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2020 D&AD Film入賞アイデア

世界最大級の広告祭「D&AD」のFilm Advertising部門から

 ・フィルムアイデア、ストーリー
 ・統合キャンペーンアイデア
 ・個人的に好きなワークス、アイデア
 

をピックアップしています。実務の参考になりそうなアイデアを選んでいますので、必ずしもメジャー作が入る訳ではありません。フィルムクラフトなども入っていません。それ以外も、全ての受賞(Wood Pencil 以上)ワークスに一言添えています。気になったもの、間違ってるくさいものはD&ADサイトでチェックしてください。

「英語も文脈もよく分からないし誰か海外賞まとめてくれてたらいいのにな〜」と若手の時に思っていたことを思い出し、今後エバーノートではなくここでまとめることにしました。

凡例: 

・D&AD各賞は以下を意味する。
YP= Yellow Pencil(Gold相当)、注!GP=Graphite Pencil(Silver相当。グランプリじゃない)、WP=Wood Pencil(Bronze相当) 今回Black Pencil (グランプリ相当)はなし。
・各ワークスは以下の順で並ぶ。
”WORKS名”/代理店/クライアント/国/映像プロダクション/ディレクター


1:フィルムアイデア

YP:"Back to School Essentials"/BBDO New York/Sandy Hook Promise/United States/Smugger / Dir.Henry Alex Rubin
銃乱射の啓蒙CMなので、直接参考にしにくいが、日本人も大好きな「〇〇の広告だと匂わせといて予想外の訴求」系のCM。アメリカで新学期用のアイテムの広告が増える12月にそういう類の広告だと思わせといて、学校の銃乱射事件の啓発に繋げるストーリー。この"Sandy Hook Promise"は12月上旬のこの時期に、School Shootingの啓発動画を出していて、有名な二度見系ムービー傑作"Evan"を筆頭に、明日起こる乱射事件を過去の時制で語る不可思議な"Tomorrow's News "など、毎回ストーリーテリングのアイデアが秀逸。プロダクションとディレクターがEvanと同じ、SmuggerのHenry Alex Rubinでストーリーラインも「ほのぼのとした学園の風景と思わせといて、銃乱射啓蒙というエンディングに水面下で進行している」というプロットも似ている。Evanもこちらも最後圧倒的なバッドエンドで終わるので、そこは正直なんとかならないものか。


GP:"Old Spice Next Episode"/Wieden+Kennedy Portland/Old Spice/United States/Biscuit Filmworks/Dir. Steve Rogers
オールドスパイス。「まったりしちゃってて家から出たくなさすぎる」友達をオールドスパイスとともに夜遊びに誘う誇張CM。あるあるインサイトと、おもしろセリフ+迫力演出の伝統的なタイプのギャグ長尺CM。好き。監督はCM界のスター、スティーブ・ロジャース。



WP:"Spotify In-House"/Spotify/United States/Epoch Films/Dir.  Matthew Swanson
スポティファイ。「曲に陶酔しすぎて車から出たくない人たち」というあるあるインサイトのこれまた、研修で考えるようなCMアイデア。SiaのElastic heart がフルで流れているのがポイントで、これによってこれと言ったオチもないマイルドなストーリー展開でも見飽きない、というか聞き飽きない。ビッグブランド&バジェットならではで、他のマイナーストリーミングサービスだと結構普通に見えるかも。



WP:"Physics"/McCann Prague/Brontosauri v Himalajich/Czech Republic/Bistro Films, Boogiefilms/Dir. Marek Partys
チェコのチベットでの教育促進NGO。現状を面白く誇張して描くアイデア。教育の行き届いてないリトルチベットにチェコの教師にもたらされた一冊の物理の教科書のおかげで、子供達がトンチンカンな物理実験を繰り返し街が困る→「もっとたくさん教師を派遣してください」というストーリー。フィクションに見え過ぎないトーンとリトルチベットの美しい街並みがいい。ビッグイシュー。



WP:"Starbucks – What's Your Name?"/Iris/Starbucks UK/United Kingdom/Sweetshop London/Dir.Nicolas Davies
女性の名前"Jemma"と名付けられたトランスジェンダーの女性がスタバで男性名の"James"を名乗るCM。ブランドのもつ慣習を(この場合は名前をカップに書く行為)と課題を結びつけるやり方。訴求がビッグイシューでなければ日本でもこういう方法はやれる。


WP:"Bleep"/BETC/Canal+/France/Henry/Dir.Martin Werner
CANAL+がストリーミングサービスを始める告知CM。"NETFLIX"と言えないので、あえてピー音で伏せまくる。映像表現のメタ要素を利用するアイデア。クラフトが豪華。



2:統合/その他プラットフォームアイデア

GP:"Film 4 Idents"/Saatchi & Saatchi London/Direct Line/United Kingdom/Rattling Stick/Dir. Daniel Kleinman
TVメディアのうまい使い方。TV放送中の映画に入るCMで、その映画に言及した保険内容をテレオペの人が語る。むしろ日本だと、番組とコラボしたCMとかが当たり前に流れているのでインパクトがないかもしれない。番組ではなく映画のほうが本格感があっていいかも。こんな動画しかなかった。


GP: "Moldy Whopper"/INGO Stockholm, David The Agency Miami, Publicis, INGO Stockholm, David Miami, Publicis/Burger King/United States/?/Dir.Markus Ahlm
バーガーキングのおなじみMoldy Whopper統合キャンペーン。保存料を使ってないワッパーがカビていく様を美しく描く。「一般的にマイナス(醜・悪・不便)と思われているものを逆手にとる」という手法。それ自体は珍しくないため、そうなると、どこまで思い切れるか、と、ブランドバジェットの大きさの勝負になってくる。食品添加物問題なのでソーシャルイシュー的側面も。


GP,WP:"Play"/Colenso BBDO/Spark/New Zealand/The Sweet Shop/Dir.Mark Albiston
プロダクト型統合キャンペーン。アイデアの中心は外で遊ぶとゲージがたまって、その時間、オンラインゲームができるスマートラグビーボール。CMはただのプロダクトの紹介ではなく、「ゲーム内キャラクターと会話して、外で遊ばなきゃならないことを申し訳なく伝える」内容。行き過ぎてこれだけ見ると商材の意味が伝わるか疑問。


WP:"The Epidemic"/BBDO New York/Monica Lewinsky/United States/Sanctuary/Dir.Cole Webley
Onlineフィルムのうまい使い方。ムービーを見終わった後に電話番号を登録すると、主人公が体験したネットいじめのメールが自分の携帯に届く。読後感が悪いのと、誰も自分の携帯の番号提供したくない気がするのがちょっと。クライアントはあのモニカ・ルインスキー。昨年も彼女名義のキャンペーン"Defy the name"でいくつか広告賞を受賞していた。



3:要チェック

WP:Crocodile Inside/Iconoclast Paris, BETC Paris/Lacoste/France/
Iconoclast Paris/Dir.MEGAFORCE .

ラコステ。文字通り亀裂が生じ始めたカップルが、愛を取り戻すというストーリーもアイデアも単純で企画としては応用しにくいけど、とにかく、VFXのクラフトとアートディレクションが半端ない。



4:その他Wood Pencil(ブロンズ) 以上全部

YP&GP:"IKEA – Silence the Critics"/Mother London/IKEA/United Kingdom/MJZ London/Tom Kuntz
→家の小物たちが、ラップに合わせて、家をディスる。Tom Kuntzはライアンレイノルズの"Peak Cames"のCMがバカで面白い。

YP,GP:"The Long Fight Gender Gap" / Droga5 New York/The New York Times/United States/?/Dir. Jesse Brihn
昨年カンヌGP、NY TIMESの"The truth of worth it"のスポーツに置けるジェンダーイクオリティの派生版。ビッグブランド&ビッグイシュー。

WP:"Mind Control"/adam&eveDDB/Uniliver/United Kingdom/Moxie Pictures/Dir.Martin Granger
マーマイト反対派を取り込むべく公然と「マインドコントロール」をやるという統合キャンペーン。個人的には若干スベってると思った。

WP:"Caught on Camera"/Apple/Apple/United States/Imposter
Steve Jobs シアターでのApple TV+発表会を事前にオンラインで覗こうとした人たちに対してフェイクのストリーミングを流す。(よく理解していない。)Innovation in film

WP:"BBC iPlayer – Wasted on Some"/BBC Creative/BBC iPlayer/United Kingdom/Anonymous Content/Dir Tim Godsall
「こう言うみんなが思ってる典型的なBBC読者はこのアプリのターゲットではない」という会話ものCM。

WP:"Nails"/Venables Bell & Partners/Reebok/United States
The Mill Biscuit Filmworks/Dir Andreas Nilsson

予定調和ではなく「予想外Unexpected」を楽しもうというブランドメッセージ。基本タグライン落としの「予想外大喜利」になっているため、あまり納得性がなく、参考にしづらい。ビッグブランド。

WP:"Fence"/VCCP London/Cadbury/United Kingdom
Academy/Frédéric Planchon
おもちゃが柵を越えて投げ込まれる偏屈そうなおじさんに子供達がチョコを放り込むストーリーの、いいはなCM。

WP:"CNY"/Wieden + Kennedy Shanghai/Nike/China
The Loft Films Shanghai and MJZ(LA)/Dir.Steve Ayson
お年玉を強引にくれようとする叔母から、走って逃げるほっこりCM。金かかってるな、クラフトいいな、と思ったら、中国の仕事だけど、アメリカの大御所ディレクターSteve Aysonに発注している。

WP:"The Underdogs"/Apple / APPLE & SMUGGLER/United States/Smuggler/Mark Molloy
突如発生したプレゼンに向かうまでの奮闘を描くCM。個人的には企画があるようなムービーではないのでそんな好きではないけど、去年カンヌも取っていた。


D&ADはビッグブランド、ビッグイシュー、ビッグバジェット、どれか二つ以上ないと厳しい印象だが、意外に、古典的なストーリー型ムービーに寛容なイメージ。

おしまい。

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