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出るとこ出ますよ(4) 第1回期日 一般市民の民事裁判初体験記【25】自転車は空を飛ばない

ここまでのお話

法廷決戦は、当方の訴状に対して、相手方からの抗弁が出て、次はいよいよ裁判所でのやりとりとなります。

前回のつづき・・・

 2018(平成30)年3月12日 第1回期日。
当方のS弁護士が裁判所に出頭。私は代理人のS弁護士に一任で出席はしない。
相手方のK弁護士は出席しなかった。相手にすれ出頭要請は急な話だから1回目の欠席は認められるそうだ。2回目からは原告・被告は来なくても最低限、双方の弁護士は出席となる。K弁護士は第1回期日欠席の代わりに、訴状の答弁書は提出していた。

 裁判といえば、法廷に原告・被告双方の弁護士が出て丁々発止やり合うのかと思っていたら、実際はそうではなく、裁判所の会議室で、裁判官と双方の弁護士でやり取りするそうだ。丁々発止も書面での主張がメインとなる。

 Y氏側は荒っぽい主張であるが、当方が完璧かというかとそうでもない。妻が見積書に残してしまった

3240+7020 10260×1/2=5130
64800×1/3=21600   △26730

104220-26730=77490

 ここだけを見ればという前提にはなるが、Y氏側からは「あなたの妻は確かに、前の傷の分の説明をこれでしていたではないか」と言われる余地はあるにはあった。

 裁判になると冷静・客観的に見る第三者に、いかに自分の主張を分かってもらえるかの勝負になる。「こうこうこう見れば、何々と言えますね」が成り立ったら、それが伝わり、解釈された結果になる。そして、裁判官は推理で判決は出さない。提示された材料で判断する。

 次回、第2回期日は、2018(平成30)年4月23日と決まっていた。
この裁判という戦いには、なんとしても勝たねばならないのだ。
 もし、負けて、Y氏の主張が正しいとなれば、Y氏は近所に鼻高々に、「私はちゃんと払うと言っていたのに、多目の金額をふっかけられて、ひどい目にあった」と言いふらすことはあり得ると、私たちはそのリスクまでも想像していた。

 K弁護士を送り込んで来た頃に、既にご近所にこの件を話していた事実を私たち夫婦は忘れてはいなかった。私たち夫婦より圧倒的に家に居ることの多いY氏。外面はとても良いので、接するご近所の人たちには、「良い人」感を植え付けていたことは想像に難くなかった。
裁判での判決という公文書を取っておくということは、虚偽情報を流された時の我々の最強の対抗手段であったのだ。

 Y氏は、あぁいうK弁護士みたいなのを送り込んでしまったこと。ご近所に自分は悪くないタッチでこの話を言ってしまったこと。
 こういうことをしてしまったが故に、こんな小さな事故がここまでのことになってしまったことを理解していないだろう。

 当方は、弁護士は使っていないし、ご近所には一切言っていない。こういうことは、双方で平穏・穏便に解決するものだと考えているからだ。人の良過ぎる妻は、更に気を遣って、金額を下げることまでしていた。これで、この仕打ちを受けるのだから、私たちが徹底的に反撃するのは当たり前である。

 さて、裁判の話に戻る。
次は、原告にて反論の書面を提出されたいというのが裁判所の命であった。
私は、客観的に私たちの主張を分かってもらうにはどうすればよいかを考えた。

前にあった傷と一緒に今回の傷を直したのは事実ではあるが、この一緒にしている中で、今回の分だけの修理代はいくらになるのか?

シンプルなようだが、第三者の方には、なかなか理解がし難いところもないわけではない。私は、妻が見積もりを取ったディーラーさんのサービス工場に出向いた。サービスマネジャーさんに、今一度、この修理の内容を説明してもらったのである。

その結果をまとめたのが、この図である。

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(図 修理箇所と修理代)

明らかになったのは、104,220円の中にある

① 左フロントドア修理     29,160円
② ウインドスロットシール取替  3,240円
③ ウインドスロットシール    7,020円
④ 塗装費用           64,800円

 のうち、②と③については、従前の傷だけの修理だけでは発生しなかったものであること。ゼロ円である。塗装費用の重複については、妻は3分の1としていた。私はマネジャーさんに「この重複部分って3分の1ぐらいになるものなんでしょうか?」と訊いてみた。マネジャーさんは「いやぁ、数字では表せないぐらいのものです」と答えられた。

 塗装費用64,800円は前の傷の修理を同時にしなければほぼ発生しないと言ってもよい数字だ。当方が一部分でも負担することはないのである。

 この検証作業をしていて、私は妻の人の良さをほとほと思った。こんなにしないでもいい気遣いをわざわざして、あんな目に遭わされるとは、身内ながら本当に不憫に思った。

 次の期日に当方が提出した準備書面には、「本件損傷と原告車両の従前の損傷を同時に修理する場合には、塗装費用の一部のみが重複するものの、その範囲は僅少であり、範囲の特定や金銭的評価は困難であるとのことであった」とS弁護士により記されていた。

 「さすがだな。うちの先生!」と私と妻は思った。この数字は無理矢理のものなのである。正確には数値化できないものだったのだ。私たちには、納得感のある記述の仕方であった。

 さて、相手方はどう出て来るか。前の傷と今回の傷を同時修理することで、塗装の重複部分が発生するのゼロではないのも事実ではある。

 相手の弁護士は、どこかの誰かから調べて、この場合は、X円ぐらいが重複分ぐらいであるとの主張をしてくるのではないか。私はそういうことを想像していた。
 104,220円満額は難しいかもしれないと、ふと思っていた。私が相手方の弁護士であれば、1,000円でも2,000円でも向こうの主張の100%を崩すことを考える。
 ところが、相手のK弁護士は、私とはまったく違う人間だ。
 思いがけない一手に出て来たのであった。

明日へつづく

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