのせる。レストランのようなきれいな盛り付けにならなかったが、いいことにしよう。
沸騰したら弱火にして、あとはお米がやわらかくなるのを待つだけ。


レモンをたっぷりしぼって食べる。

アグアコンガス(ガス入りの水)のボトルをぷしゅっと開けた。

隣の家の人たちが大音量でかけているフラメンコの音楽が聞こえてきた。
こんなとき、スペイン人は自然に踊りだす。そんな人たちと時間を過ごしていたら、私もいつの間にか歌って踊るようになってしまった。

おいしいご飯
いい天気
心許せる仲間


これ以上何を望むか?
スペイン田舎に来て学んだことのひとつでもある。

人生は楽しく!

そんなことを思い出していたら、前日の悩み事はいつの間にかどこかへいってしまった。

きっとこれも、ソフリトマジックだ!

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