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テンカイズ・ラジオピッチの模様をお届け! 2021/01/13 #テンカイズ

去年12月22日、TBS 放送センター内で開催された「サッポロ ゴールドスターpresents テンカイズ オンラインフェス」。第1部で開催したビジネスコンテスト、「テンカイズ・ラジオピッチ」の模様をお送りします。

審査員には番組プレゼンターの浜田敬子さん、野村高文さん、三浦崇宏さんのほか、投資家の方にも加わっていただきました。

今回のピッチでは3人の方が登壇し、それぞれのビジネスプログラムをピッチしました。各ピッチは5分間。それぞれの事業に対する熱い想いを語っていただいた後、審査員からの質疑応答の時間も設け、審査が行われました。

1. 視覚障害者専門ナレーションサービス「みみよみ」:荒牧 友佳理さん

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皆さん、リンゴはお好きですか?
甘くておいしいリンゴが、誰も通らない路地裏にたくさん実っていたら、皆さんならどうしますか。「こんなにおいしいリンゴがあるんだよ」って、思わず誰かに伝えたくなりませんか。
私たちはまさにその知られざるリンゴの第一発見者です。そのリンゴとは、ここにいる北村くんです。

彼は全盲でありながら、一般のナレーターと肩を並べてレッスンを受け、オーディションを勝ち抜き、現在はプロのナレーターとして活躍しています。

みみよみは、彼のような優秀な才能を世に出すために作られました。

私達がこの仕事を始めた理由は、とてもシンプルです。
私達の両親は、2人とも目が全く見えないからです。全盲の両親に育てられた私達は、目が見えなくても、ちょっとした工夫さえあれば、他の人と同じように働けることを誰よりも知っています。だからこそ、この事業がビジネスの枠を超えた価値があるものだと確信しています。

残念ながら現在、目が不自由な人にとって、声の仕事に就く機会はほとんどありません。視覚障害者の職業選択の幅は、他の身体障害に比べても圧倒的に少ないのが現状です。

だからこそ私は、子どもたちにナレーターという仕事を提案できるような存在になりたいのです。テレビや CM、ラジオなどで、仲間のナレーターの声を聞くことができたら、子どもたちにとって大きな力になることは間違いありません。
目の不自由なナレーターの活躍に勇気づけられるのは、視覚障害者だけではありません。その社会に生きる全ての人にとって誇らしく、生きやすい世の中だと思います。

私の目標は2023年までにみみよみを日本最大級のナレーション事務所にすること。そして24年からは、このサービスを海外でも展開したいと考えています。

世界には2億5300万人の視覚障害者がいると言われています。
声を仕事にしたいと考えている私達の仲間は、まだまだたくさんいるはずです。彼らの活動を後押しできるような仕事がしたい。私の人生をかける価値があると思っています。
多様な人材が活躍する社会。そして、それを喜べる社会の実現には、多くの人々の力が必要です。ぜひ力をお貸しください。応援よろしくお願いします。

〜質疑応答〜

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野村:視覚障害者のナレーターの仕事って、具体的にどういうところで活躍されるんでしょうか?

荒牧:まずは、株主総会などのビジネス向けのナレーションを皮切りに展開していきたいと考えています。
株主総会や企業説明会は、定期的に必ず需要があります。加えて、映像に声を合わせる必要がないので、ナレーターとしての難易度は低いんです。なので、まずはそこから始めていくつもりです。

ナレーションというのは今至るところにあります。
例えば最近だと、海外のニュースサイトなんかでは、ナレーターが文章を読んだ音声が埋め込まれて入っていたりするんです。

野村:テキストのニュースを耳で聞きたいという人は、どんどん増えているような気がします。そこにナレーターの需要はあるのかもしれないですね。

五島:ナレーションっていう業務において、全盲の方だからこそできること。全盲の方のほうが、むしろ有利な点がもしあれば教えてください。

荒牧:まず全盲の人が有利な点は、視覚障害者にとって声ってすごく特別な存在なんですよ。
声に関する感性というのが、全然違うんです。そういったところを耳で楽しんでもらえるような社会になってくれたら本当に嬉しいです。

2. イノシシを地域の宝に変える農家ハンタープロジェクト:宮川 将人さん

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「イノP」は、イノシシプロジェクトの略なのですが、実はこれは私の二枚目の名刺です。
本業は熊本・天草にある花農家の3代目として、蘭を作ってインターネットで販売する「サイバー農家」をしています。この二つ目の名刺であるイノPは、私が地域課題を解決するために立ち上げたビジネスです。

皆さんは、イノシシを見たことがありますか?
昔から、ずっと世の中の人が付き合ってきた身近な野生動物です。ただ最近では、収穫直前のお米が食べられてしまったり、車が衝突事故に遭ってしまうなど、被害が相次いでいます。

そんな中、忘れられない一言があります。2016年の2月でした。
私の友人のお母さんが、「もう農業はやめようと思うとたい」と話していました。イノシシによって食害されたみかんを見て、「もう怖い、畑に行けない。また作っても、食べられる」と絶望していたのです。そのとき初めて、私はイノシシ被害の深刻さを知りました。

周囲に聞いてみると、みんな同じような目に遭い始めていました。
調べてみると、ハンターの数はこの20年間で半減し、イノシシの数は3倍に増えていたんです。

「どうにかしなきゃいけない」

そう思い私は農家の仲間を集め、勉強会を開きました。
さらに、農業と鳥獣対策を両立していくために、ICTが必要だ。私たちは積極的にサイバー技術を導入し、イノシシの見える化に成功しました。

そんな若い農家のみんなが、地域を守るためにハンター活動をやっていくというのが、私達の農家ハンターイノベーションです。ファーマー、サイバー、ハンター、この三つを組み合わせた新しいチャレンジです。

ハンターと言っても、私たちは銃を使いません。
山に平穏に暮らすイノシシさんには手を出さずに、地域に降りてきたものを守る、餌付けをしないようにする、どうしようもないときには捕獲をするという3ステップで考えています。

クラウドファンディングでの資金調達も成功し、実績も積み重ねてきましたが、ここで課題が出てきました。
……捕まえたイノシシの活用法です。
1000頭ものイノシシを埋めているだけだった現状を変えるために、この株式会社イノPを作り、中山間地域の資源として活用していく取り組みを始めました。

ジビエファームを作って、お肉にすることができるようになりました。循環型モデルによって、最高級のお肉を人用に、そして赤身の部分をペットフードに。さらに社会的活動として、保護犬のワンちゃんに骨をプレゼントする。さらには、皮を利活用する。肥料になったものを、畑に戻すことも成功しました。実際においしいハム、プリプリのソーセージ、そしてオーガニックのペットフードを今開発しています。

私達の農家ハンターのジビエがおいしい理由、それはおいしい農産物を食べまくってるからです。
さらに、 IoT を使って捕まえる新鮮さもあります。
そして、7月、8月と2人続けてジョインした仲間は、一流のシェフです。
こうしたみんなの力によって、皆さんのスマホから注文していただいて、ご家庭まで届けられるジビエのモデルを私達は確立させました。

利活用として革、石鹸、堆肥。ソーシャルビジネスとして今ではすごく期待される存在になりました。
私たちはイノシシの被害をこれからの地域の宝として、農村イノベーションを起こしていきたいと思っています。

〜質疑応答〜

久保田:先ほどプレゼンテーションの中で「必要以上に捕らない」とありましたが、ニーズが出てきたときに、「これ以上取らない方が、地域のためだよね」となるとビジネスと相反する部分が出てくると思います。その辺りはどういうふうに対応されていくお考えですか?

宮川:今全国でイノシシやシカの報告頭数は100万頭近くあります。
その内、実際に利活用されているのは、まだ10%も満たないです。そう考えると、私達がしっかり捕獲をしてジビエとして供給していく上で、まだかなりの伸びしろがあるんじゃないかなと考えています。

野村:今捕獲されている数の10%しか市場に出回っていないという現状には、構造的に難しい仕組みになっているのではないかと考えているのですが、どのようにそれを乗り越えようとしているんでしょうか?

宮川:一番取れない理由は、鉄砲猟だからです。
鉄砲だと、1日に1頭しか取れないです。私達の技術を使った方法であれば、今日だけでも7頭ぐらい捕獲したデータがスマホに来ています。私たちはIoT を導入しているので、効率的に、省コストで数が捕ることができます

3. 処方箋入力サポートシステム「mediLab AI(メディラボAI)」:松田 悠希さん

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このサービスは、処方箋の写真をパシャっと撮るだけで、その情報が全て読み取られて、ひとつのQR コードにその情報が格納されるものです。

なぜ、そんなものが必要なのか。
薬局で処方箋を出すと、30分とか1時間とか待たされることもありますよね。この要因として、処方箋入力業務がかなりボトルネックになっています。このA5サイズのちっちゃい紙の中に、かなりの情報量が入っているんです。1枚1枚、ミスが無いように、かなりの時間と注意をかけて入力されているんです。

この業務によって、業務の精度と処理速度が落ちてしまいます。
ちょっとした数字の変化に気付けなくてミスが発生してしまったり。処方箋が1枚ではなく何枚も一気にきたりすると、マルチタスクになって処理速度が落ちたり。

薬局は現在、服薬指導といって患者の方にしっかりコミュニケーションを取り、「最近どうですか、体調どうですか」って気遣いをするところに一番時間をかけたいんです。ただ、この処方箋業務によって、そこに時間をかけられない。結果的に、「薬局は薬をもらうところだよね。それ以上の価値はないよね」と患者の方に思われてしまうという課題があります。

それを解決するために、処方箋をスマートフォンやタブレットで撮影して、 AI によってダブルチェックが望ましい項目を中心にQRコード化させるシステムを構築しています。

AIの確率的な推論なので、全ての項目を100%認識するのは保証できません。
ただ、本サービスは得意領域があるということが分析を通して分かってきています。医薬品の規格、容量、保険者番号はAIの得意領域です。この領域は人間は見落としがちなところです。一方で、患者の氏名はAIの苦手分野なんですが、これは逆に人間が得意なところです。非常に良いバランス感覚が実現できているのが、このサービスの特徴となっています。

〜質疑応答〜

三浦:AIで読み解く技術自体は、いろんな企業が持っていると思うんですが、御社の独自のポイントはありますか?

松田:処方箋というのは、人間に最適化されているので、AI にとってすごく読み取りづらい構造になっているんです。ノイズが多いんですね。そうしたノイズの除去や、処方箋の無数なフォーマットにしっかりと柔軟に対応する。処方箋の構造に最適化したこの文字認識のシステム提供において、我々の強みを保有しています。

4. 最優秀賞は…?

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宇賀:サッポロ ゴールドスタープレゼンツ、テンカイズ オンラインフェスラジオピッチ。いよいよラジオピッチ最優秀賞の発表です。

浜田:最優秀賞は、みみよみの荒牧さんです!おめでとうございます!

宇賀:浜田さん、受賞理由をお願いいたします。

浜田:今回は皆さん、この社会にある課題に取り組むビジネスだったので、審査員の中でも意見は割れました。
その中でも、荒牧さんの発表を聞いて、障害がある方にとって逆に障害が強みになる社会が目に浮かんだんです。そういう社会だったら夢があるよねということで、みみよみさんが最優秀賞となりました。

荒牧:本当にありがとうございました。
まさか選ばれるとは本当に思っていなかったのですが、一番に私たちの仲間に「TBSさんからのお墨付きをいただいた」と伝えようと思います。


TBSラジオ「テンカイズ」毎週水曜21:00〜21:30!いま注目のスタートアップ企業や、これからブレイクしそうな業界など、新しいサービスやビジネスを紹介!
公式YouTubeチャンネルでも動画を公開しています。Twitter:@TBS_TENKAIZU

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