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再び大樹のように


#私らしいはたらき方

私、60歳にして、人生初めて迷いに悩まされている。

休日の朝から、「今日は何をしたらいいかしら」という小さなことから、「生きがいとは」という大きなテーマまで、ブレまくっている。


こんなことは今までなかった。
なぜなら私の気質は“大樹”、真っ直ぐ上に伸びるのみだ。周りの空気を読まない。動けない、動かない、ブレないのが最大の武器だった。

“大樹“というのは占いの話。
陰陽五行をベースにした、生年月日の占いだ。
私は誕生日占いの“大樹”というのが、しっくりくるし気に入っている。
“大樹”らしく生きて来られた、と決して派手な人生ストーリーもないけど、後悔することもない。


私がイメージする“大樹ストーリー”は、

若い頃、幹が細いうちは、ひたすら空と太陽だけを見て、上を目指す。
周囲との協調性はないけど、向上心や芯の強い、目立たない子。

成人して、幹を太くする過程では、地面に根を張り、大地からひたすら養分を吸収し、枝葉を広げる時期を待つ。
見聞を広げるために軽快なフットワークで色々な場所で経験を積むタイプ、とは真逆で、一ヶ所に腰を据えて人間的に懐の深い、故郷のような大人を目指す。

そしていよいよ人生の秋を迎える頃には、大きく枝葉を広げ、癒しの木陰を作る。
孫もでき、ファミリーが大きくなれば、みんなが、“大樹”の下で本を読んだり、おにぎりを食べたり、ひとときの憩いを求めて立ち寄っては、また旅立って行く。

そんな人物でありたいのと、“大樹“のイメージがぴったりなのだ。


***

私、“大樹”が、大地から養分を吸収していた時期は、児童養護施設で悪戦苦闘していた時期に当たると思う。

様々な事情で親と一緒に暮らすことはできない子どもたちの親代わり、と言ってはあまりに頼りなかったけど、とにかく自分の全てをかけて頑張っていた。
流した涙は、嬉しいかったことも、辛かったことも、養分として間違いなく自分の中に浸透した。

この頃のことを振り返って書いた記事がある。


児童養護施設での教育は、学校で学習するため、社会的行動をするための教育とは少し違い、「親からの躾」という部分がある。もちろんそのために施設間で意見交流など勉強会があり、学ぶこともあったが、教科書はなく、臨機応変に対応が求められ、いわばスタッフ一人一人の経験と勘、とにかく人間同士の関わりなのだ。

実際、人が人の親になる時、教科書もマニュアルもないわけで、敢えて言うなら自分の育てられ方をベースにアレンジするところはあるだろうか。

私の両親は、戦中戦後という時代背景もあり、二人とも父親像がない。そのせいか、きちんと叱られた経験がなく、叱り方のお手本にはならなかった。


それまで目立たないように、人と喧嘩にならないように生きてきて、子ども達とぶつかり合いながら、人の痛みや温かさを学んだのは、逆に私の方だったかもしれない。


***

児童養護施設の経験を経て、現在学習塾を経営して25年になる。

今は卒塾生が自分の子どもさんを入塾させてくださるケースもあり、時の流れを感じる。


学習塾を始めた頃が、“大樹“が枝葉を広げようとしていた頃だろうか。
枝葉を広げる、癒しの木陰を作るためにはどうしたらいいのか、迷うことも立ち止まることもなく、そこまで自分を信じて懸命に生きてきて、身体に染み込んだ養分がそのまま、枝葉をグングン伸ばしていったように思う。

ちなみに、主人は“大地”の人。主人に支えられ、“大樹”の私はのびのびと根を伸ばした。そして初めての子、長男は“灯火“の人。“大樹”である私は、自分を燃やして“灯火”を活かす、愛を与えることを学んだ。そして次に授かった娘は“慈雨“の人。まさに私に恵みの雨をもたらしてくれた人。

家族が、私の真っ直ぐで、真っ直ぐすぎる生き方を、支持し後押ししてくれた。


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そして今、人生の秋になり、枝葉はしっかりと伸びているはずなのに、迷いを感じている。
“大樹“が生えている場所ここでいいのかなと迷っている。人の多い場所に自分から行くべきではないかと。まず“大樹”で大丈夫かな?とさえ感じてしまった。

時代は、震災を経験し、毎年のように豪雨被害を受け、今まさにコロナ禍にある。繊細な時代だ。揺るがないことに価値はあるのか。。。。


結局
私らしい働き方。それはやっぱり揺るがないこと。私には、それしかない。

家族の愛が、養護施設での経験が、学習塾でのスキルが、“大樹“の養分になっているのだから。

この記事を何度も何度も書き直しながら、私は立つべき場所にずっと立っている、これからも立ち続けるのが、私の役割だと確信を持った。

きっと、いつの間にか誰かが来て、いつの間にか行ってしまっても、私は何も変わらずここに真っ直ぐに立っている。





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