やすみのこと

わたし自身、やるべきことを抱えての年末年始ではあるのだけれど、これまでずっと正月休みのないところに勤めていたから、1日から出勤が普通だった。夫の実家で元日の朝をゆっくり話しながら過ごせたのはわたしが仕事をやめたからで、それは良いタイミングだったと思う。

しかし夫は2週間休みなしで働いている。ほんとうにおかしな会社だ。年中無休の営業をするならそのぶん経営者一族が交替で出勤すればいいのに、人がいないと言っては平気で何十連勤もさせる。どこそこに行きたいから。用事があるから。そう言っては夫の休みをとりあげる。しかも休日出勤の手当もつかない。そもそも労基を知らない会社だと思う。今年はもう、こういうのをなんとかやめてもらいたいのだ。

就職活動中の私、これまでのすべての職歴をひとつひとつ棚卸ししてみた。履歴書という枠におさめるためには私の職歴は多すぎる。おさまらないので、勤務期間の短いものは記載することができない。特記事項があれば職務経歴書に記載する。

今回の棚卸しで思い出したのだけれど、勤務期間が短くこれまで履歴書に記載しなかったあるひとつの企業で、私は人生でいちばん稼いだ。たくさん給料をもらった。

雇用形態は派遣である。とにかく朝が早い。出勤してから数分するともう全力フル回転の忙しさになり、それがずっと続く。全員で力をあわせて対応するも、締切時間いっぱいまで用紙を補充しても補充しても足りないほどFAXが届く。トナー交換の頻度も信じられないぐらい多かった。おしゃべりをしているヒマは、ない。質問やお願い以外で話すことは、ない。休憩時間は、すぐに食べ終われるものを持っていく。トイレに立つのも遠慮する。でも締切時間があるからその時間に届いたものの処理まで頑張ればどうにか帰れる。そんな会社だった。

当然ながら、当時30代前半の私でもヘトヘトでくたくたに疲れて、帰りにどこに寄ろうとか考えることもできなかった。休みの日は、やすむ日。そうしないと身体がもたない。

私は派遣だけれど、この会社にそれはそれは長く勤めている社員さんもいるわけで。この忙しさで、そんなに長く勤めていられるのはなぜなんだろうと不思議に思っていたら、土日祝の休みと有休の使い方がとてもうまかった。いまで言うところの『推し』活をとことん、気が済むまでやっている人だった。個人的な話をする暇がないのにこんな情報が聞けたのは、コピー機の不具合で作業がストップした時だった。

すごくいっぱい給料をもらったのに、使う暇がない。使う余力がない。派遣にも有休はあるけれど、当時 婦人科に通っていた私はそのために月イチ必要だったから、旅行にいくなんてことも考えつかなかった。

カレンダーどおりの会社(土日祝やすみ)では休み明けのことを考えると憂鬱になるものですが、ここでは月曜ないし休み明けの業務量が尋常じゃなかった。休み明けの仕事のための体力を温存しておくことも業務のうちだったかもしれない。


時は流れ、私も居場所を変え、今ではこんなことをドラマのように振り返っている。テレワーク化がすすんでも、現場に行かなければどうにもならない仕事はたくさんある。夫の仕事もそう。

ボタンひとつでものが買えちゃう時代だ。ものがつくられるまで、つくられてから手元に届くまでの旅を想像できる人なんてもう、ほとんどいないのではないかと思ってしまう。ガラパゴスと言われたとしても、私はそれを想像できる人でありたい。

そして夫に休みをあげたい。無理に私をつれて海まで行かなくたっていい、好きなことをさせてあげたい。彼の有休は3ヶ月ぐらい貯まっているんじゃなかろうか。



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