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精神疾患の研究と世界で初めて投薬無しで乗り越えたエピソード6 精神病棟で出会った愉快な仲間たち2

1.知的障害で精神疾患の女性の笑顔
2.認知症で入院していた元畳職人との交流
3.焼き鳥屋のおじさんが水虫で、大騒ぎ
4.引きこもり男子Aと自殺未遂女子Bの恋愛
5. 身寄りがなく20年以上
 入院しているお爺さんとの将棋

1.私が入院していた病棟に、軽度知的障害の50歳過ぎの女性がいました。何の精神疾患なのかは分かりませんでしたが、彼女は塗り絵が好きで私も時間が合えば一緒にラウンジで塗り絵に付き合いました。
彼女は、幼い頃に父親から虐待を受けていて、20歳前後から障害者施設で暮らしてきたとの事でした。
話の語尾に 〜ですの
とつけるのが口癖で、
その感じが何となく優雅に聞こえて好きでした。

ある日、いつものように一緒に塗り絵をした後、私は彼女の似顔絵を描いて渡しました。
私が入院していた時期が2月で、もうすぐ桜
が咲く季節なので満開の桜の木の絵もプレゼントしました。

彼女はとても喜んでくれて、ニッコリ笑った顔を今でも覚えています。

2.認知症の元畳職人の親方がいました。

その時、認知症患者も精神病棟に入院させられていることを初めて知りました。

その親方は、車椅子に座っていました。
時々暴れて、看護師さんを手で叩くので、彼には近づかないよう看護師さんから注意を受けていました。

私は、看護師さんの注意を無視して彼に話しかけました。
「大将、元気ですか?」
そして、私は彼の手を取り握手をしました。
すると、暴れん坊だった親方の態度が急に大人しくなりました。

それから親方が暴れるたびに、私が声を掛けると怯えた様な顔をして大人しくなりました。

私はその反応が何とも不思議で、看護師さんに訊ねると、
その親方が、私が怖いと言っていたそうです。
認知症の方が怖がるほど、私は何か周りの人に恐怖心を与えてきたんだなとその時に気が付きました。

3.焼き鳥屋で店主をしているおじさんが入院していました。家族に暴力を振るったため、精神疾患の疑いで強制入院させられたとの事でした。

ラウンジのテレビの前のソファーには、いつも私と引きこもり男子、自殺未遂女子、うつ病元経営者、そしてその暴力おじさんが集まり色々な話をしていました。

皆んな暴力おじさんの事を"おじー"という愛称で呼んで慕っていました。

見た目は小柄で大人しそうなおじさんで、とても暴力沙汰で連れてこられたとは思えませんでしたが、真相は分かりませんでした。

ある日、おじーが足の爪を切っていたのですが、自殺未遂女子が彼の足の皮が剥けている事に気がつきました。
おじーが言いました。

「俺、水虫なんだよね」

自殺未遂女子が、ギャーギャー言って大騒ぎになり、私はそれを見て大笑いしました。周りの仲間たちも笑い転げて、本当に面白い出来事でした。

4.引きこもり男子は、中学に入学してから引きこもりになり、心配した母親に病院に入院させられていました。
髪を肩まで伸ばしてメガネをかけていたので私は、彼のことをオタクメガネと心の中で呼んでいました。

自殺未遂女子も中学生で、首に深い傷がありました。両親が離婚し、一緒に暮らしていた母親の新しい交際相手との関係が悪く、自暴自棄になってしまったとの事でした。
彼女の名前は忘れてしまいましたが、小麦色の肌で笑顔が可愛く、とても私を慕ってくれていました。
私が立ち上がって腕に彼女がぶら下がって遊んだりしていましたが、看護師さんから注意を受けました。

オタクメガネと彼女と私はいつも一緒におしゃべりをして過ごしていました。
彼は家で引きこもっていた時は、ゲームばかりしていたようで女の子とはあまり話したことが無いようでした。
毎日3人で話しているうちにその2人は仲良くなり打ち解けていきました。

ある時彼が、外泊許可を取り実家に3日ほどして帰ってきた時の事です。

彼の長かった髪が短くカットされていて、見違えるほど爽やかになっていました。

私はその時、彼はオタクメガネではなく爽やかメガネになってしまったと思いました。

自殺未遂女子も、彼の変貌に驚き内心嬉しそうな顔をしていました。

そうして、数日過ぎたある日、いつものようにソファーでテレビを観ている時に、爽やかメガネが私に言いました。

「俺、彼女に告白して付き合うことになりました」

少し驚きましたが、幸せそうな2人を見て
嬉しくなりました。また、精神病棟内って恋愛OKなんだなぁとちょっとだけ羨ましくなったりもしました。

2人が退院した後どうなったのか分かりませんが、若くして辛い経験をした2人。そして精神病院に入院させられた彼らが、幸せそうな様子を観て嬉しくて、ほっこりとした思い出です。

5.私がいた精神病棟には、20年以上入院している70過ぎのお爺さんがいました。
退院先の引き受け先が無く、ずっと生活保護費で入院している様でした。

私は、精神疾患で入院した患者が何故何十年も病院から出られないのか本当に疑問に思いました。
精神疾患を患うことと、癌を患うことや糖尿病を患うことと、病気であることには何ら違いはないと思います。

癌や糖尿病になったから、誰か強制入院させられたなんて話しは無いですし、治療をして症状が良くなれば退院できるはずです。

しかしながら、精神疾患を患った患者の中には、家族が迎えいれを拒否して、患者の生活保護を申請し、そのお金で何十年も入院させられてしまっている人々が大勢いるのが現状です。

私は、そのお爺さんをとても気の毒に思いましたが、寡黙な人で毎朝、朝食前に新聞を読み、昼間は読書をしていました。

私が話しかけると、将棋が好きだと言うので、一緒に対局しました。

お爺さんは将棋がとても強くて、私は何度も負けました。結局、私が退院するまで、一度も勝つことは出来ませんでした。

ある日私は、お爺さんに聞きました。
「20年以上もこんな病院に入院させられて辛くないですか?」

彼は答えました。
「もう慣れているし、考え事がゆっくりできるし辛くはない」

私にとっては以外な答えでしたが、私は納得できませんでした。

続きは
エピソード7 薬を飲んで無いのが医者にバレてご立腹




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