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【日本の冠婚葬祭~通過儀礼④~】

 このブログでは、日本の儀式を見直し、少しでも後世に継承していきたいという想いで様々な行事や儀式をご紹介しています。前回は『お宮参り』まで進んでまいりましたので、今回は『お食い初め(おくいぞめ)』について書いてみようと思います。

 前回のブログはコチラ。

 お食い初めは、書初め、出初め(式)と同様、「○○初め」と付くことから、何かを初めて行うことなのだとは、おわかりかと思います。これは読んで字の通りですが、赤ちゃんが誕生して、初めて食事をする儀式のことを言います。

 別名として、「箸揃え」「箸祝い」「百日(ももか)祝い」などと呼ばれることもあります。

 中でも「百日」は、平安時代には既に行われていた行事で、赤ちゃんにお餅を食べさせるというものでした。一説には、これがお食い初めの始まりではないかと言われています。

 お食い初めのお祝いは、「生涯、食に困らないように」という願いを込めて、生後約100日目に行います。生後100日目とは、約3ヵ月くらいですから、実際には食事を用意しても食べることは出来ません。しかし、食べることに困らないようにと祈るお祝いですので、赤ちゃんにもきちんと祝い膳が用意されます。男女で多少、用意するものが異なりますので、少し触れておきます。

 一般的に、男児には全体が朱塗りのお椀を用意し、女児には外側が黒塗りで、内側が朱塗りのお椀を用意します。

 お膳には、赤飯、尾頭付きの焼き魚、煮物、香の物、吸い物などの料理と共に、小石を小皿に入れたものが添えられます。さらに、ここに紅白の餅を5つ乗せた二の膳が用意されることもあります。

 そして当日は、集まった人の中での年長者が「箸役」となり、男児には男性が、女児には女性が赤ちゃんに食べさせる(真似をする)役を務めます。

 用意されている小石は「歯固めの石」といい、赤ちゃんに「石のように丈夫な歯が生え揃いますように」という願いを込めて、赤ちゃんの歯茎に軽く当てます。

 しかし、地域によっては、お食い初めのやり方が色々と異なるようです。
たとえば、お料理を食べさせる(真似ですが)順番が異なっているとか、「歯固めの石」が小石ではなくタコを使う風習の地域もあります。長い間、その地域で受け継がれてきた儀式ですから、前もって調べて準備しておきたいですね。

 しかしながら、たとえお食い初めの順番や用意するものが異なっていても、お子さんがしっかり食べて健康的な体になり、丈夫に育って欲しいと願うことは共通しています。形式的なことも大事ですが、それよりももっと大事なのはお子さんの将来の幸せを願うことです。 

 消えていく伝統行事も多い中、このような子供の成長を願う儀式は無くならずに受け継がれてきているのを見るにつけ、時代が変わっても「子供が無事に育って欲しい」という親の気持ちは変わらないのだということを深く感じます。


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