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小さな事故が事件になるまで(6)一般市民の民事裁判初体験記【7】自転車は空を飛ばない

2017年10月26日(木)21時30分頃

 修理費用の負担額の説明を妻より聞いたY氏はどうだったか?

「ごめんね。ホントにそれでいいの?ごめんなさいね。修理に出している間、車がなくてご不便でしょう。本当に、ご迷惑おかけして、すいません。すぐにお支払いさせてもらいますので」

 こう言ってくれていたら、一件落着であったであろう。妻もそうなるはずだろうで説明に行っていた。念のため、事故発生時に一報を受けた娘も同行していたが、彼女もこのような展開を予想していたはずだ。

 ところが、説明を聞いているY氏の態度が既に事態急変の予兆を発していたのである。憮然とした表情で、作成した図も使いながら、一生懸命、説明している妻にこう言い放ったのである。

 「そんなん言われても分からへんわ!金額も多いし、保険でさせてもらうわ。(うちの息子の)車を修理した時は、保険費用が年間1万円ぐらいしか変わらへんかったから」

 妻と娘によると、不機嫌極まりないといった感じで、吐き捨てるような口調だったとのことだ。まさに「盗人猛々しい」とはこのことか。

 妻は、これまで10年程で曲りなりにでも築いて来たと思っていたご近所関係はこの瞬間に、崩壊したと感じたと後に語っている。

 私はといえば、そんなことになっているとは露知らず、出張に飛び回っていたのであった。

 私が、今、自分が見聞きしていない事象をこのように今、書けるのは、妻が詳細なメモを残していたからだ。読者の皆さんにお奨めしたいのは、メモを残しておくことだ。揉め事を争う展開になれば、証拠合戦になる。その際に、こういうメモ(記録)の存在が力になる。

 このあと、事態は動く。
2017年10月28日(土)
 雨のため、車で出勤した妻の携帯に、Y氏より連絡があった。
「保険会社の方には事故受付の電話はしたけど、平日でないと動かないので、〇〇さん(うちの名前)の電話番号は伝えてないねん。だからまだ修理には出さんといてな。今日、朝から車がなかったから(修理に)持って行ったんちゃうかなと思ってん。週明けまで待ってな」とのことであった。

 この時点では、Y氏は、先日の説明を聞く態度は悪かったものの、支払う意思があることはうかがえてはいた。

 ところで、冷静に書き綴っていて、私は気づいた。この御仁、加害者なのにいつも妻にタメ口である。妻はいつも丁寧に話をしていた。可哀そうに妻は被害者でありながら、なめられていたのだ。それは私も同じことだったのであろう。

 ここまでは、仕事が忙しいと、妻に任し切りにしていた私の出番が、この時、刻一刻と近づいて来ていた。
 
 つづく


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