自民党税調は減税を潰すため嘘をついている。
税収を想定する計算式は「税率×名目国内総生産(円建て)×税収弾性値」です
将来を予想するために税率を固定として(減税の場合にはあらかじめ下げて設定する)、名目GDP成長率と税収弾性値を使うのもアリでしょう。
その場合には、「減税額×租税乗数」をして名目GDP上昇幅を計算し、名目GDP上昇幅÷去年の名目GDPをして名目経済成長率を算出して、「去年の税収(減税の場合は減税額を引いておく)×名目経済成長率×税収弾性値」をすると、ザックリではありますが税収の増加分を予想できます。
ちなみに租税乗数は2から3と言われているので安全を考えて2とし、税収弾性値も2から4と言われているので2とすると、103万円の壁を178万円に引き上げる所得税減税策(7兆円規模)は、3年で減税前の税収を上回り、2年間の投資額を6年で回収できます。
ちなみにアメリカの財政規律のPAY GO原則に則ると「5年間または10年間で単純に義務的な財政を赤字にする政策はダメですよ」となっているので、この恒久減税は財政規律で考えても問題ありません。
じゃあなぜ財務省に情報提供された総務省やマスコミ、または実務を担う自民党の税制調査会が大騒ぎしているのでしょうか。
それは「安全のため」といって減税の経済効果を異常なほど低く見積もっているほか、経済成長による税収増を恒久財源として認めていないからです。「アメリカではできますが日本では前例がないのでできません」と言っているようなものですね。
まず、減税の効果を「需要サイド」でしか計算していません。つまり103万円の壁が引き上げられてパートやアルバイトの人たちが年末調整での働き控えをやめるとか、好景気になって働く量を増やすだとか、もしくは7兆円規模の恒久的な所得税減税で「個人消費が増える(価格転嫁できる)」と予想した経営者が設備投資や人的投資を増やすだとか、そういう供給サイドへの波及効果を盛り込んでいないのです。
さらに政府の想定は「インフレ率を2%で維持する」間違ったインフレターゲットの認識に基づいているため、インフレ率に大きく影響を受ける名目GDP成長率を押し下げ、税収の伸びを低めに見積もってしまいます
消費者物価指数の総合値の年次2%から4%を容認して、食料品とエネルギーを除く指数の2%以上を確実にし、また需給ギャップの10兆円程度を埋めて超過需要を確保すれば、名目GDPは必ず上がります。
税収弾性値を1.1で見積もるのもおかしいでしょう。実証研究(現実の統計データ)とさすがに差がありすぎます。
まるで財務省や自民党の税調は「減税させないために」恣意的に困難な試算をしているように見えます。
初期投資として必要になるだろう新規国債10兆円程度を惜しんで、中長期的な経済成長と税収増を逃すのはあまりに非合理的です。それに債務償還費16兆円の一般会計と特別会計の二重計上を辞めれば帳簿上はそんなに変わらないでしょう。
そもそも毎年のように「一時的で効果の劣る」補正予算を組んで国債を発行する方が財政は不健全です。
消費者や民間企業は中長期的な経済の先行きを想定しています。
特に民間企業の経営者は今後5年10年を見据えて「個人消費はどれくらい伸びるだろうか」「価格転嫁はどれくらいできるだろうか」「いま設備投資をしてモトは取れるのだろうか」と考えています。
したがって政府は「大丈夫です!今後10年間の個人消費を恒久減税で伸ばします!安心して投資してください!」と言わなければいけません。
であるにも関わらず、政府はこの20年間30年間、個人消費を中長期的に拡大させる恒久的な政策を避けてきました。
アベノミクスは補助金を増やすことで奮闘しましたが、積極財政であるため「デフレ政策よりも1億倍マシ」なものの、企業に対する期待の効果を考慮すると正しくもあり間違ってもいたのです。
「手取りを増やす」視点が欠落していました。
いまこそアベノミクスを継承発展させる必要があります。