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きもの本棚⑩『着物憑き』『毎日、きもの』と令和の着物トレンドの手前味噌な考察。

加門七海さんの『着物憑き』

集英社ノンフィクション編集部のウェブメディア『よみタイ』で、2018年に連載していた着物エッセイ。怪談とおまじないが得意な著者が、着物へのこだわりを心霊体験をウヨウヨと交え、綴っている。

加門七海さんのお母様は、着物に対する厳しい審美眼があり、ご本人は「着せてもらうばかり」だったが、とある帯留との出会いをキッカケにアンティークの着物を集めるようになった。サイズ直しで、縫い合わせた糸が変わる。すると、百年前の着物が自分の着物になるという。東西着物コーデを美人画で比較するなど、自分でも掘り下げてみたい話題があった。

東の美人画・鏑木清方。こちら、歌舞伎座

説明が少ないので、ズバリと言い当てた言葉にドキリとする。加門さんによると、ここ最近の着物コーデの流行は全体を同じトーンでまとめ、おとなしい柄の帯を組み合わせるのだそう。私が思うに、二十年前の森田空美さんはコムデ・ギャルソンのようなモノトーンを着物でやろうとしていたのではないか。アヴァンギャルドなファッションは大衆に浸透するに連れて薄まっていくもので、同じトーンのコーデに落ち着いたのではないかと、私は考えている。

河村公美さんの『毎日、きもの』

そこで、二十年前に『和楽』の連載を読んでいたお弟子さんたちの着物コーデを見てみたくなった。『毎日、きもの』はミス日本の河村公美さんの『美しいキモノ』の三年間(2013〜2016)の連載をまとめた一冊だ。

河村公美さんの着物コーデは、自身のテーマカラー(クリーム色、水色)の無地紬に相応しい帯(抽象柄)を選び、帯合わせの小物(馴染ませるか、効かせるか)で季節を演出する。お呼ばれでの着用が多い様子で、昼間か夜か、室内か外か、室内なら照明は? 壁の色は? と考えて決めているそうだ。河村公美さんのように、仕事以外に着る機会があって、仲間に自慢できるような専門店とお付き合いが出来るのは、世の中のごく、一部なのだ。今更ながら、自分にガッカリ。

なにより、河村さんの着物との接し方に、私は慄いてしまったのだ。連載当時の河村さんにとって、着物選びは「私は誰か?」と自分に問うことだという。私が集めている陶器は、手に触れた感触も含めて、自分に馴染むと言える。着物の場合、河村さんのように自分を問い正した経験は皆無で、もっと、別なことを考えている。押し売りされていないかとか、歌舞伎座に着て行けるかとか、そんなことだ。

『美しいキモノ』きものスナップで、河村流の着物選びのコツを実践

そこで、私は「私に馴染むか」「私らしいか」と自分に問いかけながら、着物を眺めた。折しも『美しいキモノ』冬号は作家モノ特集。大胆な柄の友禅をしれっと着こなす木村多江さんには圧巻だが、それは選べなくて、中条あやみさんが着ていた江戸小紋が唯一、私らしいなと思った。

江戸小紋は水色よりも、濃く、空の色だとか。

作家は小宮康義さん。踊るようなモチーフはケンケンパ。YouTubeも見たんだけど、四代目には才能があるので、それをどう育てていけるかが大事だって、三代目のお父さんが…。二代目のお爺ちゃんも彼を褒めていて、本人も、そう、感じているらしい。

さて、今度はきものスナップの特別企画から、自分と似た雰囲気のひとを探して、どんな着物を選んでいるのか、チェックしてみることにした。丸顔で、オカッパ・ヘアの方だ。ショート・ボブが似合いそうなお顔立ちの方は、洋服でいうところのボーダーを意識した柄のお着物で、逆に、裾から、スルスルと立ち上るような柄は、派手なお顔立ちに多いように思った。絵羽の着物が、縦方向の柄と横方向の柄、ふたつに分類できるなんて、考えたことがなかった。

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