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田中一村展

滋賀県守山市の佐川美術館で開催中(-09.17.2018)の生誕110年田中一村展に行ってきた。数年前にこの画家のことを知り、どうしても本物の作品を目の前で見たいと願っていた。今回ようやく機会に恵まれた。会期後半での観覧となってしまい見たかった作品の一つが見られなかったがとてもよかった。個人的な備忘録として特に気になった作品への印象を言葉にしておく。

作品リスト#8 藤図
縦長で見上げるサイズの作品。紙面いっぱいにおおらかでダイナミックな墨の線で藤の蔓と葉、花が滝のように描かれていた。まだ少年期の作品。
独特な賛も自筆。

作品リスト#15 瓢箪図
とてもデザイン的な作品の一つ。琳派からの影響という注釈が様々な作品につけられていたがこの作品は琳派的というふうではないがデザイン的な印象は琳派にも通じるように感じた。

作品リスト#20 蓮図
紙面に収むることを好まず。
ダイナミックでありながら素直におおらかに描いている。

作品リスト#31 椿図屏風
金箔のみの左隻と赤一色と赤と白の混ざりの椿の藪が描かれた右隻。椿は赤と白混ざりの木が二本あるのかそれとも木は一本で咲き分けになっているのか見ただけでは判断できなかった。それほどにまるで黒々としているように見える葉に覆われていた。左隻には何も描かず、右隻のみ執拗に描きこむところはとてもデザイン的だがとても目を惹く作品になっていた。とても強く、そしてしつこい。コントラストが鮮やかな作品。

作品リスト#34 竹
シルエットで描かれた数本の竹。黒くしっかりと描かれたものに薄墨で描かれたものが重なっていた。
まっすぐに伸びる竹が清々しい。軽やかでいて重厚さも感じる。
表具が艶やかな青緑で縁取っているからかなぜかポップな印象も抱いた。
今回の全作品の中でも個人的に特に目を惹いた作品。ポップで面白い作品。

作品リスト#39 秋色
秋の様々な紅葉した草木。菱田春草を思い出す。

作品リスト#85 黄昏
暗い中の昔の民家。三角の屋根と周りにある上部が円錐の筒状となって重ねられた藁束のようなものが置かれていて周りの木は棕櫚のようなもので南国の雰囲気がある。しかし暗く、南国というキーワードを感じるがそこに合わない暗さに不思議な雰囲気を感じた。手前にそっと咲いている白い梅がなぜかとても生々しく感じた。面白い存在感のある作品。

作品リスト#114 白い花
一村の作品の中で特に有名な白い花と同題の作品。トラツグミの向きがこちらは逆を向いていたように思う。トラツグミの目元の描きこみの細かさ、羽の描きこみの細かさに鳥肌が立った。美しい作品。

作品リスト#140 パパイヤとゴムの木
前述の竹に似た雰囲気。シルエットで描かれたパパイヤとゴムの木。

作品リスト#146 クロトンとカヤツリグサ
版画のような黒で描かれている。デザイン的。

作品リスト#147 初夏の海に赤翡翠
右下で踊るように描かれたハマユウが文字のように見える。

作品リスト#153 アダンの海辺
今回は残念ながら会期外でパネルでの展示となっていた。本物がやはり見たいと思わせる作品だった。画面下に敷き詰められた細かな砂浜の石の描写に恐ろしさを感じる。この浜の向こうには彼岸があると思わせた。アダンの実が想像よりも明るい色みでなぜかもっと暗いイメージを持っていた分、その明るさが救いのようなむしろ逆に不気味さに繋がっているのかもしれないと思った。

絵葉書は右から
アダンの海辺
クロトンとカヤツリグサ
奄美の海
仕方のないことだけれど特に気に入った作品の絵葉書が全てあったわけではないのは残念だった。
いつか、奄美大島にある一村記念美術館にも行ってみたい。

ちなみに佐川美術館には平山郁夫の常設展があり、今回、心を惹かれたのは京都の奈良との県境付近にある浄瑠璃寺を描いた作品だった。青い夜の世界に池越しの浄瑠璃寺本堂が描かれている。浄瑠璃寺はこれまで何度か訪れたことがある好きな寺院の一つだ。シルクロードをテーマに描いた作品も惹かれるが今回は『浄瑠璃寺』が特に心を動かされた。静かで美しくどこか優しかった。

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