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男女平等の実現はいつか

「はて」と首をかしげる寅子に、朝から深く共感している。今月から始まったNHKの連続テレビ小説『虎に翼』の主人公は、古い価値観を押しつけられそうになるたび頭に疑問符が浮かぶ。舞台が昭和ひとけたの戦前だから「はて」の種はそこら中に転がっている。

お見合いの相手から「女のくせに生意気な」と言われたとき、明治民法では妻は「無能力」で、様々な行為に夫の許可が必要だと知ったとき、大学の新設した女子部法科への進学を「女だから」と反対されたとき、寅子は「はて」と漏らす。

日本国語大辞典には「事の成り行きを怪しむ時、戸惑ったり思案したりする時などに発することば」とある。寅子の表情からは不満や反抗など、さらに多様な思いがうかがえる。

室町末期から江戸初期までには使われていた言葉らしく、能狂言の演目「真奪」のせりふにある。刀を奪った男を主人が捕らえた後で、ようやく従者が男を縛るための縄をこしらえ始めた。「ハテ、今から縄をなふて間に合ふ物か」と主人。あきれるという含意もあるようだ。

寅子のモデルは女性初の弁護士となった三淵嘉子さんだ。1938年に司法科試験に合格し、戦後には女性も裁判官にするべきだと司法省に直談判した。後に裁判官になり、女性で初めて家裁所長も務めた。

「初」から80年以上たったが、弁護士や裁判官で女性の比率は2割台にとどまる。政治や経済でもジェンダー格差は縮まらず、平等には遠い。「はて」は、まだまだ続く。

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