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転職活動完全ロードマップ

はじめまして。ツキオと申します。
貴重な時間をつかって本記事を読んでくれようとしてくださること、まずはお礼を言わせてください。

この『転職活動完全ロードマップ』は、転職活動中の方、まさに転職活動を始めようとしている方、そして、もしかしたら転職をするかもしれないという方のために、私の知識と経験を総動員して書き上げたものです。

今どんな状況にあろうが、どんな仕事をしていようが、どんな職歴だろうが、最初からじっくり読んでいただければ、きっと一般的な転職に関して必要な知識をすべて網羅することができると自負しています。

また、執筆にあたっては、知識の伝達だけではなく、具体的に何をすればよいのか、という行動指針をより多く記載するように心がけました。

転職活動というのは、易しいものではありません。それぞれに多忙で体力的あるいは精神的に厳しい日々の中で、時間を捻出し、より良い将来を想像しながら努力し、時には気合いで前に進んでいかないといけないこともあります。

しかし、たとえ小さくとも実際の行動が伴い、自分が今いる位置からすこしずつ動き始めたことが実感できれば、その大変さも半減し、希望を膨らませながら転職活動を続けることができます。

ですから本記事では、長期的な最終ゴールを見据えつつ、スモールステップでの具体的な行動に重点を置いています。

皆さまが、転職という高い山を諦めることなく少しずつ登り、頂上で素晴らしい景色を眺める瞬間を心から応援しています。

是非、最後まで読んでいただき、転職という険しい道のりの、ささやかな手助けとしてください。

なお、5万字近い分量になっています。薄いビジネス書とほぼ同等の量ですので、一気に読むのは疲れるかもしれません。読んでは行動、読んでは行動と、ぼちぼち進めていってくださればと思います。

目次

【序章】 転職の意義と価値 
第一節  転職の種類


【第一章】 転職の覚悟
第一節  転職をするかしないか4つの基準
第二節  心理的障壁とRMC分析


【第二章】 転職の軸
第一節  やりたいことがないと転職をしてはいけない?
第二節  転職の軸はなぜ必要か
第三節  転職の軸の決め方


【第三章】 転職の基本の“き”
第一節  転職の本質
第二節  「転職」=「労働力の売買」 から見えてくるもの
第三節  市場価値とは?
第四節  市場価値の上げ方


【第四章】 転職活動の準備
第一節  3種の神器


【第五章】  ホワイト企業分析・ブラック企業分析
第一節  ブラック企業の見極めは命にかかわる
第二節  ホワイト企業の特徴8選


【第六章】 転職エージェントを最大限活用する方法
第一節  エージェントサービス利用の必修事項
第二節  エージェントサービス利用のメリット
第三節  エージェント最大活用法


【第七章】 書類作成 〜履歴書編〜
第一節  履歴書の基本の”き”
第二節  減点されない履歴書のための チェックリスト
第三節  大きな減点をカバーする裏技


【第八章】 書類作成 〜職務経歴書編〜
第一節  職務経歴書の基本の”き”
第二節  企業の採用“枠”を分析する
第三節  まとめ 職務経歴書の書き方


【最終章】  転職の力


【序章】 転職の意義と価値 


そもそも、なぜ人は転職をするのでしょうか?
いや、もっと直接的に、あなたはなぜ転職をしようとしているのでしょうか?

もちろん、年収UPや労働環境の改善、といった分りやすい答えがあることは百も承知です。確かに多くの人にとって、労働環境や待遇の改善が転職の意義や価値であることに間違いはないでしょう。

しかし、ここで私がまず問いたいのは、本当に転職の持つ価値は「仕事の待遇を良くすること」だけなのか、ということです。もっと深く“生きること”と直結したような、人生やあなた自身のパーソナリティと密接に関わっているような転職の価値が、もしかしたらあるのではないでしょうか?

一体、転職をする意義とは何か、転職の価値とは何か、ということを本章では改めて深く考えたいと思います。これを考えることで、転職に対するイメージが少し変わり、もっと高い視座で転職というものを捉える事ができるのではないかと思います。

第一節  転職の種類

転職の価値や意義を考察するために、まずは転職の種類、タイプについてざっと見ておきたいと思います。私の独断と偏見でパターンわけをした結果、転職には4つの種類があることがわかりました。

1. 良い待遇を求める転職

このパターンが1番多いかと思います。
例えば、年収を上げる、休日を増やす、残業を減らす、などの目的で行う転職ですね。
最も理解しやすいと思います。説明の必要もないでしょう。


2. 市場価値を高めるための転職

市場価値については、後の章で詳しく説明しますから、ここでは(市場価値=ビジネスマンとしての戦闘力)と解釈しておいてください。この戦闘力は、経験やスキルや肩書などによって上昇していくのですが、これを高めるために転職はとても有効だと言えます。優秀なビジネスマンほどこのパターンで転職をしています。
働く場所を定期的に変えることで、最先端の分野へ飛び込んで貴重な経験を手に入れたり、全く異業種へ飛び込んでスキルとスキルの掛け算を狙ったり、とそのやり方も様々です。
会社からもらうものを最大化しようとするのが1の「良い待遇を求める転職」である一方、こちらは「会社で身につけるものの価値」を最大化しようとする転職と言えると思います。


3. やりがいや夢を追う転職

月並みですが、スティーブジョブズの有名なセリフに「毎朝鏡を見て、今日があなたの最後の一日だったとしたら、あなたは今日やろうとしていることを本当にやるだろうか?」というものがあります。ものすごい煽り力だな、と感心してしまうわけですが、こういう情熱をもって仕事をする人も一定数いるわけです。そういう人たちにとって、お金や待遇より、職務内容の方が価値が高いことはあり得ます。
理由は後の章で説明しますが、自分の本当にやりたいことが100%決まっていて、それ相応の覚悟もある!という選ばれた人のみが成功するタイプの転職だと思います。


4. 生き延びるための転職

最後は、生存するための転職です。主には、ブラック企業からの脱出と、経営が傾いている企業からの脱出という意味合いでの転職になります。
もしかしたらこの転職が相対的には最も重要かもしれません。何せ命がかかっていますから。長時間労働やパワハラ、そして経営不振で首になるかもしれないというストレスは、本当に命に関わります。生活の質を著しく下げる要因となりますので、早急に転職する必要があります。


以上4つの典型的・一般的な転職パターンを見てきました。

さて、ここからさらに以下の問いから、転職の意義と価値について深く考えてみたいと思います。


☆問い
転職の意義や価値は、果たして、「労働環境や、市場価値や、職務内容、安定」を手に入れることだけなのでしょうか?

皆さんはどう思われますか?
難しい問題だと思いますが、少し考えていただきたいと思います。


答えというよりは、個人的な意見ということにはなりますが、私は転職にはもう一つ重要な価値の側面があると思っています。

それは、「自分の生き方を定義し、表明し、実行する手段としての価値」です。

転職をするということは、先ほどみたように「労働環境や、市場価値や、職務内容や、安定」などのよりよく生きるためのタネ、幸福のもとを得る行為です。

しかしその一方で、転職は、

①自分にとってのよりよい人生とは何か?を突き詰め、
②そのために必要な要素を割り出し、
③それらに優先順位を付け、
④それを信じてリスクを取りながらつき進む

という行為でもあります。

私はこの一連の転職プロセスを、「よりよく生きるための自己進化の過程」だと捉えています。転職するという行為そのものが自分を成長させてくれるという感覚ですね。

つまり、転職とは、

・労働環境や、市場価値や、職務内容や、安定など外部から得るもの=ソフトウェア

・よりよく生きるための自己進化=自分という人間のハードウェア

のどちらもをアップデートさせる行為に他ならないと思うのです。


最近では、終身雇用などといった夢物語を語る人も少なくなったので転職に悪いイメージを持つ人も減ったのかな、という気はするのですが、まだまだ転職について積極的にプラスのイメージを持つ人は多くありません。

しかし私は、転職活動というものは、人生観をクリアにすること、自分を信じること、レールを外れる勇気を持つこと、自らの選択に責任を持つこと、など自分をたくましくしてくれる要素がふんだんにある、むしろ褒められるべき行動なのではないか、と思っています。

転職というものは、ご存じの通りかなり大変なものです。人間は弱い生き物ですから、変化を嫌います。リスクを取ることには抵抗がありますし、面倒くさいこともしたくありません。そういう意味で、転職は、人間の本能に反する行動です。ですから、あなたのように、それを乗り越え、転職しようとする人というのは、自分の人生に責任を持ち、現状に甘んじないという強い向上心を持った人だ、と私には思えてならないのです。もし、自分の生き方や価値観をはっきりとさせることができ、その先にある選択肢が転職であると信じることができるのなら、勇気を持ってその一歩を踏み出してください。信念と考え抜かれた思考、周到な準備がそろった転職は、必ず人生の幸福度を上昇させるはずです。

それでは次章から具体的に転職活動の中身についてみていくことにします。長い道のりにはなりますが、是非最後までお付き合いください。

【第一章】 転職の覚悟


転職をするべきか、それとも現職にとどまるべきか、というのは、本当に判断し難い問いです。なぜなら、その判断によって自分が引き受ける代償や見返りが大き過ぎ、冷静で客観的なものの見方ができなくなるからです。昨日は、転職しよう!と心に決めていたのに、翌週になると、やっぱりここに残ろうか、などと心が揺らぐ、そんな経験をした人も多いのではないでしょうか。

そこで本章では、転職の覚悟というテーマで、転職をするかしないかの最終判断の具体的方法や判断基準をお伝えします。どちらかというと、転職を迷っている、転職に興味があるという方に向けての内容ですが、もう絶対に転職をするのだ!と決めている人も、自分の転職の是非を確認するという意味でよろしければご一読ください。


第一節  転職をするかしないか4つの基準

自分が転職をするべき状況なのかそうでないのか、という問いに対して、合計4つの観点からその判断基準をお伝えします。あなたが転職の理由に挙げている事柄がほぼ100%含まれているはずですので、そちらを重点的にご確認ください。

1.会社からの報酬 編

まずは、会社からの報酬という観点から転職の是非を考えていきましょう。これがおそらく最も転職理由として多いはずです。
ここでいう“会社からの報酬”というのは、ボーナスという限定的な意味ではなく、かなり広範囲の意味を持ちます。年収、手当、スキル、経験、肩書、人脈などが含まれます。ざっくりいうとその会社で働くことで手に入れられるもの、ということですね。
それでは、この観点から転職判断基準を示します。

【基準①】
・金銭的報酬が不十分で生活苦が生じているなら即刻転職をしたほうがいい

【基準②】
・会社からの報酬が金銭面だけであるなら、転職しても良い

【基準③】
・会社からの報酬が自分の市場価値を上げるスキルや経験を伴うなら、それをもらうまで転職は我慢したほうがよいかもしれない

順に説明します。
まず基準①についてですが、収入と支出のバランスで、どうがんばっても毎月の支出が上回ってしまう場合というのは、問答無用の転職案件です。すぐに行動しましょう。それ以外にも、金銭的な不満足感が強いというのは、メンタル的にも家族関係的にも大きな弊害がありますので、迷わず転職してOKです。

基準②と③についてはコインの表と裏のような関係性なのでまとめて説明します。これは、つまるところ、その会社に居続けてあなたの市場価値は上がるのですか?という問いと同じです。Yesなら残留を検討、Noなら転職です。市場価値については後で詳しく説明しますが、ビジネス戦闘力みたいなものです。これが上がらないなら、その会社にいる意味はあまりありません。特に、20代30代であれば、目先の年収よりも市場価値をあげることに専念した方が生涯を通じてのパフォーマンスは圧倒的に高いです。
では、具体的にどうやってその会社があなたの市場価値を上げてくれるか否かを判断するのか、というと以下を参考にしてください。

・その会社は成長産業(伸びている市場、将来お金が流れてきそうな業界)か?
・自分のレア度は上がるか?
・その会社ならでは、かつ、他社にも求められるスキルは身につくか?
・近いうちに肩書はもらえそうか?
・リーダーなど責任を取れる経験をさせてもらえそうか?

これら全てがNoなら市場価値は上がりません。当てはまるものがあるなら、その報酬を得てから本格的に転職活動を始めることも視野に入れましょう。


2.職務内容とやりがい 編

次に、職務内容ややりがいという観点から転職の是非を考えます。
では、早速基準を示します。

【基準①】
・仕事にやりがいがない、というだけで転職はしない方が良い

【基準②】
・どうしても他にやりたいことができた、という場合、その仕事をするのに数年の下積みをする覚悟があるなら転職しても良い

職務内容という観点から転職を冷静に考えると、あまり転職を強く勧められる基準は存在しません。理由は簡単で、次の仕事場で期待通りの職務を任せてもらえる保証がどこにもないからです。それはつまり、仕事内容ややりがいという観点だけで転職をすると、状況が良くなるかさらに悪くなるか全くわからない博打のようなものになってしまうということです。
最近流行のエンジニア、コンサルタント、マーケッターなどの職種を例に挙げて、少し補足しましょう。まずエンジニアですがIT関係の求人にエンジニア募集とあっても、蓋を開けてみれば実際にプログラミングなどさせてもらえず、営業だったという話は巷に溢れていますし、そもそも経験や実績の乏しい人材が入社できるIT関連会社は、単なる人材派遣会社だということがとても多いです。
また、コンサルタントやマーケッターなどは基本的に営業での下積みと実績が求められます。実績がない者が転職してすぐコンサルやマーケティングの仕事をさせてもらえることはほとんど皆無で、社内の厳しい競争に生き残った精鋭がその職に就くことがほとんどです。実際、一般的な企業の職務比率の内訳をみると社員の80%が営業、10%が事務、5%がコンサルやマーケッターという戦略部門、残り5%が管理職やその他という構成ですから、この数字を見ただけでもいかにこれらの仕事が狭き門かということがおわかりいただけるかと思います。
少し厳しいお話でしたがこれが現実です。もちろん、これらの職務に就くための市場価値の上げ方も後半で解説するのでその点は肩を落とさずにいてください。

上記の理由から、仕事内容という観点だけで転職を考えるのはとりあえずやめて、他の観点と複合的に考えるようにしましょう、というのが基準①の意味です。

しかし、例外も存在します。それは、あなたの熱量が異常に高く、なおかつ理想の職につくまでに数年間の下積みや努力を覚悟できるという場合です。これが基準②です。ここまでの覚悟があるなら私が転職を止める理由も、術もありません笑。是非、信じる道を突き進んでください!


3.人間関係 編

次に人間関係の観点から転職を考えていきます。
ここでの人間関係とは、職場での人間関係を指しますが、パターンが2つあるので場合分けをして考えていきます。

<パターン1> ハラスメントがある場合

パターン1としてまず、ハラスメントがある場合を考えていきます。ハラスメントとはパワハラ、セクハラ、アカハラ、アルハラ、モラハラなど全てを含みます。概して、権力や力のある者がない者へ向ける暴力的、侮辱的な言動全てです。ここでは最も多いパワハラを想定して話を進めたいと思います。

【基準①】
・パワハラをする者が単数で社内にはハラスメントを許さない雰囲気があるなら、人間関係を理由に転職をするべきではない。

【基準②】
・パワハラを肯定するような雰囲気が社全体にある場合、即刻退職または転職するべき。

大前提としてパワハラを受けている場合、何もしないで耐えるということはしてはなりません。精神的苦痛ですぐにあなた自身が潰れてしまいます。人間はそんなに強い生き物ではありません。パワハラやいじめを耐えるなんてそもそも無理なのです。そこは理解しておいてください。つまり、パワハラがあるという時点で早急になんらかの行動を起こす必要があるということになります。

まず加害者(多くの場合直属の上司)が単数の場合、つまりあなたが不幸にも社内のハズレくじを引かされている場合は、すぐさまその事実を人事部ないしはトップレベルの管理職へ報告しましょう。会社を辞めるべきなのはあなたではありません、その加害者です。その時の注意点が2つあります。
1つは、証拠を集めておくことです。メールのやり取りや休日にかかってくる電話の着信履歴のスクリーンショット、言動のメモ、できれば録音、などがそれにあたります。これらがないと説得力が欠けてしまいます。
2つには、報告相手は人事部かトップ層など直属の上司(加害者)と直接関わりの無い人物にするべき、ということです。例えば、加害者のすぐ上の上司(Aとしましょう)に報告をしたとします。すると、そのAは、どう反応するでしょう?Aにとっては、加害者の管理も自分の職責の1つでしょうから、自分の管理するべき人間がパワハラを起こしたという事実を認めたがらないかもしれません。最悪の場合、加害者の擁護や事実のもみ消しがあるかもしれません。ですから、この場合Aに報告するのは間違いなのです。もっと上、もしくは人事部に報告しましょう。

もし、報告をして何も変化がなければ、その会社は見限りましょう。あなたがいるべき場所ではありません。もっと良い、活躍できる場所が100%あります。しかし、状況が改善されたなら、またそこからフラットな視点で転職を考えるようにしましょう。

最悪なのは、社内全体にハラスメントの雰囲気がある場合です。ブラック企業に非常に多い特徴と言えるのですが、例えば、パワハラをしている上司もその上の上司にパワハラを受けている、あるいは受けていた、だとか、管理職がみな高圧的、威圧的だ、などという場合です。この場合、証拠を集めて報告を行ったとしても状況が改善される可能性は低いでしょう。残念ですが、一人の力で社全体の雰囲気を一掃することはできません。早急に立ち去るのが吉です。


<パターン2> ハラスメントがない場合

【基準①】
・単発的な出来事で個人との人間関係が悪くなった場合は、その理由だけで転職をするべきではない。

【基準②】
・まわりになんとなく馴染めない、自分と違う種類の人間が多い気がする、という場合、積極的に転職や転職準備を考える。

基準①は改めて説明する必要もないと思います。大人として最低限できることをやってみるのが先決です。謝る、挨拶してみる、無視する、異動を願い出るなど手段はあります。

ここで重要なのは基準②の方です。雰囲気に馴染めない、なんとなく居心地が悪いという場合、転職活動か転職へ向けた準備行動(資格勉強など)を始めてみましょう。
人間は環境に一番影響を受ける生き物です。(人間は環境のしもべという言葉もありますね)そして、環境を決定する要因として一番大きいのが人間関係です。つまりは、仕事での成長も成果も、心地よさも、その大部分が人間関係に大きく左右されるということです。例えば、ここ数年で一気に有名になったアドラー心理学では、「人間の全ての悩みの原因は人間関係にある」と言っているくらいです。
ですから、残酷な話をしますが、自分が合わないな、と感じる場所でこれからあなたが活躍したり、成長したりする可能性は残念ながら高くありません。
さらに言えば、なんとなくまわりの人と合わない、というのは、シンプルに価値観やものごとの優先順位が異なっているだけで、誰も悪くはありません。悪者はいないのです。ただ単に、自分とは価値観の違う人間が多くて、過半数を占めており、そしてその人たちと日々協力を余儀なくされる、という話です。そこに間違ったものや、人がいない分、その環境は変えにくいんですね。

だからこそ、この場合は積極的に動いていってもよいと思います。もちろん、この場合はパワハラみたいに緊急性があるわけではないので、そこまで焦らなくても、徐々に環境から抜け出す準備を進めていけばよいのではないかな、と思います。


4.ワークライフバランス 編

最後にワークライフバランスの観点から転職を考えます。ワークライフバランスというのは、簡単に言うと、仕事とプライベートのバランスという意味です。

普通に考えて、プライベートが充実し過ぎて転職したい!なんてことはあり得ないでしょうから(言ってみたいですが笑)、ここでは、仕事に時間や体力を使い過ぎている場合を想定して話を進めたいと負います。

【基準①】
・プライベートを削って得られるものが市場価値ならそれを得るまでは我慢してもよい。

【基準②】
・犠牲にしているものが、大切な人間関係ならば転職をしたほうが良い。

考え方としては、まずは、残業時間が○○時間だから、とか休日出勤が少ないとか、自分が払っているものではなくて、得られるものから考えていきましょう。これは前に出てきている論点なのでおなじみと言えばおなじみですね。プライベートをけずって得られるものとしては、お金、経験、スキル、人脈、肩書、などがありますが、そのうちお金以外のものが手に入りそうなら待ってみる価値はあります。それだけ市場価値というのは大切なのです。ここで踏ん張って市場価値を手に入れれば、その後のあなたの労働価値が大きく上昇しますので、総合的にみると将来のプライベートを一番拡充させる選択だったということにもなるわけです。
しかし、得られるものがお金だけの場合、転職を進めていけば良いと思います。
特に20代30代では、目先の残業代より自分の市場価値を上げるスキルや経験のほうが圧倒的に重要なので、仕事とプライベートのバランスで悩んでいる、かつ、そのリターンが残業代しかない、という場合は転職や転職への準備を考えましょう。

基準②が最重要論点になります。
ここで話が少しそれますが1つ有名な心理学の実験をご紹介します。
米ハーバード大学でおこなわれた心理学の研究なのですが、500人くらいの性別や学歴や出身の異なる成人(20代)を70年くらい追いかけたんですね。たしか世界で一番長い期間の研究だったはずです。
その内容は、1年に1回もしくは数回、被験者に健康状態、金銭状態、生活状態、仕事の状態、健康状態、幸せ度などあらゆる項目のアンケートをしていくというものです。そして、被験者たちの学歴、IQ,預金、結婚状況、住まい、習慣あらゆるデータとアンケート結果を比較検討して、人間の幸福度に最も影響を与えるのは何かを調べたのです。

その結果、人間の幸せに一番影響するのは、身近で信頼できる人との人間関係だった、ということなのです。家族や友人などがその代表ですね。
これを知っていれば、仕事のためにこういう人間関係をないがしろにしたり、こういう人間関係を壊したりするような行為は、本当にあってはならないというか、理にかなっていない行動だとわかると思います。働くのは何はともあれ、幸せのためです。幸せに一番直結するところを犠牲にしてしまっているならば、それは本末転倒、と言わざるを得ません。
ですから、大切な人間関係を犠牲にしている場合、その仕事は続けるべきではない、ということになります。

以上、転職をするべきか否かの判断基準を示してきました。もちろん、例外や取り上げきれていない論点があることも承知していますが、大まかな指針としては機能するのではないかと思っています。是非、参考にしてみてください。


第二節  心理的障壁とRMC分析

転職をする意志もあり、また客観的な基準に照らし合わせても転職が妥当であるということになれば、いよいよ転職活動を始めていくことになります。

しかし、転職をするにあたってまだもう1つしなければならないことが残っています。それは、転職への心理的障壁を取り除くこと、です。転職は良くも悪くも大きな環境の変化を伴います。その変化はこれまでの自分の習慣、人間関係、ポジションなど大きなものを犠牲にする可能性もあります。それゆえ、転職をいざ実行に移そうと試みた時、誰しもが転職に対する恐怖や迷いを感じることになります。

この反応は、環境の大きな変化はリスクであり、生命を危機にさらす行為である、というDNAに刻み込まれた本能的な記憶から発生しているものなので、感じないわけにはいきません。あるのが普通であり自然です。しかし、転職に対する恐怖や不安、迷い(総じて心理的障壁)は、ずっと抱えておかない方がよいのも事実です。これらの心理的障壁は、あなたのストレス耐性を下げ、判断や決断を鈍らせ、何より自分に対する自信を損なう原因となるからです。

そこで、私がおすすめしているのがRMC分析をして、あなたが実行しようとしている転職がいかに合理的なものであるのかを可視化しておく、という方法です。その趣旨は、転職のメリットやリスクをしっかり把握し、自らに転職の合理性を納得させ、大きな環境の変化にも動じず、積極的に転職活動を行っていけるメンタルを手に入れることです。RMC診断のRMCとは、それぞれRisk / Merit / Cost の文字を取ったものです。つまり、転職のリスク、メリット、コスト(ここでは転職しなかった時に支払うコストのこと)を分析するということですね。この3つを統合し、分析して、あなたの現状における転職の合理性の概算をします。

<具体的方法>

それでは具体的にどうやればよいのか説明していきます。用意するものは、紙3枚とペンのみです。

①Risk分析

(※)A4用紙横向き。縦線を2本引き3領域を確保。左の領域から順に、「マイナス面」、「予防策」、「回復策」とタイトル記入。

まず、1枚目の紙(※)でRisk分析をします。あなたが転職をした際、または転職活動を始めた際のリスク、起こると困る事態、起こらないで欲しい事柄、ざっくり言うとマイナス面を書きだしていきます。使うのは一番左端の枠です。目安としては10~20個書きだしてみましょう。

次にそれらを重要度、深刻度順に並び変える、もしくは数字を振っていくという作業をします。これであなたの最も恐れている事態が明白になるはずです。

また次に、真ん中の枠を使って、左の枠の状況を起こさないために今できることを思いつく限り書きだします。予防策を書くということですね。ポイントは、「今できること」と「自分でできること」にフォーカスするということです。

最後に右の枠に回復策を書きだします。もし、避けたい状況が転職によって生じた時に自分が取れる回復策、リカバリー案です。できるだけ具体性を持って書きだすことを意識してください。

以上がリスク分析です。注目したい点としては、

・最も深刻度の高い危機的状況に対する予防策はあるか
・最も深刻度の高い危機的状況への回復案はあるか
・最も深刻度の高い危機的状況を許容しても生活自体はやっていけるか
・リスク分析をやり終えて、自分の気持ちは楽になったかそれともしんどくなったか

などです。人間は具現化された危機的状況よりも、形の無い不安や恐怖の方によりストレスを感じる生き物なので、ほとんどの場合において、リスクを洗い出すことで気持ちは楽になるはずです。そうではない場合、後に続く分析をより真剣に行う必要があります。

②Merit分析

(※)A4横向き。大きく「プラス面」とタイトル記入。

次にポジティブな面を見ていきます。2枚目の紙(※)に楽観的になり過ぎることなく、転職や転職活動をすることで起きうるプラスの面をなるべくたくさん書き出しましょう。沢山書ければ書けるほどよいです。その際、やはりその状況の影響度、インパクトによって序列をつけるのが良いでしょう。実はこの分析は、後の章で解説する「転職の軸」をつくるために非常に大切なプロセスになっていますので、しっかり考えて行いましょう。

③Cost分析

(※)A4用紙横向き。縦線を2本引き3領域を確保。左の領域から順に、「半年後」、「1年後」、「3年後」とタイトル記入。

最後にコスト分析を行います。ここでいうコストとは転職をするコストではなく転職をしないという決断を下した結果引き受けることになるコストのことです。3枚目の紙を使います。半年後、1年後、3年後に転職をしないことによって自分が支払っているであろうコストを想像して記入していきます。難しく感じたら、感情面、身体面、経済面、人間関係、など観点を絞って1つずつ考えていきましょう。

この分析を終えたら以下の点に注目してみましょう。

・転職をしないことによるコストは長期にわたるか
・転職をしないことによるコストは年々増しているか
・転職をしないことによるコストは多面的か

以上の3つの分析を終えた時点で、(多くの場合はその最中に)ほぼ確実に、自分の転職に合理性があるかどうかの判断がついていると思います。もし、この時点で自分の転職に合理性を感じられない場合は、転職を見送るべきかもしれません。少なくとも、今が絶好のタイミングとは言えないでしょう。逆にこの分析を通して“転職するしかない”という自信と勇気が湧いた人は、ぜひここで使った3枚の紙を保管し目に見えるように壁にはるとか、写真を撮ってスマホの待ちうけにするなどして欲しいと思います。こうすることで、転職の合理性を毎日確認できるようにます。転職活動が立て込んできて多忙感に襲われた時や、身内の反対などの向かい風が吹いてきたときに、不安や恐怖やストレスから身を守る一助となることでしょう。


【第二章】 転職の軸


第一節  やりたいことがないと転職をしてはいけない?

第一章を読んで、転職への覚悟が決まったみなさんにいきなり水をさして申し訳ないのですが、ここで一つ質問です。

「みなさんは転職をしようとしているわけですが、次の会社でやりたいことは決まっていますか?」

例えば、こういう商品を開発したい、売りたい、プログラミングをしてみたい、子どもに勉強を教えたい、地域活性化に関わりたい…etc

もしかしたら、そういう確固たる思いがあるかもしれませんが、一方でそうでない人もいるはずです。ちなみに私もその一人でした。

ここで知っておいて欲しいことがあります。それは何かというと、あなたが転職しようとした時、世間は必ずあなたに「転職をして次に何をするのですか?」と聞いてくる、ということです。世間とは、あなたの妻であり、夫であり、親であり、友人であり、同僚であり、上司たちのことです。あなたが転職活動を始めると、この質問がいたるところから飛んできます。それもまるで集中砲火のように、です。その時、やりたいことは決まっていないけれど、転職をするということだけは決まっているという場合、答えに窮して困ってしまいます。もっと現実的に言うと、困るどころではなく、自分の転職の合理性に不安を感じて、ひいては転職そのものへの意欲がそがれてしまいます。やりたいことも決まっていないのに、転職をしようだなんて自分の方がバカだったのかもしれない……というような具合です。

ちょっとブルーにさせてしまい本当に申し訳ないです。ここで先ほどの問いに対する私なりの考えを示しておきます。結論は、「転職に際して、やりたいことは別に決まっていなくても全く問題ない」です。やりたいことベースで転職を進める必要なんてどこにもないのです。実は、やりたいことベースで転職を始めたり、内定を決めたりする人の方がはるかに少ないということを強調しておきたいと思います。むしろ、やりたいこと、から出発して転職をするのはレアなケースです。99%の人間にとって仕事をするうえで大切なのは、


何をして働くか、ではなく、どういう状態で働くか、なのです。


大事なことなのでもう一度。

一般的な転職においては、
何を成し遂げたいか、よりも、どう生きたいか、なのです。

この言葉は北野唯我さんの「転職の思考法」という本で紹介されているのですが、この言葉に私は本当に救われました。やりたいことがなくても、今この状況、鬱屈した毎日を変えるためだけに転職をしてもいいんだ、という考え方に本当に勇気づけられました。みなさんも是非、肩の力を抜いて安心して転職を開始しましょう。


第二節  転職の軸はなぜ必要か

ここから、本章のメインテーマに入っていきます。
本章のメインテーマ、それは「転職の軸」です。

転職の軸とは、簡潔に言うとあなたの転職の指針です。あなたの転職のゴール地点をいつも示してくれる地図のようなものです。転職活動の数カ月間あるいは1年以上、あなたはたくさんの情報を収集することになりますし、たくさんの考え方にも、価値観にも触れることになります。そのように長く誘惑の多い道のりを歩むのに地図は必須です。迷った時や躊躇してしまう時、何度でも自分が歩くべき道を指し示してくれるのが転職の軸なのです。

もう少し理解を深めるために例を挙げてみます。

例えば、転職中のAさんがいるとします。Aさんは年収400万の事務職と年収600万の営業職どちらもの内定を獲得しているとします。さて、Aさんはどちらを選ぶべきでしょうか?


おそらく勘の良いみなさんはお気づきだとは思いますが、この問いに正解はありません。
Aさんの転職の軸が分らない以上、答えようがないのです。

もしAさんの転職の軸が年収や経済的余裕などであれば、営業職が正解となるでしょう。しかし、精神的ストレスを最小化することがAさんの転職の軸であるのなら、ノルマや時間外勤務などがある営業ではなく、年収は低いけれど事務職が正解ということになります。さらに言えば、転職の軸が今後価値の急騰しそうな新しいスキルを身につけること、であれば上記のどちらも不適格でありAさんは転職活動を続けるかもしれないのです。

この例でみなさんにお伝えしたいのは、転職の軸が定まらない限り、あなたの転職は成功も失敗も存在しない無意味なものになってしまうということです。

転職の軸を定めることは、転職のゴールを定めることであり、少し感情的な言葉を使えば、今回の転職で何が何でも手に入れたいものを明確にすること、です。そして、記念すべき転職活動の第一歩目は、この転職の軸を定めること、つまり転職における優先順位を考え、転職の最終ゴールを決定することなのです。


第三節  転職の軸の決め方

それでは転職の軸を決めていきましょう。この作業があなたの記念すべき転職活動の第一歩であり、今後の転職の指針になります。時間がかかってもよいのでしっかり考えてください。

具体的な手順を示します。


STEP 1

まずは、「どういう状態で働きたいか」、「どういう生活を手に入れたいか」の視点から、このたびの転職で何が何でも手に入れたいものを一つ決めましょう。サンプルは以下の通りです。

<サンプル>

・精神的余裕(自分の適性への合致やノルマなし、歩合制なしなど)
・金銭的余裕(年収やボーナス、手当など)
・時間的余裕(休日日数や残業時間など)
・市場価値(価値あるスキルや経験)
・安定的な雇用体系(解雇や減給の存在しない公務員やそれに準ずるものなど)
・やりがい(興味のある業務内容)
・社会的地位(会社の知名度やステータス)

上記のように、ある程度抽象的で幅を持たせたものが良いでしょう。例えば、「通勤時間の短さ」などでは具体的過ぎます。もし自分で考えつかなければそのままサンプルからの選択で良いです。これは以下のSTEPでも同様です。


STEP 2

次に、これは捨てる、というものを一つ決めましょう。捨てる、というと少し後ろ向きな気がするかもしれません。実際、ある心理学研究では、何かを捨てる、諦めるという決断は、何かを取る決断よりも2倍程度難しいことがわかりました。「捨てる」というのは本当に難しいことなのです。しかし、現実的に考えれば、あらゆる面においてプラスになる転職は非常に困難です。何かを捨てる決断をするのは、絶対に叶えたいものを叶える確率を上げるための大変重要な戦略だと理解をしてください。積極的に捨てる部分を最初から持っていたほうが最終的には満足のいく良い結果的になりやすいと言えるのです。
サンプルの中、あるいは自分で考えたもので積極的に捨てるものを決めましょう。


STEP 3

そして次は、できれば叶えたい望みを決めます。ドラフトみたいなものですね。2位指名です。最優先事項ではないけれど、できればほしいというものを決めておきましょう。


STEP 4

最後に、これは捨てることになっても構わないというものも、もう一つ決めておきます。


これで、「何が何でも獲得したいもの」、「できれば獲得したいもの」、「捨てるもの」、「捨ててもよいもの」、が決定しました。簡素化するならSTEP 2まででもよいのですが、STEP4までするのは、内容を複雑化することで、自分自身の価値観や人生観をより深く考えることができるからです。最も重要なのは、当たり前ですが「何が何でも獲得したいもの」ですからそこは皆さんしかと心に留めておいてください。これが達成されれば転職は成功ということになります。そして、プラスαの「できれば獲得したいもの」までついてくれば、大成功です。

転職の軸を考えることは、自分にとっての仕事とは何なのか、働く意味は何か、人生におけるものごとの優先順位はどうか、などかなり本質的、核心的な事柄に思考をめぐらせることでもあります。これには自己内省が求められるため、すぐに答えは出ないかもしれません。しかし、この思考を深めていくことで、さらにあなたの転職への決意は確固たるものになるはずです。この過程を経ることで、転職への希望や期待が高まり、転職活動をエネルギッシュにかつ粘り強く続けていけるようになるのです。本当に大切なプロセスですからくれぐれも焦らずじっくりと考えてみてください。

【第三章】 転職の基本の“き”


本章では、転職をするにあたって絶対に必要となる転職の本質的な知識についてお伝えします。転職の軸が決まると、すぐさま転職サイトへ登録したり、あるいは求人サイトをあさり続けたりする人がいますが、これはNGです。最初に転職についての最低限の知識を入れておかないと、ただただ時間を浪費するだけに終わるか、最悪はブラック企業などの望まない企業に転職をする結果になってしまいます。

そこで本章では、転職の基本の“き”と題して、転職についての本質的な考え方と、転職を語る上では欠かせない市場価値というものについて分かりやすく解説します。


第一節  転職の本質

あなたは、「転職をすること」あるいは「転職」とはどういうものだと思いますか?
少し考えてみてください。

多くの人の答えは、「仕事を変えること」「職場が変わること」「業務内容が変わること」「キャリアを変更すること」のようになると思います。確かにその通りでこれも正解です。しかし、これらの答えは実は転職の一面しか見ていないのもまた事実です。

例えばこれを、企業側の視点から考えると、転職とは「お金を払って戦力を拡充する長期投資」にほかなりません。終身雇用が終焉を迎えたとはいえ、人を雇うということは、かなり長期にわたってまとまったお金を支払い続けること、なわけですから、企業側も必死になってより質の高い人材を求めるのも納得がいきます。この観点から見るとあなたはまぎれもなく「投資対象」なのです。

そして、是非とも肝に銘じておいてほしい考え方、転職の本質とはまさにこれなのです。

結論はこうなります。
転職とは、あなたの仕事が変わることであると同時に、あなたの提供する労働力(時間×エネルギー×能力)が売買されることでもあるのです。

ですから、転職をする者と採用企業が相手を探す、そのマッチングが行われる場を「転職市場」というのです。もともと市場という言葉の定義は、「自由に契約売買を行える多数の売り手と買い手が存在する場」、ですから転職というのはやはり労働という商品の売買といって間違いないのです。


第二節  「転職」=「労働力の売買」 から見えてくるもの


転職を「労働力」という商品の売買だと捉えた時、新しく見えてくるもの、今後意識しておきたいことを以下にまとめておきます。


① あなたはあなたという商品のセールスマンである(死ぬほど重要)

今日からあなたは、あなたという労働力の営業マンです。自分を売るための努力を始めましょう。商品をいくらで売ればよいか、どこに売ればよいか、何をアピールするのがよいか、欠点のカバーの仕方はあるか、など考え抜きましょう。また、商品の利点や欠点を隅々まで把握し、印象的なセールストークやセールスライティングができるように努力していきましょう。


② 企業とあなたの間には対等性がある

商品の売り手と買い手は、基本的に対等なパワーバランス関係にあります。実際、あなたはパソコンを買いに家電量販店に行ったとしても、服を買いにユニ○ロに行ったとしても、店員さんに高圧的な態度を取ることはないでしょうし、店員さんから偉そうな態度を取られることもない(少ない)でしょう。お金を支払うからといって立場が上なわけでもないですし、顧客より知識があるからといって店員さんが偉いわけでもありません。支払うお金と同等の価値だと認められる商品の取引なのですから、全く持ってイーブンなわけです。

それがなぜだか、こと転職になるとそうはいかない、というよりそうは考えない人が多いのです。おそらくそれは、企業が給与を支払い、保険に加入させてくれ、つまり、ある程度生活を保障してくれることによる恩みたいなものがそうさせているのでしょう。

しかし、ちょっと待ってください。あなたが支払うものは一体何ですか?かけがえのない時間であり、精神的身体的エネルギーであり、あなただけしかもっていない経験であり、知識ですよね?それって、あなたの人生の一部そのものですよね?めちゃくちゃ払っているじゃないですか!大事なことなので再び声を大にして言います。転職においてあなたと企業は対等なのです。ですから、嫌な条件なら断れば良いし、様々なことについて交渉をしてもよいのです。卑屈になって本音を言わないとか、耐えがたい我慢をして条件を飲む必要なんてまるでないんです。


③ 売買には損益がつきもの

売買には必ず損と益が発生します。現実的に考えて完全に等価の価値の交換はあり得ません。転職でも同じです。企業側と転職者側のどちらかにとっては有利な取引となり、どちらかにとってはやや多めに価値を支払う契約となります。つまり、どのような場合においても構造上、転職者と採用企業というのはVSの関係になるわけです。少しでも自分に益が出る売買にしようとするわけですから当然ですね。もちろん、企業としては質の高い労働力をなるべく安く確保したいし、転職者とすれば、なるべく良い待遇を引き出したいわけです。転職はwinwinを目指すべきだ、企業とは波風立てずに、という論調があることは承知していますが、これは、そういう場合もあるという例外として認識しておいた方が無難だと僕は思います。


第三節  市場価値とは?

さて、では「あなたの労働力」という商品を企業により高く買ってもらうには、そして企業としっかり交渉するためには何が必要でしょうか?

そう、それがこれまで再三出てきている市場価値というものです。これまでは、市場価値を「ビジネス戦闘力」として定義してきましたが、ここでしっかり解説したいと思います。
市場価値とは、転職市場におけるあなたの労働力の価値です。極端に言い換えると、どれだけ企業があなたを欲しい!と思うかの程度であり、年収や待遇を決定づける要因です。

これだけの説明では、おそらくまだ鮮明にイメージできないでしょうから、少しユニークな例を挙げてみたいと思います。


ある日、
とあるドームに日本中の数万という企業の採用責任者が詰めかけています。
オークションが開かれるのです。
司会の男が一人目の労働力を紹介します。

「えー、はじめはこちらのKさんです。
Kさんの基本情報はこちらです。

【Kさんの情報】
年齢…26
性別…男
仕事内容…大手ハウスメーカーの営業
入社4年目
資格…FP3級
営業成績は支店でトップクラス
年収400万 

それでは年収100万円からスタートです。」

おそらく人出が足りていない企業の採用責任者はほぼ全員手を上げるでしょう。
業界経験があろうとなかろうと関係ありません。何せ100万円という破格の値段ですから。

「次200万です。」

司会が次の年収を提示します。

これでもほとんど手は下がらないでしょう。多くの企業が採用したいと思うはずです。

「次250万です。」

これはどうでしょうか。このあたりからそこまで深刻な人手不足でない企業や、営業・ハウスメーカーとは何のつながりも関連性もない完璧な他業界に属す企業は思案し始めると思います。しかし、26歳という将来性のある年齢を考えると、多くの企業は安い!欲しい!となるはずです。手はまだまだ上がっています。

「では次300万です。」

おそらく人出が足りている企業を中心に手はかなり下がるでしょう。破格、格安という感じではもうないからです。しかし、同業種で手を下げる企業はありません。

「次に400万です!」

Kさんが転職を考えるなら、かなりリアルな金額です。
異業種、異職種の企業(つまり不動産やハウスメーカーでもなく営業職を求めてもいない)の多くは手を下げるでしょう。しかしまだ0ではありません。他業界他職種への転職の年収限度はこのあたりにありそうです。残っている企業の大半は、同業種や営業職を求める企業です。

「次に450万です!!」
他ハウスメーカーや不動産関係の営業職を求める企業は、ほぼ変化ありません。他業界の営業職もまだ少し手を挙げています。これはKさんの営業成績が評価されている結果と言えそうです。

「次に500万です!!!」

残り3社になりました。
内訳は

A社・・・某ハウスメーカー。営業を求めている

B社・・・生命保険会社。営業を求めている。

C社・・・中堅証券会社。営業を求めている。

ここで採用担当者に本音をインタビューしてみましょう。

まずはA社の採用担当の方

「はい、即戦力として働いていただけるのでね。しかも営業成績も極めて良好。500万がそこまで高いとは思いませんね。宅建をとっていただいて、ゆくゆくは支店長候補です。え?何?もう勉強中ですって?もし受かったら550万でも可ですよ、はい。何せ今は低金利で住宅も売れてますのでね、ははは。」


続いてB社

「はい、高額な商品を売るという意味では、家も保険も一緒ですから経験が十分活かされると思いました。FP3級もお持ちということでお金に関する知識の基礎もあるかな、と。最近の保険業界は辞める人も多くって……是非うちに来ていただければと思います。」


最後にC社

「現在投資ブームですからね、ガツガツ働ける若手が欲しかったのですよ。普通あまり中途はとらないんですがね、実績があれば別です。かなり良い数字を残しているみたいだし、期待してますよ」


とまぁ、こんな感じです。(※データ等すべて自作で元ソースなどはないです)
もちろん色々とつっこみどころはあるでしょうが、市場価値についてその全体像を掴んでいただくには良い例だったのではないかと思っています。

さて、もしみなさんがこのAさんと同じようにオークションにかけられたとしたらどうでしょうか?年収いくらまで手が上がるでしょうか?そして、手を挙げている企業はどんな企業でしょうか?また、あなたが働きたいと願っている業種や職種の採用担当者の手は挙がったでしょうか?イメージしてみてください。


第四節  市場価値の上げ方

先ほどの例に自分を当てはめてみて、あまり好ましくない結果が予想される方もいるでしょう。私もそうですし、実際転職を希望する人の大半はあまり市場価値が高くないことが多いです。

しかし、転職を成功させるには、そしてよりよい条件を得るためには、市場価値が必要不可欠です。ですからここからは、その市場価値の上げ方を解説していこうと思います。

流れとしては、まず市場価値は一体何から構成されているのか、つまり何があなたの市場価値に影響を与えているのかを詳しく分析した後、市場価値の効果的な上げ方を説明します。


《市場価値の構成要素》

市場価値の構成要素はたくさんありますが、中でも大きな影響を与えるものや特に重要なものに絞って説明します。

構成要素① 業界経験
Aさんの場合で言うと、ハウスメーカー(住宅販売企業)がこれにあたります。後述しますが、どの業界にいたのか、ということは最もあなたの市場価値に影響を与えます。

構成要素② 職種経験
Aさんの場合でいうと、「営業」がこれにあたります。その他にも、経理、事務、エンジニア、デザイナー、ライター、など様々です。「あなたは何ができますか?」という質問への返答がだいたいこれにあたります。
一言で営業といっても、何を売るのか、誰に売るのか、などの観点から細分化されていきます。目に見えるものを売る、高額な商品を売る、企業に売る、国に売る、個人に売る、などなどです。この職種経験は細分化してとらえた方が良いです。

構成要素③ 差別化できる経験
一言で言うと「同じ会社にいる連中と比べて、仕事で目立った経験」です。
Aさんでいうと、支店でトップクラスの営業成績、がこれにあたります。
他の例では、肩書き、プロジェクトのリーダー経験、重要な商談でのプレゼンター経験、画期的なアイデアが採用された経験、自ら発案した企画をやり遂げた経験、若手の研修を独自にプランニングして評価された経験、などが当てはまります。要は「今までの職場でどんな結果出しましたか?」という質問への返事ということですね。

構成要素④ スキル(資格・検定)
※一般的に「スキル」という言葉は、職務経験とそれを担保する資格等の合算と考えられています。しかし、ここでの「スキル」とは職務経験を除くもの(つまり主に資格や検定)だと考えてください。

みなさんが市場価値という言葉を聞いて真っ先に思い浮かべるのがこれではないかと思います。「大事なのはスキルだ!スキルさえあればいいのだ!」という考えの人もいるかもしれません。かつて私もそうでした。しかし冷静になると、スキルというものは3種類に分けることができて、自分の目的に応じて取っていかないとその効果はあまり高くないのです。ここではスキルの種類について説明しておきます。

タイプ❶ 職務遂行を証明する資格
例えば、教員免許、医師免許などがそれにあたります。その職務を遂行する上で持っているはずの免許ですね。市場価値を上げるというよりは、必要不可欠なものです。

タイプ❷ 職務のクオリティを証明する資格
これは、職務経験と関連があってなおかつ、あなたの職務能力の質を証明してくれる資格になります。例えば、英会話教室の先生の英検1級とか、経理マンの日商簿記2級とか、Aさんの宅建とか、そういうものですね。この種の資格はあなたの市場価値を確実に押し上げてくれます。取得するならまずはこのタイプの資格から考えたいところです。

タイプ❸ 職務に関わらない資格
趣味的なものや、異業種へ転職するために取得した資格・検定がこれにあたります。この種の資格はタイプ❷に比べるとあまり市場価値に影響を与えません。なぜなら市場価値とは常に、業界経験と職務経験を基本ベースにしているからです。しかしながら、異業種への転職を有利にしたり、思わぬ形で仕事に活かせたり、そもそも人生が豊かになったりするので、もちろん勉強して良いことには変わりありません。

構成要素⑤ 年齢
年齢も市場価値に影響を与えます。基本的に年齢は若い方が市場価値が高いです。なぜなら単純に労働可能期間がまだ何十年もありますし、物覚えも早く、健康だからです。転職する際の契約年収が20代よりも30代、40代の方が高く出るのは、年齢が上だからではありません。そうではなくて、他の構成要素を考えた時に、20代よりもその上の年齢層の人のほうが、たくさんのものを持っているからです。特に業界経験や職務経験の長さ、がそれにあたります。企業にとって転職市場とは、基本的に即戦力を獲得する場なので、この結果は必然です。また、給料というものはそもそも「その労働者が1カ月間贅沢をせずに暮らせて、次の一カ月も働こうと思える金額」に設定されています。年齢が高くなるほど、生活コスト(主に家族)が上昇するので、こういう理由でも高い年齢層の年収は高く出るのです。
もし仮に全く同じだけの経験と能力と資格と実績と生活コストの20代と40代がいたら(あり得ませんが)、市場価値は20代の人の方が高いはずです。


構成要素⑥ 経済状況や世の中の流れ
当たり前のことながら、企業が求める人材は、世間の人々が企業に求めるものによって大きく変化します。面白いスマホゲーム作ってくれーー!と世間が要求した結果、また、早く外国に負けない自動運転システムの導入をーー!と要求した結果、現在企業はエンジニアを大募集しているわけです。
この構成要素には、流行り、ブーム、価値観の変化、など分りやすいものもあれば、金利、人口や景気、国際情勢、なども該当します。こういったことから、市場価値というものは流動的で常に変動しているということは知っておいた方が良いでしょう。


現実的に考えて一般的な労働者が市場価値を上げるためには、次の3つしか方法はないと私は思っています。

1. 成長している業界に飛び込む

あなたがどの業界の人であるか、どの業界経験を持っているか、ということは市場価値に最も大きな影響を与えます。ですから、市場価値を最も手っ取り早く、かつガツンと上げるのにもっとも良い方法は、「業種を変える」ということになります。しかし、ただ変えるだけではダメです。成長している業界に飛び込む必要があります。その理由を2つお話します。


さて、そもそも企業というものは利潤を追い求めることが使命としてあるわけですから、どの業種の経営陣だっていつでも自社の利益を上げるチャンスを狙っていますよね。そして大きな利益というものは歴史的にいつでも最先端の技術やテクノロジー、価値観や思想からもたらされるのです。例えば、400年前の産業革命、1900年代初頭のエネルギー革命、1990年代のIT・インターネット革命、現代におけるAI技術や自動運転技術などがその代表です。ビジネス界、いや世界の在り方や常識やシステムを覆すような技術が日々生みだされ、洗練されていきます。あなたが経営陣だとして、こういった最先端の技術や時代の潮流に沿ったテクノロジーを自社でも活用して、より大きな利潤を獲得したいと考えるのは当然でしょう。したがって、ゲームチェンジを引き起こしたり(引き起こしそうだったり)、今世界の人々や世界の経営者から注目されている分野での業界経験を持つ人材はとても重宝されるのです。身近な例を挙げましょう。2021年現在、ゴールドラッシュ並にプログラミング界隈に人が集まっています。たくさんの人がエンジニア転職を求め、数々のプログラミングスクールが生徒を獲得していますね。これは、プログラミングというスキルが、新時代に伸びていきそうな業界・分野と非常に親和性が高い、という共通認識があるためです。つまり、「次世代で活躍できる証明」とか「最先端のテクノロジーや技術への親和性が高い人材であることの証明」として機能しているということですね。


そしてもう1つの理由として、こういった成長業界では、新しい仕事が生まれやすい、ということがあります。市場価値の構成要素に「差別化できる経験」というものがあったのですが、成長業界では、この経験が得やすいです。なぜなら、成長産業は、新たな仕事(それにまつわるチャレンジ、役職、企画)が次々と生まれるフロンティアだからです。旧来式の企業では既存の仕事や役職の順番待ちをさせられる場合が非常に多いものです。これだと年齢や経験年数によって「差別化できる経験」を効率よくためることができません。一方で、成長産業なら、常に新しいことに挑戦しているためいわゆる“ポスト”の数が多く、たいして勤務歴が長くなくても、すぐにレアな経験を積むことができます。

市場価値に最も影響するものは、能力でも資格やスキルでもなく、業界経験です。
これは何度繰り返してもいいほど、重要な転職常識ですので必ず覚えておいてください。最後に今現在、そして今後、どのような業界がこの成長業界に該当するのか、いくつか例を挙げておきますのでイメージを掴んでみてください。


成長業界の例(参照:「2030年すべてが加速する世界に備えよ」)

・AR(拡張現実)やVR(仮想現実)関連
・IoT技術(モノとインターネットがつながる、モノのインターネット化)関連
・新エネルギー関連(バイオ・蓄電池・水素・風力など)
・ブロックチェーン技術
・AI関連(ざっくりしすぎててごめんなさい)
・自動運転車
・電気自動車
・遺伝子医療
・遠隔医療
・ドローン
・教育アプリ
・リモートワーク援助
・ゲーム全般(e-sports)
・介護ロボティクス

などなど


2. 差別化できる経験を獲得する

転職へ向けて大きなリスクをとることなく着実に市場価値を高めたいなら、「今いる会社で差別化できる経験を獲得する」という選択肢はかなり有力です。先ほど私は、差別化できる経験の例として、「肩書き、プロジェクトのリーダー経験、重要な商談でのプレゼンター経験、画期的なアイデアが採用された経験、自ら発案した企画をやり遂げた経験、若手の研修を独自にプランニングして評価された経験」というように挙げました。もちろんこれらはほんの一部です。これ以外に何があるか書きだすよりも、差別化できる経験の共通点を示しておきます。それは、ずばり「自分で行動し、自分で責任を取りにいった経験」ということです。最前線に出て、何かあれば矢面に立つことになる、そういった勝負の場に自分を置くこと、これが差別化できる経験を得られる場です。これとは逆の働き方に「群れる」というのがあります。群れる、とは「その他大勢の一人になること」です。したがって責任を取ることもない代わりに差別化できる経験は手に入らず、市場価値は全く上がりません。

自分の取れる責任の最大値を増やし、市場価値も高めていくのか、その他大勢の内の一人であることに安心して、市場価値を捨てるのか、転職を決意しているあなたならばおそらくもう答えは出ているはずです。

さて、この方法を取ると思わぬ副産物があります。それは、転職をせずとも良くなるかもしれないということ、そして、円満退職の可能性が上がるということです。責任を自らとりにいくような人材は経営陣にとって宝ですから、この意識で中長期的に働くことができていれば、あなたの待遇は転職をせずとも改善していく可能性があります。さらに、成長速度にも「群れる」働き方と比べると雲泥の差がありますから、同寮や上司、後輩にも一目置かれることになり、社内での立場も変わっていきます。また、尊敬が集まるようになるとあなたの行動や決断に文句を言う人も少なくなりますから、退職時にこじれることも少なくなるでしょう。(円満退職できないことの理由の一つに、そもそも社内での立場が悪かったというものがあるんですね)


3. 勉強する

勉強は最も堅実に市場価値をあげる方法です。なんせリスクゼロですから。資格を取る勉強もよし、成長している業界へ転職するための勉強もよし、転職自体の研究(この記事はこの部分です)もよし、です。やって損はないですし、逆に言えば、勉強はやらないと損です。大きな成長を手にしている人、自分に自信がありそうな人、仕事で評価されている人、そして何より、幸せそうな人!
僕の経験ではこういった人たちに共通しているのが「日々勉強をする習慣を持っている」ということです。勉強はした方が良い、ではなくて、「しないと損」ですよ!

【第四章】 転職活動の準備


第一節  3種の神器

転職活動の次なるステップは、情報収集の準備です。転職の軸に基づいて希望業界を決め、職種を決め、応募企業を決め、書類作成と面接対策をしていくわけですが、すべてのステップにおいて良質な情報が必要不可欠です。情報の質とその活用が転職活動の結果に大きな影響を与えるということは皆さんも想像に難くないと思います。そこで本章では、転職における情報収集のためのツールをご紹介します。これだけは利用した方がいい、と胸を張って言える基本王道ツールです。


1.就職四季報

1つ目が就職四季報です。これはもっていないなら即買うべき代物です。東洋経済新報社さんが独自に調査されて出版されているもので、就職本の中で最も信頼でき、かつ最も売れている本です。新卒だけでなく転職者にも十分に価値があります。是非手に入れましょう。


【内容】
記載されているのは以下のような事柄です。

・企業概要
・会社が求める人材
・試験内容
・採用実績
・平均年収
・初任給
・有給休暇取得状況
・3年後離職率
・休日日数
・男女比率
・簡単な業績


【ラインナップ】
就職四季報には、

・総合版(大手1270社掲載)
・優良中堅企業版(上場2571社+地域別2046社掲載)
・女子版(産休・育休期間、子どもをもつ女性社員数、女性の3年後離職率など記載)
・企業地図版(業界動向の全貌がわかる。神本)
※↑は今年度バージョンの情報です。

などがあり自分にとって便利な一冊を選ぶことが大切です。おすすめは企業地図と+1冊です。企業地図を使って業界を絞り、総合版などを使ってピンポイントで企業データを拾うのがベストですね。


2.大手転職サイト

このタイミングで大手の転職サイトへの登録をしておきましょう。


リクナビNEXT
doda
マイナビ

などが一般的かと思います。ちなみに「リクルートエージェント」という有名サイトもありますが、これは「リクナビNEXT」の姉妹サイトで転職エージェント専用です。
「リクナビNEXT」がweb上での気軽な応募を専門にしているのに対し、「リクルートエージェント」は、転職エージェント(別章で詳しく解説します)を利用した非公開求人専門のガチ転職サービスサイトです。ちなみに母体はリクルートキャリアといって同一です。

他にもハイクラス転職専門の「ビズリーチ」や未経験からIT業界を狙うなら「ワークポート」など、専門的な転職サイトも多々ありますが、業種や職種がまだ定まっていない状態で利用するなら上記のようなサイトを使うことになると思います。

登録をすると、どのような企業がどのような求人を出しているのかを見ることができます。業界や職種ごとにどのような特徴があるのかを把握するのにとても役立ちますが、あまりここに時間を使い過ぎるのは効率が良くありません。とりあえず今は、登録を済ませて業種と職種の特徴を探る、くらいに留めておいた方が良いと思います。例えばdodaや先に紹介したリクルートエージェントには転職エージェントサービスがありますが、これの登録はもう少し後で良いです。なぜなら、登録をするとすぐに連絡が来て面談のスケジューリングを求められるからです。その面談にもコツがありますので、もう少しこちらの準備が整ってからでも遅くはないでしょう。また、転職サイトでは登録をするとすぐに職務経歴書や履歴書のアップロードを求められます。これは、サイト側が企業側へのスカウトサービスを提供しているためで、これをアップロードしておけば勝手に企業側から面接しませんか?などの連絡が届くことがあります。もし今の時点で書けるようでしたら書いてみても良いと思いますが、必須ではありません。むしろ、いま大事なのは業種と職種調べですから時間に限りがあるのならそのことを優先したいところです。

少し話は変わって、これら大手の転職サイトですが、さすが大手というだけあって企業側も利用しているところは多いですから、利用する際は是非、自分が今在職している企業へは自分の情報を非公開扱いにしておきましょう。転職活動していることを表明しているとか、バレても問題ないということであれば話は別ですが、普通知られたくないですよね。ちなみに私は、自分の勤めていた企業がマイナビのスカウトサービスを利用して、ある日突然上司から「転職活動してるよね?」と電話がかかってきたことがありました……(汗)ピンポイントで特定の企業に対してのみ情報を非公開にすることができますので、これはしておいた方が良いかと思います。

3.企業の口コミサイト

企業の口コミサイトは、実際にその会社に在籍をしている人や在籍をしていた人の生の声を聞けるという点で、大変価値があります。特に、社内の雰囲気、風通し、社風、繁忙期、活躍している人の特徴、部署間の関係など数字にはあらわれにくい面を知るのに欠かせません。いくつかおすすめサイトを特徴と共に紹介しておきますので、気に入ったところにサクッと登録しておきましょう。


おすすめ①「Open Works」

【特徴】
口コミ数、企業評価数、ユーザー量が他に比べて圧倒的に多い。しかし、中小企業やベンチャー企業の情報は少なめ。また、利用するには同社の展開する転職サービスへの登録が必要。

【Open Woksの口コミの構成要素】
・組織体制 企業文化
・働きがい 成長
・ワークライフバランス
・企業の強み、弱み、展望
・入社理由 入社後のギャップ
・女性の働き易さ
・退職検討理由
・経営者への提言

【Open Works の社員による会社評価スコアの構成要素】
・社員の士気
・風通しの良さ
・社員の相互尊重
・若手の成長環境
・人材の長期育成
・法令順守意識
・人事評価の適正さ


おすすめ②「en Lighthouse」(旧:カイシャの評判)

【特徴】
国内最大級の口コミ数を誇る。評判スコアが大きなグラフで示されるので見やすい。会員登録をしなくても上位2件の口コミは全て閲覧することができる。また、会社のフォローシステムがあり新着情報を追跡可能。給与情報はやや見にくい。地方の会社はやや少なめ。

【en Lighthouse の口コミの構成要素】
・福利厚生 オフィス環境
・企業カルチャー 組織体制
・成長 働きがい
・事業展望 強み 弱み
・働き方(勤務時間・休日休暇・制度)
・女性の働きやすさ
・入社前とのギャップ
・年収 給与

【en Lighthouse の社員による会社の評判スコアの構成要素】
・会社の成長性と将来性
・事業の優位性と独自性
・実力主義
・活気ある風土
・20代成長環境
・仕事を通じた社会貢献
・イノベーションへの挑戦
・経営陣の手腕


おすすめ③「転職会議」 ※イチオシです

【特徴】
国内最大級のユーザー数を誇る。新卒向けでなく転職専用。勤務地や職種から簡単にリサーチをかけられる。また、口コミの構成要素に「面接・選考」のカテゴリがあり、採用に関する情報も得ることができる。企業フォロー制度もあり。会員登録をしないとほぼ情報を見ることができないことを除けば、これといったデメリットは見当たらない。

【転職会議の口コミ構成要素】
・年収、評価制度
・退職理由、退職検討理由
・面接、選考
・仕事のやりがい、面白み
・事業の成長性や将来性
・入社理由、入社後に感じたギャップ
・社長の魅力
・ワークライフバランス
・福利厚生、社内制度
・女性の働きやすさ、キャリア
・社員、管理職の魅力
・スキルアップ、キャリア開発、教育体制


【転職会議の社員による会社の評価スコアの構成要素】
・給与水準
・企業の成長性、将来性
・企業の理念と浸透性
・社員の雰囲気
・福利厚生
・企業の安定性
・仕事のやりがい
・ブランドイメージ
・入社難易度
・教育、研修制度


もちろんここで紹介したもの以外にも有用なものはたくさんあります。しかし、数が多ければ多い方が良いというわけでもありません。時間は限られていますから、「これは信頼ができる!」「これは使いやすい!」というものが過不足あれば十分だと思います。そういった意味で上記で紹介した3つの情報ソースはどれもユーザー数や実績から判断しても、使いやすく信頼に足るものばかりだと思いますので、安心して利用してください。

【第五章】  ホワイト企業分析・ブラック企業分析


ここまでで全ての準備が整いましたので、いよいよ転職活動の本丸を攻略していきます。現在、あなたは、転職における優先順位(転職の軸)と、転職の基本知識、情報収集ツールを備えています。ここからすることは主に以下の3つです。

1.応募する企業を決定する
2.書類を作成し、選考に通過する
3.面接を受ける

本章では、「応募する企業を決定する」ために、先ほどの情報収集ツール(主に転職サイト)を使って業界・企業の目利きの練習をしていきます。転職の軸を基に、自分の興味のある業界や企業についてリサーチをしながら、各企業のブラック度合いやホワイト度合いを推測できるようにしていきます。いわば“目を養う”わけです。こういった企業分析を重ねると、一目で地雷企業と優良企業の見分けがつくようになり、転職の成功確率はグンと上がります。さっそく具体的手段をみていきましょう。


第一節  ブラック企業の見極めは命にかかわる

転職失敗の最も多いパターンは、入念な企業分析を怠り、甘い言葉に誘われるままブラック企業に入社してしまう、というものです。ブラック企業への転職は本当にたくさんのものを失いますから、ブラック企業への応募を事前に回避することは転職活動において死活問題となります。

まずは、多くのブラック企業に共通している特徴をみていきます。
これらは企業分析の際に真っ先に確認しておきたい事項といえます。

【ブラック企業の特徴 10選】

1. 薄利多売な事業

薄利多売な事業を展開している企業は、総じてブラック率が高いです。理由は単純で、同じ利益を上げるために必要な労働量が多いから、です。例えば、ラーメン屋さんが1万円の利益を出すために、ラーメンを何杯売らなければならないでしょう?おそらく、20杯以上は売る必要があります。しかもそのためには、材料を買い、仕込みをし、客を呼び込み、接客をし、片付けをする、という一連の長い工程が不可欠です。しかし、同じ1万円を儲けるのでも医者の子ども専属の家庭教師などではどうでしょう?1時間勉強を教えるだけで余裕で達成されてしまいます。その2つを比べた時、必要とされる労働量や時間の差は天と地ほどの差があります。

世の中のビジネスには利益率の高いものと利益率の低いものとがあって、利益率の低いビジネスを展開している企業は基本的にハードワークになります。つまりブラック化し易いのです。さらに付け加えれば、構造的に薄利多売のビジネスはその必要労働量の多さから、人件費が膨らむ傾向が強いため、経営者は日々人件費の削減に迫られています。最少人数で、最低コストで回転率を上げる(鬼労働…)、それが薄利多売ビジネスの宿命なのです。


2. 参入障壁の低さ

参入障壁とは、「その業界への参戦のし易さ」のことです。事業のはじめ易さ、と言ってもよいでしょう。これが低いと、次々とライバルが現れるため、ブラック化しやすくなります。良い例が、美容院・理髪店です。これらは、専門学校での免許と、比較的低額な設備投資で開業できるため、非常に参入障壁が低い業界と言えます。今や美容院と理髪店の数はコンビニの4倍以上!もあるそうです。人は髪を切るペースは変わりませんし、人口は減少傾向にあるわけですから、だんだん減っていくパイを数多くの競争者たちが奪い合っている状況なわけです。そうすると過剰なサービスや超低価格設定など苦肉の戦略に打って出ざるを得ません。そのしわ寄せは誰が引き受けるのでしょう?もちろん従業員です。パイが次第に増えている業界ならまだしも、そうでないのに参入障壁が低い企業はほとんどブラックか、そうでなくともかなりのハードワークを強いられることになります。


3. 熾烈な価格競争

これは1と2の特徴の結果といってもいいかもしれません。価格競争が起きている業界には立ち入らない方が賢明です。牛丼チェーンや学習塾業界、家電量販店、ディスカウントスーパーマーケットなどが分かりやすい例かなと思います。とにかく価格の低さを前面に出している企業や業界はかなりブラックの危険性が高いです。

そもそも価格競争が起きている原因は、商品やサービスのブランド化に失敗している、参入障壁が低く競争相手が多すぎる、長年イノベーションが起きていない、利益率が低い、などが考えられます。この先待っているのは同業界同士の地獄のチキンレースです。価格を下げ続けた結果、企業ごと吹っ飛ぶ可能性も大いにあり得ますから、やはり近づかない方が無難です。


4. 高すぎる3年後離職率

3年後離職率は、非常に重要で正確な指標です。文字通り新卒で入社した社員の3年後の離職率になります。まず大雑把な目安は30%です。これより高ければブラック、もしくは激務の会社である可能性が高まります。また、この3年後離職率は業界によって大きな差があります。例えば、飲食業界、教育業界、ベンチャー企業群などは比較的離職率が高いため、30%を超えることがよくあります。これは個々の企業がブラックであるというより、業界全体のビジネスモデルや慣習に離職を促す何かがあると考えた方が良いです(つまり業界全体がブラック)。また逆に、低い離職率の業界もあります。例えば大手製造業やインフラ業界は、離職率が1ケタです。しかしこれもきちんと同業内で比較をして、同業他社と比べて高いのか低いのかまでしっかり調べておくべきです。もし30%を下回っていても、同業他社と比べて明らかに数字が高い場合は、避ける方が賢明です。3年後離職率は就職四季報に掲載されているため、手に入れやすい情報の割に効果抜群のブラック企業見極めテクニックです。


5. 求人ページに数字がない

各企業は大手転職サイトに求人を出していますが、その求人ページに数的データがなければ(もしくは少なければ)、ブラック企業率は飛躍的に高まります。数的データとは、業績・売上・残業時間・離職率・平均年収・ボーナス・休日日数・有給取得実績・育児休暇取得率など企業に関するデータのことです。これらのデータが数字として求人ページに載っていればいるほど、優良企業率は高まります。なぜかというと、この数字は良い数字でないと記載する意味がないからです。数字を出していない企業というのは、出せば逆効果だと考えているため出していないのです。例えば、月平均残業時間80時間とか、3年後離職率40%とか(苦笑)書こうものなら、「自社はブラックです」と公言しているようなものですからね。

数字がない=誇れるような数字ではない=待遇や環境があまり良くない

これは求人ページを見る時の鉄則ですからしっかり覚えておきましょう。


6. 求人を飾るキラキラワード


これは特徴5の亜種のようなものです。ブラック企業の多くは誇れるような数的データをあまり持ち合わせていないため、余白を埋めるためにキラキラワードを多用する傾向にあります。キラキラワードとは私が皮肉で用いている造語です。「耳触りは良く注意を引くものの、具体性に乏しい言葉」のことを指しています。

例えば、「希望・やりがい・夢・将来性・情熱・やる気」などが該当します。労働者にとっては、健全な財務基盤と力強いビジネスシステム、そして何より実績あっての「希望」であり、「やりがい」です。これらの言葉だけが上滑りしている企業には近づかないようにしましょう。甘い言葉巧みに応募を募るのはブラック企業の常とう手段だと心得ましょう。シビアに企業分析をするのです。

また、キラキラワード同じように「団結・サークル・イベント」も要注意です。社内のサークルやイベント活動(本業とは無関係の)を謳う求人ページを出す企業も地雷です。良く考えてみてください。高いお金を払って求人情報を載せてもらうのに本業そっちのけでサークル活動などを打ち出す企業がまともだと思いますか?そのスペース、一体いくらで買っているの?という話です。また、強すぎる団結を求める企業は馴染めなかった時のリスクが高く、加えて比較的ブラック率も高いことから、私はおすすめしません。


7. 性別や年齢のバランス

社員の性別や年齢構成に偏りがあれば、ブラック率は高まります。特に見るべきは女性の社員数と30代~40代のミドル層の社員数です。
まず、女性社員が極端に少ない場合、かなり危険信号です。これは、その職場が産休や育休を取れる制度を整えていないこと(もしくは雰囲気的に取れないこと)、子どもの迎え等で定時退社をするといった家事との両立が難しいことを意味します。そもそも本当にブラックの会社は、育児などで将来的に休業が必要と予想される社員をとらないこともあります。女性社員の数はその会社が社員のワークライフバランスをどれだけ尊重しているかの指標になります。

また、中堅層がいないのもかなりやばい状況です。これは、シンプルに離職率が高いことを意味します。その職場は何も知らない新卒か、もう転職先の残されていないシニア層しかいないのです。そして残っている20代の社員もほとんど転職を考えている……こういった会社は求人ページに若手活躍中!といった見出しで若手が楽しそうに働く様子の写真などを掲載しがちです笑。それしかアピールポイントがないのです。そして、写真に写るようなミドル層がいないのです。


8. 固定残業代制度or (裁量労働制度)

これは給与体系システムの話になります。固定残業制度とは、実際の残業時間にかかわらず、「毎月20時間3万円分の残業」をしたことにしよう(みなそう)、というシステムです。最初から3万円支給と決まっているので、これが仮に12時間しか残業しなくても3万円もらえるのです(一見ラッキー)。そして、逆に超過して残業した分についてはその時間分だけ3万円にプラスで支給されます。なんだ、ただのホワイトじゃん!と思ったかもしれませんが、世の中そんなに甘くないです。企業の中には、この固定残業制度を悪用して超過分を払い渋る奴らがいるのです。もちろん違法ですが、めんどくさいことになるのは必至です。僕が言いたいのは、あえてこの制度を採用している意味は何なんだろう?と考えてみてください、ということです。超絶ホワイトな企業ならば、給与計算の単純化や社員の生産性への意識付け、などといったまともな理由も出てくるでしょうが、多くの場合ブラックな理由からこの制度を導入する企業の方が多いのが現実なのです。

ちなみに、裁量労働制度は、もっと激しいです。残業代だけでなく基本給まで実労働時間とは無関係に固定なのです。極論、週に60時間働こうが週に6時間だけ働こうが一緒なのです。これはかなり成果主義に近づきますので一概にブラックとは言い切れないとも思いますが、やはりどんな目的で企業がこのシステムを導入しているのかを考える等、しっかりとした注意が必要です。


9.ホームページがださい

言わずもがな、今やHPは企業の顔です。HPにお金をかけられない、かけていない企業は市場競争における弱者と言わざるを得ません。避けた方が無難です。


以上がブラック企業の特徴になります。

第二節  ホワイト企業の特徴8選

続いてホワイト企業の特徴を見ていきます。
多くはブラック企業の特徴と真逆のものですので、イメージしやすいはずです。
説明の重複が多くなるので、簡単にいきましょう。


1.参入障壁が高い

インフラ業界、巨大工場や高度な製造ノウハウを必要とする業界、大学、研究所、などチャレンジャーが現れにくい業界はそれだけホワイトになりやすいです。それは、激しい価格競争にさらされることなく、高い利益率を維持できることを意味するからです。

2.盤石の収益基盤

時代の趨勢や景気に左右されない収益基盤もホワイト企業の特徴です。例えば、生活必需品メーカー、インフラ全般、などは、人が生活している限り収益が無くなることはありません。ブレない経済基盤があればこそのホワイト企業です。

3.待遇が良い

これは説明不要ですね。

4.低い離職率

厚生労働省のデータによると離職率の平均は15%、飲食は30%、インフラ系6%、となっています。3年後離職率ほど信用できるデータもありません。確実にチェックしましょう。

5.働いている人の構成バランスがよい

社員の年齢層が偏っていない、産後復帰の女性社員がちゃんと活躍している、こういう企業を探しましょう。

6.面接官の尊敬の態度

面接官や採用担当者など企業側の人とメールなり電話なり対面なりで接触する機会があると思いますが、その時の様子は要チェックです。特に対面での言葉遣いや態度をよく観察しましょう。彼らの言動や態度に、こちらに対する対等性や尊敬の念が見て取れればOKです。逆に、尊大な態度や高圧的な態度が見えればNGです。転職の基本は対等である、この原理さえ理解していない人物を窓口に据えている時点で、ホワイト企業ではないのです。

7.将来に備えている

人口減、超高齢者社会、IoT、AI、VR、AR、自動運転、コロナ、などは、確実にこれからの社会に大きな影響を与えるファクターです、それに対してのビジョンを打ち出すのはもはや、スタンダードです。未来像をしっかり発信している企業を選択しましょう。
「会社四季報」から、企業の投資CF(キャッシュフロー)を確認すれば、どれくらい設備投資にお金をかけているのか(つまり未来に投資しているのか)ということがわかります。未来へ投資せずに足元のお金周りだけ良く見せる企業は避けたいところです。

8.倍率が高い

当たり前ですが、ホワイト企業は人気です。転職サイトや口コミ、SNS、掲示板などあらゆるところにそういう情報は転がっていますから。ですから必然的に競争倍率は高いです。高い倍率は最も信頼できるホワイトバロメーターです。是非、これは忘れないでください。ホワイト企業に転職するには、必ず、その倍率をくぐる必要があるということです。

そしてまた、倍率が高いということは企業にとっては、そこまで頑張って募集広告にお金を払う必要がない、ということでもあります。ですから、転職サイトにそもそも掲載がなかったり、あっても非公開だったり、特定の転職サイトに特定の期間しか掲載がなかったりします。転職サイトにおけるレア度(見かける頻度の少なさや、求人へのアクセスのしにくさ)も立派なホワイト指標だといえます。


以上がブラック企業とホワイト企業の特徴です。
これらを参考に転職サイトや企業HPなどを見ながら企業研究を行い、応募する企業を精選していきましょう。
最終的な企業分析はまた別の方法で行いますので、まずはざっと目を通し、これらの条件を満たす企業を候補としてマークしておく、という程度で構いません。

この中から選べば、最低限ブラックではなく、経済基盤のしっかりしている企業だ、というリストを作るのです。

そして、転職の軸や自分の適性や経験からベストなものをチョイスし、今度はこちらが選ばれるためにもっと深い分析をしていく、という流れになります。

それでは、次の章へ参りましょう。


【第六章】 転職エージェントを最大限活用する方法


応募候補企業を探す過程でもう一つ重要な行事があります。
それが、転職エージェントの登録です。
今や、転職活動をする人で、転職エージェントに登録しない人はいない、というほど一般的なサービスになっています。

しかしながら、転職エージェントも正しい利用方を知らないと、全く意味がないどころか、気が付いたら本意ではない転職の後押しとなってしまった、などという惨事になることもよくあります。

この章では、

・エージェントサービス利用の必修事項
・サービス利用のメリット
・皆が知らないエージェント最大活用法

をお伝えします。


第一節  エージェントサービス利用の必修事項

転職サイトに登録すると、同時にエージェントサービスの登録を求められることが一般的です。
それほどまでに浸透しているサービスではありますが、このサービスの基本構造をご存知ですか?
なんとなく、転職者の味方が増える!アドバイスをもらえる!(しかも無料で!!)、とだけ考えているそこのあなた(笑)、それではエージェントサービスを最大限活用することは到底できないでしょう。そればかりか、エージェントサービスによって、不利益を被る可能性さえあります。

まず、転職エージェントサービスを利用するなら、最低限押さえておきたいポイントを解説します。

転職エージェントサービスは基本無料です。では、エージェントたちは毎日ボランティア活動をしているのでしょうか。キャリア迷子になってしまった僕たちを救うために善意で駆け回っている“ただの良い人”なのでしょうか。

まぁ、この資本主義社会でそんな人がいるわけもなく(夢がない)、彼らはしっかりとお給料、また成果報酬を受け取っています。では、そのお金の出どころはどこなのでしょうか。我々サービス利用者はお金を払いません。だとすると、もう出どころは一つしかないですね。そう、彼らは、企業側から報酬を得ているのです!

「ふーん、それで?」と思った人、もう少しビジネス感度を上げたほうがいいかもしれません。これってよく考えたら、怖いことです。

どういうことか、もう少し詳しくエージェントの報酬体系について掘り下げましょう。


彼らの報酬は、基本的に自分の顧客(つまり我々サービス利用者)が、企業へ入社することが決まってはじめて発生します。そしてその金額の相場は、だいたい採用が決定した人の年収の3割と言われています。このお金がエージェントの母体会社(エージェントが所属している会社)へと入り、その一部が担当エージェントに還元されるといった流れになります。

この話の肝は、「エージェントは、最終的に顧客の採用が決定されないと1円にもならない」というところです。これは、しっかり頭に入れておいてください。本当に大事なことです。
企業を紹介しようが、書類を通過させようが、面接へ行かせようが、基本的に全部報酬は0です。採用の決定だけが彼らの報酬を決定づけます。

とすると、僕がある意味エージェントサービスが怖いと言った理由がわかると思います。極端な話、エージェントが“報酬のことしか考えない悪いヤツ”だった場合、あなたがブラック企業へ入社しようが、あなたが適性やキャリアとまるで合わない会社へ採用されようが、知ったこっちゃない、わけです。いやむしろ、エージェントにとっては、人材不足のブラック企業のほうが書類選考や面接基準がゆるく、「報酬をもらいやすい会社」だということにもなります。

もちろん、ブラック企業と知っていて顧客をそんなところへ入れ込むなんて、職業倫理に反するし、回り回って、悪評が立つので迂闊にそんな馬鹿なことはしませんが、十分有り得る話です。(中小規模のエージェント会社では、実際未だに顧客をブラック企業にどんどんブチ込むひどい業者も存在しています。)

ですから、まずは「エージェントというのは100%自分の味方だ」なんていう甘い考えを捨てましょう。エージェントは中立です。企業の味方でもあるわけですから。

サービスを利用する上では、エージェントの立場を十分に理解し、逆に「エージェントをうまく使う」つもりでいましょう。彼らは、身内や友人とは全く異なる存在なのです。自分が転職の舵を取るのだ!という主体的なスタンスを崩してはいけません。


第二節  エージェントサービス利用のメリット

かなり脅してしまいましたが、前節の内容は本当に忘れないでいただきたいと思います。
さて、しかしながら、自分が主体性を失うことなく、しっかりとサービスを利用することができるなら、エージェントはあなたに素晴らしい情報やアドバイスをもたらしてくれることでしょう。なんせ、彼らは正真正銘、転職活動やキャリアのプロなのですから。

私も転職活動をする中でエージェントサービスを利用しました。その経験から、このサービスには一体どんな価値があるのかをまとめてみました。


〈サービス利用のメリット〉


1.転職市場や業界動向の情報が得られる

最新の業界動向や、企業が欲している人物像の“流行”、歓迎される資格や職業経験、他の応募者のレベルなど詳しく知ることができます。自分の興味のある業界の動向は聞いておいて損はないでしょう。


2.キャリア相談ができる

自分のキャリアをどう発展させていくか、自分の経験をどう切り取れば企業へのアピールとなるか、最終的なキャリアゴールのためにどういうルートがあり得るか、など相談にのってくれます。おすすめは、自分の理想や想定、予定を一度すっかり話してみることです。何か有益なアドバイスがかえってくるかもしれません。ただここに関しては、あくまでも、そのエージェントの一つの意見、として捉えてください。エージェントはただのキャリアのプロであり、あなたの経験や気持ちや情熱を理解するプロではありませんので。そこはわきまえましょう。


3.企業との調整や交渉を行ってくれる

これを知っている人はあまりいないのではないでしょうか。簡単なものでは、面接の日程変更から、重いものでは年収の交渉まで、ありとあらゆる調整・交渉を企業としてくれます。面と向かっては言いにくいことでもエージェントはそれがお仕事ですのでサクサクやってくれます。離職率や有休の消化率なんか、なかなか聞きにくいので、「聞きにくいなー、でも知りたいなー」ということは一度エージェントに振ってみるのも手ですね。


4.シークレット求人を紹介してくれる

エージェントサービスに登録すると、シークレットサービスの求人にアクセスできます。誰でも見ることのできるサイトなどに求人を出したくない、という企業は案外多いものです。応募が殺到して対応コストがかさむ、競合他社に求人の情報を見られたくない、などが主な理由です。そういう求人はシークレットサービスとしてエージェントが把握し、この顧客なら公開してもよい、この顧客なら採用の可能性がある、と判断したら晴れて紹介してもらえます。残念ながら皆が皆紹介してもらえるとは限りませんが、こういうメリットが確かに存在します。


5.フィードバックしてくれる

書類の添削や、面接の返答例の添削、あるいは、すでに終わった面接についてエージェントから実際に企業側に評価を聞いてもらえることもできます。とにかくありとあらゆるフィードバックをお願いできます。これを使わない手はないです。長い目で見て、転職力をUPさせることができます。

第三節  エージェント最大活用法

エージェントは、先程も言ったとおり、顧客の採用が決定して初めて報酬を得ます。ということは、エージェントにとっては、「採用されそうな顧客」こそ上客なわけですね。つまり、やる気になる顧客なわけです。逆に、「こりゃだめだな、採用まで遠そうだ」と思われてしまうと、やる気になってくれません。実際、後回し的な対応をされることがあります。

本節では、エージェントのやる気とポテンシャルを最大限発揮させ、上手にサービスを利用する方法をします。本章の目玉です。


1.大手エージェントを利用する

これは、下ごしらえみたいなものです。大手は会社の名前を背負っているので、エージェントの質が担保されています。つまり、「ハズレ」が少ないんですね。また、訴訟問題でブランドに傷がつくことを嫌がりますので、ブラック企業など悪質な会社を候補からあらかじめ除外してくれます。中小規模のエージェント会社ではそうはいきません。無難に大手を選択しましょう。

2.競合させる

エージェントは、競合させるべきです。そして、他のエージェントサービスも利用しているとはっきり伝えるべきです。エージェントの真剣味が変わります。他社に取られるわけにいかない、という感覚からサービスの質やレスポンスの速さに影響が少なからずあると見ています。家電量販店をハシゴして最安値交渉をする感覚と似ていますね。(伝わるかな・・・)

3.軸を伝える

自分が転職によってなんとしても手に入れたいもの、その優先順位をはじめにエージェントに伝えましょう。こちらの真剣さがエージェントを動かします。それだけでなく、その軸があることで、エージェント側も提供する情報を絞ることができます。得られる情報があなたに沿ったものとなり、その質がグンとあがるでしょう。興味のない企業の紹介や書類選考を勧められる機会もなくなり、圧倒的に無駄が省かれ、密度の高い転職活動ができます。シークレット求人の紹介もあり得ます。何より、軸が決まっている転職者は真剣に転職をしているので採用の可能性が高い、と判断され上客扱いされます。


4.「いつまでに転職予定?」の質問には3ヶ月程度がベスト

エージェントは絶対に「いつまでに転職したいですか」と質問します。そのときに間違っても「まだ決めていない」とか「1年」なんていう気の抜けたことを言わないことです。いいですか、エージェントはあなたの採用が決まらないと報酬がないわけですよ。本当に転職をするかどうかさえ怪しい顧客の相手なんかすると思いますか?しません。絶対にしないんです。ベストアンサーは「今から3ヶ月後です、あくまで予定ですが」です。3ヶ月という期間が絶妙で、いますぐ動いてくれる最長期間になります。半年というと、今からすぐにエージェントは動きません。後回しにされます。3ヶ月なら、今すぐ動きます。もし、あなたが「え、3ヶ月なんて早すぎ。心の準備が」って思うなら、それはこの章を読むのが早すぎです。厳しいことを言うようですが、転職の覚悟を決めるところからやり直したほうがいいでしょう。エージェント利用するならもう覚悟が決まった後にすべきです。


5.主体性を保った質問をする

いわゆる「丸投げ」といわれる類の相談や質問はしないでください。

例:「どの業界がいいですか」ではなく「○○業界の動向はどうなんですか」
例:「私はここからどんなキャリア展開が可能ですか」ではなく「○○というゴールを目指したいのですが、どういうキャリア選択が有効だと思いますか」

あなたが主体性を失った時点で、エージェントサービスの利用だけでなく、転職活動そのものが難航します。あなたの人生を決められるのはあなただけ。一緒に転職活動するのではなく、あくまで互いに利用しているだけ。サービスを受ける人の中には、一定数、自分の足で歩くのをやめ、エージェントの方に寄りかかろうとする人がいます。その時点で、転職活動は失敗です。転職活動は自分で歩くから、やりきるから、成長できるし人生を変えられるんです。そのことを忘れないでください。


【第七章】 書類作成 〜履歴書編〜


企業分析やエージェントサービス利用の段階までくると、そろそろ自分の本命転職先が見えてくるようになります。自分の転職の軸と合致し、ブラック企業の雰囲気もない、ホームページや口コミサイトを調べると何か惹かれるものもある・・・「ここなら働いてみたい」と思える企業候補がいくつか集まってきたら、いよいよ書類作成の段階です。

普通、中途採用の応募には2種類の書類が必要になります。履歴書と、職務経歴書です。

転職活動の運命を左右するといっても過言ではない書類作成。面接へとつながる書類はどうやって作成すればよいのでしょうか。本章と次章で徹底的に解説します。


第一節  履歴書の基本の”き”

さて、まずは履歴書ですが、いきなり核心に迫ります。そもそもなぜ転職には、履歴書の提出が必要なのでしょう。そして、良い履歴書とはどんな履歴書なのでしょうか。

一言でいうと履歴書というものは、企業が採用プロセスの効率化のために「足切り」をするために利用する書類です。

一般的な採用選考の流れとして、多忙な採用担当者は、膨大な履歴書にザッと目を通し、足切りをします。その後「足切り」を免れた候補者の職務経歴書のみを読みます。そして最終的に面接に来させる人物を決定するのです。履歴書は選考の初期の初期に使われるもので、いわば選考の入り口です。

ですから、良い履歴書は何か?という質問の答えはこうなります。
「足切りを免れ、職務経歴書へと繋げる履歴書こそ良い履歴書である」と。

また、もう一つポイントがあって、それは、基本的に履歴書による足切りは「減点方式」で行われるということです。企業によって様々な減点ポイントが設定されており、「足切り」が行われるわけです。

正直、履歴書の中身は客観的データによるところが多く、なかなか小細工をするのは困難です。ですから、我々候補者にできることは、せめて客観的データ以外の部分で減点を最大限減らすこと、ということになります。


第二節  減点されない履歴書のための チェックリスト


繰り返しになりますが、履歴書の中身は創意工夫することが難しいです。年齢や出身大学を偽ることなどできませんよね。(したら別の問題が起きますww)

しかし、できることはあります。客観的データ以外の部分の減点を最大限減らし、粘り強い履歴書を作っていきましょう。ここからそのチェックポイントを列挙します。


1.履歴書のフォーマットは大手転職サイトからダウンロードする
変に目立たないし、過不足ない項目なので書きやすいです。

2.「備考欄」等のフリースペースが最低1つは用意されているフォーマットを用意する
理由は後から説明します。

3.手書きではなくPCで作成
変に目立つので手書きはNGです。

4.写真はプロに撮ってもらう
近所の写真屋さんでもいいです。明るい雰囲気、生気のある顔写真は自分では準備しにくいです。これ本当に大切なポイントです。自動証明写真機の写真は暗くて病的な顔になりがちです。減点の可能性ありですよ。

5.書体をそろえる
MS明朝の10.5か11.0の文字の大きさでそろえましょう。これなら減点されません。

6.数字やアルファベットは半角
当たり前ですが、統一しましょう。

7.基本は和暦で統一
普通は和暦で統一します。西暦と混在していないか何度もチェックを。

8.文字の先頭はそろっているか
文字の先頭がずれていると、「私、PC使えません」と宣言しているようなもの。
しっかり確認しましょう。ワードの表挿入のときなど、特に注意です。

9.難しすぎる言葉を使っていないか
たまに、自分の語彙力を誇示したいのかな、と疑わしい書類を作成する人がいますが、完全に逆効果です。平易な言葉で一文は短く。誰にでも伝わる文章が好まれます。これは職務経歴書でも同様です。

10.志望理由は凝りすぎない
履歴書には、簡単な志望理由欄が設けてあることが多いです。その場合、そこに複雑なストーリーや強すぎる情熱を埋め込むのはリスクが高いです。理由は簡単、「浮いちゃうから」です。浮くと減点ですから。志望理由は100点を取る必要はないんです。70点を目指しましょう。これは面接の際も同じですが、言葉をたくさん使った微妙なニュアンス伝達や複雑な論理展開が必要な志望理由は総じて地雷です。やめたほうがいいです。どうせ、履歴書の志望理由なんてたいして読まないんですから、わざわざ”浮いちゃう”リスクは取るだけ損です。フツーのことを書きましょう。

11.最終確認は紙面で
PC上で確認すると漏れが出やすいです。絶対に印刷されたもので最終確認をしましょう。


第三節  大きな減点をカバーする裏技

履歴書のなかで最大の減点事項は何か?それは、職歴の空白や、入社からの短すぎる退社、転職回数の多さ、など「会社・組織への定着に問題がある可能性」を示唆する事実です。

一度雇った人が辞めるときの企業側の経済的損失ってやばいんですよ。これは本当に知っておくべきです。企業の採用担当が一番避けたい、恐れているのって実はそれなんです。採用したけど、半年でいなくなっちゃった・・・なんてことになったら企業は大ダメージだし、採用した責任者は上司にどやされる可能性が高いでしょう。

だから、会社をやめそうな人、会社に定着できないかもしれない人は、真っ先に足切り対象に入れられることになります。
で、問題が起きるんです。そうはいっても、実際にオレ、前の会社3ヶ月で辞めてるし、、、とか、そういえばオレ、1年間ニートしてたわ、、、とかそういう事実がある場合ですね。

これ、退社の時期や会社在籍の時期を偽っては書けないんですよ。物理的にできないことないかもしれないけれど、もしバレたら採用取り消しとか言われても文句言えなくなるし、せっかく入社した会社と揉めても辛いだけなので。

つまり、そういう事実がある人は、どうにか対策をしないと大きな原点を食らっちゃうってことです。でも、どんな対策ができるのか、そもそもそんな対策可能なのか、と思いますよね。でも、実は一つあるんです。裏技が。

どうするかっていうと、結論、「備考欄」のようなフリースペースに「これなら仕方ないよなぁ」と思わせるもっともらしい理由を書いておくんです。

例えば、以下は3ヶ月で前職を辞めている場合の言い訳例です。


例1.コロナ禍で、会社の業績が一気に傾き、早い転職を決定した。

例2.親の介護が必要となって、入社したときと同じ条件で働くことが困難になり、上司と相談した結果、転職を決めた。

例3.会社の経営方針が急激に代わり、危機感を覚えた。


などです。結構使えそうでしょう。
間違っても、会社の悪口やそれに近しいことは書かないようにしましょう。あくまでも責任の所在はこちら側です。そのスタンスを崩すことなく、その上に「どうしても仕方なく」という理由、ニュアンスを表すことができればベストです。これって面接時でも必修の受け答えなので、ここで習得しておくことをオススメします。

この対策を取ることで、「3か月で辞めた事実は採用側企業としては受け入れにくい、歓迎できないものである」ということは承知していますよ!というアピールをすることができるわけですね。私は組織人としての一般感覚の共通理解が可能ですよって伝えることに意味があるわけです。減点が0になることはないかもしれませんが、確実に書いているほうが好印象です。この手順が必要な方は実行してみてくださいね。

履歴書作成についてはここまでです。
以上を参考に、防御力MAXの履歴書を作成してください。


【第八章】 書類作成 〜職務経歴書編〜


では続いて、職務経歴書を作成していきます。職務経歴書とは、これまで自分が経験してきた仕事の概要及び詳細、ポジションや成果等を示す書類です。多くの場合それらの項目に加えて、自己PRや資格・スキルの明示欄もあります。

職務経歴書と履歴書との決定的な違いは、記述する内容について自分なりの工夫を入れ込む余地が多い、というところです。また、ここでは減点方式の評価ではなく、加点方式の評価となります。つまり、職務経歴書とは、あらゆる手を使いながら採用担当者に「面接に来てほしい」と思わせるための書類なのです。あらかじめ覚悟してほしいのですが、職務経歴書の作成は履歴書の作成の比ではなく、手間ひまがかかります。じっくりやっていきましょう。


第一節  職務経歴書の基本の”き”

正直、この節の内容は全編を通してもベスト1,2を争うくらい重要でクリティカルなものではないかと思っています。ぜひ、押さえていただきたい内容です。

まず、職務経歴書の目的をハッキリさせておきましょう。
大事なことなので、強調しますよ。

職務経歴書の目的は、採用担当者(書類を読む人)に、「面接に来てほしい」「直接会ってみたい」と思わせることです!!

もう一度いいます。

職務経歴書の目的は、採用担当者(書類を読む人)に、「面接に来てほしい」「直接会ってみたい!」と思わせることです!!!!!!!!!!!!!!


何?いきなりおかしくなった!?と思われる人もいるでしょうから、もう一言付け加えます。

職務経歴書は、あなたのすごさ、優秀さ、をアピールすることを第一目標とする書類ではないのです。

ここの勘違いをしている以上、書類選考、及び面接において(というか転職そのもののにおいて)、良い結果を得ることは難しいでしょう。

あなたの優秀さをアピールすることと、採用が決まることを、同列もしくは強い相関関係があるものとして勝手に捉えてはいけません。

このことを強く意識しましょう。
職務経歴書は、採用担当者に「会いたい」と思わせさえすれば、それで大成功なのです。それができるなら、背伸びをすることもカッコつけることもないのです。

もう少し話を進めましょう。

そうであるならば、書類を書き始める前に絶対的に重要な作業がありますね?
おわかりですか?

そう、それは、「採用担当者(つまりその企業)がどんな人物を欲しがっているかを徹底的に調べること」です!

だいたい、中途採用というのは、採用の“枠”が決まっているものです。

こういうポジションが空いているから、こういう経験がある人材が欲しい、とか。
こういう分野に力を入れていきたいから、こういうスキルがある人材が欲しい、とか。
企業全体の新陳代謝を上げたいから若い人が欲しい、とか。
とにかく即戦力しかいらない、とか。
人件費を削りたいから、とにかく若い育成枠が欲しい、とか。

もちろんこれらが複合的に絡み合っているわけですが、実際のところ、労働力の確保というのは、企業側にとって最重要の課題であり、大きな支出ですから、「なんとなく決める」なんてことはありえません。

明確なニーズと、労働力の強さ&支出、のバランスをしっかりもって、「じゃあこのレベルでこういう人を採ろうか」ってやっているわけです。

この採用の“枠”を想定して、その枠の中に自分を入れ込み、ど真ん中ストライク人材として自分を売りこむ、これが転職の必勝定石です。


第二節  企業の採用“枠”を分析する

では、どうやって、何を手掛かりに企業が欲している人物像を浮き彫りにしていけばよいのでしょう。

結論から言うと、あらゆる全ての情報がヒントになるのですが、中でも有効な情報ソースを整理しておきます。

1.転職サイトに掲載されている採用募集ページ

2.企業のホームページ

これをメインとし、必要に応じて口コミサイト等を利用するだけで十分です。

では具体的にどのように企業の採用枠を想定していくのか、2つの例で示していきます。


【具体例① 中規模学習塾の場合】

これから示す例2つは、実際に僕が転職をして働いた会社となります(2つ目は今も働いている)。1つ目の例は中規模の学習塾です。


<採用ページ&ホームページから得られた情報>

・「あなたの経験を活かしてみませんか?」「教育現場経験者、大歓迎」など「経験」というワードが多く見られた。逆に未経験可という文言はない。

・実績次第で2~3年で教室長の可能性もある。

・年齢は不問

・当時、伝統的な学習塾事業から手を広げ、就職支援事業(大学生と企業のオンラインマッチング事業)、eスポーツ事業(プロゲーマーチームのマネジメント事業)への進出を狙っていた。

・社長からのメッセージに、既存の学習塾スタイルからの脱却、新しい伝統の創造、が謳われていた。


もちろんもっとたくさん情報はあるのですが、採用枠の想定に関して大ヒントになるものだけをわかりやすく抜粋してみました。

いかがですか?あなたならこの情報からどのような採用枠を想定しますか?
ちょっとクイズ的に考えてみてください。


<僕の答え>

僕は、あぁ、完全に即戦力パターンだな、と思いました。おそらく、幹部など会社の軸となる労働力が新規事業の方へ手を取られており、既存の学習塾を支える人材が不足しているのではないか、と想像しました。ほぼ間違いなく、新米や完全未経験の塾講師は採用する気がなく、最初からある程度一人で仕事を任せられる人が採用枠だと想定しました。しかも、社長メッセージや新規事業(特にeスポーツ事業)への進出から勘案して、最新のテクノロジーや世の中の流行に敏感で、自分の意見やアイデアを積極的に表明でき、変化を怖れず、ゴリゴリ仕事を進める「肉食系」が好まれるだろう、というところまで想定を深めました。

<結果>

職務経歴書では、教師経験(学級担任の経験や部活動顧問の経験)、英語授業力、を全面に打ち出し、即戦力感を強くアピールしました。さらに、ワードプレス(人気のブログツール)や専用ソフトでの写真・動画編集のスキルがあることも加えました。これで、即戦力&流行・IT系に強い、という、どストライク人物像を作り出しました。面接の時もそういう想定で受け答えをしました。

結果は無事採用でした。


【具体例② 国公立大学事務の場合】

現在僕は大学の事務職員として働いています。転職をしたのが2年前。採用想定人材の分析は今でもよく覚えています。

〈採用ページ&ホームページから得られた情報〉

・採用は毎年3名程度
・地域に根ざした大学づくりを目指している

以上!wwwww

いや、冗談抜きで、かなりノーヒントに近くて困ったんですよね。で、まぁこういう場合もあると思います。例えば、公務員系だったり、それに準じた団体だったり、いわゆる営利企業以外ですね。そういうところって独自の路線とか打ち出していなくて、とにかく“当たり障りのない”情報しか出していないんです。これらの採用募集ページというのは、「募集要項」となっており、非常に堅苦しく、なにも手がかりがありません。

そこで、こういう堅物相手(これが実はホワイト率高い)の対処法をお伝えします。


〈考え方と対策〉

基本的に、国公立大学事務や公務員等、営利企業でない(もしくはその色が薄い)ところは、他の営利企業とは毛色がまったく異なります。組織としての目標が違うから当たり前ですね。

営利企業は利潤を求めます。世の常として、利潤は常にフロンティアにあります。つまり、開拓、進化、効率化、そういうものを必然的に追い求めることになるわけですね。それに応じて必要な人材も、ざっくり前述の「肉食系」になるんですよ。ベンチャー企業なんかその筆頭というか、その特徴がものすごく強いわけです。

一方、利潤が第一ではない組織というのは、基本的に地域社会のインフラとして機能していることが多いです。役所、大学、消防署、ハローワーク、児童相談所、 etc. インフラっていうのは、「安定的に持続的にサービスを提供すること」が使命です。つまり、現状維持ですね。例えば、今月は役所閉めるけど、来月から利用者満足度10%向上させます、ってやっても意味ないし、それは困るんです。だってインフラなんだから。となると、必要となる人材も変わってきて、「安定志向」になります。こういう組織にとって一番困るのは、調和を乱す個人プレイ野郎です。ベンチャーなどなら「失敗してから考えよう!」みたいなことも許されるかもしれませんが、それってこういう組織でやるとNGなんですよ。皆困るから!!ここ、本当に大事なので強調しますね。利潤を求めない組織が欲しい人材って、優秀なガツガツ挑戦肉食系、ではなくて、ちょっとくらいトロくても調和と安定を重んじる草食系なんです。特に組織内での協調性が最重要スキルです!(ここ必修)
ちなみに、営利企業でも、例えば元国営企業(JA,JR)やインフラホワイト大企業(ガス、電気など)にはこれと同じ傾向があります。

つまり、フロンティアを目指して冒険し、お金を獲得する必要がある企業なのか、それとも現状を維持するだけで使命を果たせる組織なのか、で採用の“枠”は全く違うんです。


〈結果〉

僕は、完全に草食系を装いました。協調性を第一に置き、過去の仕事については、チームで得た成功体験や、組織研修のリーダーを務めた経験を前面に押し出しました。採用担当が「あ、この人は組織の一員として仕事をするということがどういうことかわかっているな、無茶なことはしそうにないな」と思うような職務経歴書及び面接の対応を心がけました。結果は、採用でした。おそらく倍率は40倍近くあったように記憶しています。やはり、“枠”の想定は、結果に直結するな、と確信しています。


第三節  まとめ 職務経歴書の書き方


では、これまでの話をもとに実際に職務経歴書を作成していきます。もう覚悟をしていることとは思いますが、念の為言っておくと、各企業へ効果的にアピールするためには、やはり各企業ごとに、それぞれ提出する職務経歴書を作成するべきです。履歴書はある程度使い回すことができますが、職務経歴書はそうはいきません。手間暇がかかります。

さて、第二節で説明したとおり、まずやるのは企業側がどのような採用“枠”で人材を募集しているかの調査です。平たい言葉で言えば、ニーズ分析ですね。

このニーズ分析さえ緻密に行うことができれば、作業は半分以上終わっています。後は、企業側の理想像に経歴や職能を含めたあなたの姿を重ねてゆくだけです。

あなたの職歴や経験、スキルのどの面を強調させるか、それらをどの角度から切り取るか、それを考えましょう。

個人プレイが歓迎されるようなら、それにあった経験やエピソードを打ち出すし、協調が重視されるなら、チームとしての成功談やチームとして結果を出すコツやその考え方を打ち出せばよいのです。これは、面接においてもまったく一緒です。ニーズに沿った職務経歴書を書くことができれば、内容がすごいものでなくとも、通過できます。相手が求めている労働力を提示する、それが全てです。


【最終章】  転職の力


教員時代、僕は本当に仕事に行くのが嫌で嫌でたまりませんでした。

体は疲れているのに、仕事のことが気になってぐっすり眠ることもできず、早朝に目が覚め、その日自分がやらなければならないことを考えては憂鬱すぎて、再び眠ることもできず、ため息と寝返りを繰り返していました。通勤の車の中では、本当に元気が出ず、赤信号で引っかかるたび、仕事場に着く時間が先延ばしにされるようで嬉しかったのを今でも覚えています。「このままではいけない、このままでは生きているといえない」そんな内なる声を無視し続けて数年間、僕は地獄をさまよい続けました。

ある日、親しくさせてもらっていた人生の大先輩の訃報が我が家に届きました。急性白血病でした。まさか、という驚きと悲しみの気持ちと同時に、後から「俺は生きているんだ、生かされているんだ、生きているのになぜ死んだような目をしているんだ、俺は何をしているんだ」と、何かが吹っ切れたような気持ちになりました。人生を変える、ここではない場所へ行く、という決心がやっとついた瞬間でした。

公務員からの転職ということで、周りからは心配されたし、反対もされました。けれど、それ以上に、「転職で自分の人生を取り戻す」という気持ちが強かったです。毎日、「絶対にここではない場所へいく」と強く心に誓いながら、転職活動を行いました。

転職が決まり、実際に「ここではない場所」で働き始めて、わかったことは「強い覚悟は確実に人生を変える」ということでした。人生は、勇気で進んでいくものだ、という学びを僕は転職を通じて得ました。

転職は怖く、難しく、面倒です。
しかし、人生を大きく変える力があります。
これは真実です。
勇気を振り絞った転職の先に、まだ見ぬ、もう一回り大きくなった自分が待っています。

あなたが転職によって、より豊かな人生を生きることを祈り、結びといたします。
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。


ツキオ



p.s
面接対策については、書きたいことが多くありすぎて、別で書くことにしました。近いうちに「転職活動完全ロードマップ 〜面接対応編〜」として公開しますので、そちらも興味があれば読んでみてください。(^^)

2022.3.6 書きましたので、こちらからどうぞ!

転職活動完全ロードマップ【面接編】


よければここにも立ち寄ってみてください。

ブログ「ツキオのジャンクルーム


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