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『推しの子』(アニメシリーズ 1シーズン)

※ネタバレします。

【内容】
推しのアイドルの子に転生した元医師が、母親となったアイドルを目の前で殺され、その真の犯人を探すために芸能界で活動を始める。

週刊ヤングジャンプのマンガのアニメ化。


【感想】
1回目には視聴した時も非常に面白かったですが…
他のことなどをしながら、チラチラと再視聴していた時に、さまざまに気付くことがあり、感想書いてみるとにしました。

登場人物の行動やフリが緻密に考えられていることが感じられ、オープニングがヒットチャートを賑わせている点や、主人公のアクアの性格があまり良いわけではないことも興味深いなあと…

作画について、回によって絵が荒れていることもありますが…それをあまり気にさせないような、声優の熱演を感じました。話題作であるというだけではなく、声優としての見せ場の多い脚本なので、演じていても力が入ってるんだろうなと感じました。

この作品は芸能界の内幕を描く一方で、YouTube配信の職業も兼ね備えており、その両方の要素が興味深いと感じました。

「推し」に関する小説が話題になっている点や、この作品が時代の要素を巧みに取り入れていると感じました。

『嘘』については、「嘘は愛」、「嘘は自分を守る最大の防御」、「嘘は社交実」…
ことあるごとに嘘がセリフに、テーマになっていく…
1つのテーマが、物語の進行と共に様々なエピソードと共に、様々に展開し、深まっていっていると感じました。

また、『推し』という現代的なテーマと、『嘘は愛』という逆説的なテーマを両輪として物語を推進している。
『嘘はなぜ愛なのか』という回答を、1話目の最後アイドルのアイがころされるシーンでの告白で衝撃的に開示される。しかも、その開示が殺した当人に向かっての微笑みながら行われる…
よく出来てるなあと…

この作品はアイドル、転生、復讐劇、謎解きといった要素を上手に組み合わせており、それが自然な展開として表現されていると感じました。

出てくるエピソードがどれも強い…
ちゃんと取材している感じのリアリティーと、どのエピソードもちゃんと、それぞれしっかりとしたロジックがある…そして、それがキャラクターを立てることにつながっているのではとも思いました。

キャラクターの人間性が物語の進展とともに、反転していくのも、この作品の特徴であると感じました。
それまでクールな人間として描かれていたアクアが身を挺して、あかねを自殺から救うという熱い行動をすることで、実は優しく逞しい人物であるというキャラクターの見え方の反転…
その後のあかねの自殺未遂から復帰後の陰から陽のキャラへの反転…
真面目で不器用であるといった見え方をしていた(あかねが、世間的には役者として天才で、その演技力で、それまであなどっていたアクアを完全に翻弄してしまうという人間関係の一時的な反転…)
この作品の魅力は、キャラクター達がそれぞれキャラクター性を反転していくことなんだなあと…

事件的とかエピソードによる視聴者の裏切りというのではなく、この作品はキャラクターそのもののキャラクター性を反転させていくことが、この作品の魅力の大きな要因なのだと気付きました。
個人的には、アクアがあかねを自殺から救うエピソードは、特に魅力的なだと感じました。こうした転生ものやラノベ的な冷めた主人公キャラというある種のテンプレート的なキャラクターから、生身の人間として、良い意味での正義とか公正を体現したキャラクターにグルっと変わっているように感じられ、好きなエピソードでした。

こうしたエンタメ作品で、脚本がどうのとか、演出手法がどうのとかといったことを語るのは、物凄く野暮なことだとは思っているのですが、どうしても語りたくなってしまいました。
自分でも趣味程度に脚本を書いたことがあるのですが、なかなかこんなに上手くは書けないなあと…
キャラクター設定やセリフ、作品の構成とか、よくここまで完成度上げていったなあと…
悪くいえば、定番的設定や定番的キャラクター設定のオンパレードで、普通に考えると欲張りすぎてあざとい作品にもなりそうなのに、ちゃんと面白いしオリジナリティもあるますし…

よくよく思い返してみると、この種のアニメとかには定番のある種の捨て回がないのも最近のアニメの特徴かなとも思いました。
テレビ放送を前提としていないので、全て強いエピソードだけで、10話前後ごとに制作する体制になっているので、より作品の完成度を上げる方向になっているのだと感じました。

第2期も制作決定しているようなので、また観てみようかと思ったりしています。

アニメ『【推しの子】』公式サイト (ichigoproduction.com)

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