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『凡人として生きるということ』(押井守 著)

【内容】
アニメ映画の監督である押井守が、社会について、若者について、映画について語った本。


【感想】
若さに価値ない…
『嘘はいけない』なんて嘘だ…

社会の建前の裏にあることを忖度なく直球で語ったり、創作についての独自の見解を述べている押井守節が炸裂していました。

押井守はペシミニストのようでいて、書いているうちに熱を帯びて来る…
おっさんになって説教する的な傾向もあるとは思いますが、わりと教育者的な一面もあったりするのだとは思います。
『スカイクロラ』制作の少し後に書かれていて、押井守監督作品としては、『攻殻機動隊』や『イノセント』の後、作品の評価や興行成績が振るわない中、久しぶりに評価も興行成績も良かった作品だったりした時期ということも、言動に影響しているように感じました。
『スカイクロラ』は、近未来SFの形で現代社会的な描いた作品でありながら、若者に向けて作られた作品だから…

大学とかの教育機関からのお誘いはあるんでしょうが、単発の講義以外はそうした仕事受けていないのは、この人なりの現役で物作りをしていくという生き方なども反映しているような気もしました。

『負けない映画作り』という押井守用語も飛び出し、俺はそれほど売れなくても映画を作り続ける戦略を取っている…
つまり、映画を作り続けられるという時点で勝っている…
という独特の理論の展開が面白かったです。
個人的には、『攻殻機動隊』や『イノセント』などを撮っていた頃の押井守を観ていた頃は、この人が今の庵野秀明的な立ち位置で、独自の世界観の作品を一般受けするものも作りつつも、発表していくのではないかと思っていました。

2007年と書かれた時期が10年以上前ということもあり、秋葉原のオタク文化の新しい可能性だといったちょっと古臭い感じの話になっていました。
メイド喫茶に勤める女性が新しい生き方だとか…
アニメなどのオタク文化が年齢関係なくカジュアルな趣味として一般化し、プーチンがウクライナに軍事進行した2024年に読むと、当時の社会から着実に変わっているということを感じました。

とはいえ、押井守流の人生讃歌のアジテーションといった面もあり、読んでいてちょっと元気になる本でした。

https://www.gentosha.co.jp/book/detail/9784344980891/

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