園行事で大活躍!子どもの育ちを動画で配信|竜南こども園
2020年10月1日、幼保連携型認定こども園竜南こども園(静岡県静岡市葵区)では秋晴れの中、運動会の開会式が行われました。今年は、密を避けるため「学年ごとの分散開催」。そうした中で、「わが子ががんばる姿を見たい」という保護者の想いをどういった形で叶えられるか。同園は、動画配信アプリを使って保護者に園児の様子を配信することを決めました。
保育参観、親子遠足も中止
行事に保護者を呼べない状況の中で考えたこと
2020年4月~5月の登園自粛期間、竜南こども園では園児の3分の2が自宅待機をしていました。予定していた保育参観はやむを得ず中止、園再開後もなかなか保護者を園に呼べない状況が想定される中、保護者の「見たい」という想いをどういった形で叶えられるかを考えたそうです。
他園と情報交換をする中で、当初はYouTubeを使った動画配信やライブ配信も検討していたそうですが、スマホ1つで簡単に始められる手軽さから動画配信アプリ「てのりの」を導入しました。
初めて「てのりの」を使ったのは、7月の「竜南まつり」。手作りのおみこしを担いだり盆踊りをしたりと、親子で楽しめる恒例の夏行事でしたが、保護者の参加は今年は断念。その分、園児の様子を動画で撮影し、配信したそうです。
「保護者からも喜びの声が届きました。もちろんリアルに代えられないものはありますが、自分の園としてできることはやっていきたい」
そう語るのは、園長の太田嶋俊彦先生です。
運動会を4日間にわけて開催
保護者役員会での対話を重ねて
竜南まつりに続いて開催されたのが10月の運動会です。
例年であれば、全園児が一緒になって行われる秋の一大イベントですが、今年は平日4日間にわたっての分散開催。初日は全園児による開会式のみを行い、残り3日は2・3歳児、4歳児、5歳児に分けて遊戯や競技に取り組むことを決めました。
◎竜南こども園の運動会プログラム
初日:開会式(全園児・職員のみ)
2日目:2・3歳児(保護者見学OK)
3日目:4歳児(保護者見学OK)
4日目:5歳児(保護者見学OK)、閉会式
*ただし、保護者は1家庭2名まで
*閉会式は5歳児競技終了後に実施
「今年の運動会は、例年とは異なる大きな変更でした。Zoomで保護者の役員会を開いて、保護者との話し合いを重ねながら『できる形』を考えていきました」
分散開催によって参加者数を減らしたり、親子競技を行う際にはなるべく距離を取るように工夫したそうです。
自撮り棒で小回りよく
運動会の合間にタイムリーに配信
運動会当日、自撮り棒を持って園児の様子を撮影する太田嶋園長の姿がありました。自撮り棒の長さを調節し、様々な角度から園児のいきいきとした表情を撮影。初めての取り組みのため、今は園長先生自らが動画の撮影・配信を行っているそうです。
◎太田嶋園長の動画配信アイテム
・スマートフォン
・自撮り棒
「機材も最低限にしようと思って、用意したのは自撮り棒だけ。スマホで撮影するにもずっと持っているのは大変です。長さを調節することで保護者の邪魔にならないように撮影もできます」
動画のアップロードも運動会の合間にスマホで操作。編集はせずにコメント(タイトル)を付けて、すぐにアップロードします。
「極力、タイムリーに配信することを大切にしています。プロのカメラマンが撮影した運動会のDVD/ブルーレイもありますが、出来上がりには時間がかかります。参加できなかった保護者に『いま、この瞬間』のリアリティを届けられるのが動画配信の良さ」
初めてみてわかった動画のアピール力
普段の保育の振り返りと園内研修に
「子どもたちの様子を写真に撮ってWebサイトなどに載せることはこれまでも行ってきましたが、動画配信を通して感じたのは動画のアピール力の大きさでした」
動画の良さは、その凝縮された情報量。子どもたちのきらきらとした表情、喜びや驚きを全身で表すような動き、友だちや先生との会話などが、数秒~数分という短い尺の動画に詰め込まれています。
今後、同園では、普段の保育や園内研修に動画を取り入れていくことを予定しているそう。園内研修については、てのりののグループ機能を使い、職員専用のグループを作成。子どもたちのエピソードを職員同士で共有し、「どのような育ちが見られるか」「10の姿の視点がどのように含まれているか」を振り返ります。
◎10の姿の視点
1) 健康な心と体
2) 自立心
3) 協同性
4) 道徳性・規範意識の芽生え
5) 社会生活と関わり
6) 思考力の芽生え
7) 自然との関わり・生命尊重
8) 量・図形、文字等への関心・感覚
9) 言葉による伝えあい
10) 豊かな感性と表現
「保護者が知りたい部分は、日常の保育や友だちとの関わり。一方的に配信するだけでなくて、園内で行われている活動を見える化し、保護者、そして職員の振り返りに活用していきたい」と太田嶋園長はさらなる活用を見据えます。
子どもたちの主体的な遊びを引き出すように
自分たちの園のやり方を考える
「保護者の人数や状況、園の環境はそれぞれ違います。なかなか右へ倣えというわけにはいかないからこそ、それぞれの園が主体的に考えていく必要があります」
竜南こども園では、夏の竜南まつりを皮切りに、運動会、そして12月の発表会と動画配信を計画。行事に注目が集まる中で、太田嶋園長は1つ大事にしていることがあるそうです。
「園にとって行事というのは、日常の生活の中で経験したことの発表の場。行事だけに捉われるのではなく、子どもたちの『やりたい』という想いをいかに育てるか。一番重要なのは、日常にある子どもたちの主体的な遊びです」
同園には、ビオトープや築山、芝生の園庭など、小さな生命や自然を身近に感じられるしかけがあります。子どもたちが草木をかき分け通った道はけものみちになり、変化する園庭は生きた遊具のよう。
「常に自分の好きな遊びや場所が園庭にあって、自分1人じゃできないことも友達と協力してできるようになる。そうした環境が子どもの成長に大きく寄与する。日常の中でそういう経験をさせていきたい」
●幼保連携型認定こども園竜南こども園(静岡県静岡市葵区)
静岡市葵区にある認定こども園。「子どもの気持ちに寄り添った保育」を理念に掲げ、子どもたちが安心して過ごせる環境や自然をテーマにした遊びの環境づくりを大事にしている。取材した運動会当日(4歳児競技)は、異年齢の応援の中、温かに行われた。http://www.ryunan.ednet.jp/
▽静岡新聞に掲載されました!