14.人生が、変わる1-2
ひとくち口に含んだ時、一瞬止まった。
理解ができなかった。
「ん…?これ日本酒だよな?あまい…。そしてなんかグラスからいいにおいがする。なんだ、これ…」
飲みこんでみる。
「うまい…」
もう一口飲んでみる。
やっぱりうまい。
ますます理解ができなかった。
今まで、罰ゲームで飲んでいた日本酒はなんだったんだ?
いや、こいつがなんかちがうのか?
てか、こいつはなんだ?本当に日本酒なのか?
日本酒の概念が一瞬にして崩壊した。
「すみません、マスター。…これ、ほんとに日本酒ですか?」
マスターは笑っていた。
「日本酒だよ、ちょっと待っててね、瓶持ってきてあげるから」
マスターが今飲んでいる日本酒(?)の瓶を持ってきてくれた。
…たしかにラベルには「日本酒」って書いてある。
そして、、読めない!!
横にふりがなが振ってあった。
「しゃらく…」
どうやら「しゃらく」というお酒らしい。
ラベルには「純米吟醸 冩樂」と書かれている。
僕の人生を変えたお酒は、宮泉銘醸さんが製造している冩樂だった。
あっという間にグラスに注がれたお酒を飲み干してしまった。
…まて、このお酒、アルコール度数こんなにあるの!?
いままでレモンサワー、ハイボールとかしか飲んでこなかった僕にとって、アルコール度数15、16%のお酒をちゃんと飲むのは初めてだった。
10%付近のお酒ですら、アルコール感を感じて苦手で、罰ゲーム用のアルコール度数の高いお酒は、くぅ〜〜!と言いながら飲んでいたのに
16%のお酒をなんの抵抗もなく飲めてしまったのだ。
こんなうまい日本酒、今まで飲んだことがなかった。この時のことは今でも鮮明に覚えている。衝撃だった。
いやいや。このお酒がたまたまおいしかっただけかもしれない。日本酒がこんなにおいしいわけがない。
「マスター、別のおすすめのお酒もらえますか?、あ、あと僕お酒弱いんで少なめで…それと、、あんまり高くないやつで…」
マスターは笑っていた。
「いいよ、初めてだって言ってたから少しずつ、色々出してあげるよ。」
少し…がどれくらいなのかもいまいちわからないけれど、まぁ、なんか少なめにいろんなものを飲めるようにってことだろう。
「ありがとうございます!」
次のお酒が出てくる。たしかに少なめ。ありがたい。
「…これもうめぇ…」
なんなんだ、日本酒って。
もしかして…うまいかもしれない、日本酒。
飲み干して次のお酒が出てくる。
「うまい…!!」
完全に日本酒の概念が上書きされた瞬間だった。
スイスであいつらが酒についてうるさく喧嘩してたもんだから、なんとなく日本酒について調べはじめて、なんとなく経験のために飲みにきただけなのに、完全に虜にされていた。
そして後悔がよぎる。
あぁ…。俺、日本酒がこんなにうまいとは全く知らずに、あいつらに日本酒はまずいって言ってしまった。
本当になにも知らなかったんだ、俺は…
この日本酒との出合いをきっかけに、日本酒について本格的に調べるようになっていった。
続く…