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出るとこ出ますよ(6) 和解交渉 一般市民の民事裁判初体験記【27】自転車は空を飛ばない

ここまでのお話

事態は裁判官の要請により、原告・被告弁護士同士による和解交渉となりました。

前回のつづき・・・

 弁護士同士の和解交渉がはじまった。交渉であるから、お互いに折り合えるところは折り合わないと、まとまらない。

 当方は、和解金は、104,220円でよいとした。支払い遅延の年5分云々の損害金も2万円の弁護士費用の請求はなしとした。ちなみに、今回訴訟でも、車を修理中、車が使えなかったことの損害について当方は請求をしていなかった。私と妻が、重視したのは同時に締結する合意書の内容である。

 当方の要求は、合意書(案)
 
当方(「甲」とする)と相手方Y氏(「乙」とする)は甲と乙の近隣関係を理由に生じる諸問題について、次の通り合意する。

第1条 甲及び乙は、甲と乙との間に平成25年2月11日付け覚書が有効であることを相互に確認する。
第2条 乙は、甲に対し、甲並びにその家族が所有する自転車が乙の車両に接触した事実はないことを認める。
第3条 乙は、甲に対し、乙が飼育している犬について、○○県動物の愛護及び管理に関する条例第12条第1項に基づき、適切に管理することを約する。

 当方は金額で譲って、事実誤認の項目の修正を第一目的に置いた。第3条で犬の飼育のことが出てきたのは、永年に渡って行われてきたY氏が飼育している大型犬の放し飼いをいい加減にしてほしいとこれを機会に要望したものであった。県の条例で明確に「鎖等でつないでおかなければならない」と決められているのに、Y氏は家から出した際に、犬にリードをつけないのが常態化していたのである。

 当方提案についての相手方の回答が来た。

第1条 甲と乙は、甲乙間の平成25年2月11日付け覚書が有効であることを確認する。
第2条 乙は、甲に対し、乙の飼育する犬を、○○県動物の愛護及管理に関する条例第12条1項その他法令に基づき適切に管理することを確認する。
第3条 甲と乙は、両者間に現在債権債務関係がないことを確認する。
第4条 甲乙は、相隣関係で生活するものであることに鑑み、相互に円満、良好な関係を維持するよう努めるものとする。


 文言を所々、変えているところはあるが、覚書の件と、犬の飼育の件は、合意と読み取れる。第4条は、どの口が言うではあるが、ここは問題視しないでいいだろう。問題は、第3条である。バンパーの冤罪である。これをこの文言で誤魔化されるほどこちらは馬鹿じゃない。S弁護士を通じて、猛烈に抗議してもらった。

 その日の夜である。K弁護士からの回答が来た。私は、出張から帰る帰途の飛行機の中でそれを読んだ。

相手方からの回答

              合意書

第1条 甲と乙は、甲乙間の平成25年2月11日付け覚書が有効であることを確認する。
第2条 乙は、甲に対し、乙の飼育する犬を、○○県動物の愛護及管理に関する条例第12条1項その他法令に基づき適切に管理することを確認する。
第3条 甲は、乙に対し、向後、甲及びその関係者が乙の敷地内に乙の承諾なく立ち入らず、甲の占有、管理にかかる物件を侵入させないよう管理することを約する。
第4条 甲と乙は、両者間に現在債権債務関係がないことを確認する。
第5条 甲乙は、相隣関係で生活するものであることに鑑み、相互に円満、良好な関係を維持するよう努めるものとする。

 読者の皆さん、いかがですか?
これで、収めることはできますか。

 できる訳がない。なんてことだ。バンパー冤罪の件は綺麗に消え去っている。どころか、さらに、自分の承諾なしに、こちらの土地に一切入るなとの失礼な追加文言。ちなみに、第2条についても、いい恰好して「その他法令に基づき」などと表現を加えているが、こういう抽象的な表現でそれっぽくしていても実態は何も変わらない。当方はここを論点にしなかったが、たいした意味を成さないものではあった。

 さてと、飛行機の中で、スマホで内容を確認しながら、私は、久々に血圧が上がっているのを実感した。

 この間、S弁護士とは妻は電話で話をしていた。それによると、K弁護士も話をまとめようとしていたらしいが、Y氏は、バンパーの件になるとブチ切れで、感情的に激高して話にならなかったそうだ。S弁護士は、K弁護士に電話で話をしたところK弁護士は、

 「もうええんです。判決にしてくれいうてますわ」と半ば投げやりだったそうだ。さすがのK弁護士でもあきれたということか。

 私と妻は、バンパーの件については、S弁護士から、相手方が主張をしなくなったことから、その事実が「本件は事実でない」ことになるという考え方を聞いてはいたのではあるが、それで済ますことはできなかった。

 「当たったことはないということを認める」という表現なら無理だろうと、「接触した事実のないことを認める」という表現でならまだ可能性はあるかとトライしてみたが、ダメだった。ただ、その反応の仕方から、Y氏がもっとも触れてほしくないことであることは分かった。

 明日へつづく


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