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脳内フィクション

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頭の中に数多く思い浮かんだ「小説ほど長くないけどちょっとしたお話」を紹介していきます。 ちなみに全てフィクションです。 面白いかもしれないし面白くないかもしれないけど 読んでいた…
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2023年6月の記事一覧

先生、僕たちは。

道徳の授業というのは、何の為になるのか分からなかった。4年生の夏、少し成長期を迎えた僕は時間割を見る度に毎週水曜日の4時間目「道徳」の文字の必要性を考えていた。別に道徳の授業を受けたところで頭が良くなるわけでも、身体が鍛えられるわけでも無い。僕の周りには塾に通っている友達も多く、中学受験を考えている子もいてそういう意見は多かった。そんな疑問を抱えていたある日、先生がこの間教室の後ろに「目安箱」とい

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ティファニーブルーはやめておきなさい

「ママ、ママ。この紙袋、いっぱいあるの、なんで?」

妃美子は娘の紗南の声に手を止めた。振り返ると、瞳を輝かせて紙袋の山を漁っている。妃美子が溜めに溜めたハイブランドのショップバッグだ。何に使うでもないけれど、1つ何かを購入する度に大切にしまっていたらクローゼットの隅に収まらなくなり、いくつか処分しようと出しておいた山だ。紗南はその中からティファニーのショップバッグを束で出していた。

「これ、な

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雨の中、屋根の外

頭が痛いと感じた数分後には、雨の音が聞こえた。低気圧に弱くて得をした人間がこの世に1人でもいるのだろうかと洋子は考えた。経理事務という仕事はこういう時に相性が悪い。頭痛と数字なんて一番組み合わせてはいけないものだろう。

「足立先輩、頭痛大丈夫ですか?薬ありますよ」

後輩の吉沢みくに声を掛けられて我に返る。天然で仕事は決して早くないが、ひとつひとつ丁寧にこなし、周りへの気配りも出来るみくは、社内

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