見出し画像

Fudangiのコンセプト(3)

丹藤さんの紹介

    2021年8月に民医連(全日本民主医療連合会)が編集する月刊誌『いつでも元気』(No.357)に、丹藤量子さん(みやぎ東部健康福祉友の会事務局長)が「好きになる入院服 Fudangi」を投稿して下さいました。
    お許しを得て丹藤さんのご投稿を以下に紹介させて頂きます

好きになる入院服 Fudangi
 点滴中の病衣の着替えがたいへんだった―。そんな経験をお持ちの方も少なくないのではないでしょうか。私も以前、重篤だった父の看護で経験しました。入院生活を少しでも快適なものに、そんな思いが形になりました。
 宮城県仙台市の大村泉さんと陽子さん夫妻が、入院服  「Fudangi」の販売普及を目指しています。点滴中でも着替えが楽で入院生活の負担を軽減するよう工夫され、患者さんはもちろん、衣服の着脱が困難な方、障害を抱えた方の日常着としても使えます。
 「Fudangi を考案したのは息子なんです」と大村泉さん。サッカー好きで元気な青年だった次男の泰さん。神戸大学大学院を卒業後、社会人としての一歩を踏み出した矢先に急性リンパ性白血病を発症。骨髄移植を受け治療を続けますが、8年3ヵ月に及ぶ壮絶な闘病の末、昨年7月19日に34歳で永眠されました。
 泰さんは入退院が続くなか、「もっと明るい気分になれて、ずっと着ていたいと思える入院服を」との思いから、これまでにないデザインと機能の入院服を考案。自ら試着し改善を重ねました。着替えを手伝う看護師の評判もよく、完成を待ち望む声に励まされました。
 泰さんが最後の力を振り絞って訴えたのは、自ら製作した入院服の着替えでした。「亡くなる直前、両手で自分の肩を触り汗で濡れた服を着替えたいと言っているようでした」と大村泉さんと陽子さん。ボタンを外して広げると一枚の布のようになる入院服。あっという間に着替えが済み、両親は「これを頼むよ」という泰さんの最期のメッセージに思えたと言います。
 泰さんの願いをかなえようと仲間が支援に乗り出しました。友人によるFudangiのネーミング。製品化、特許出願、販売普及などご両親に協力を申し出る友人たち。民医連の坂総合クリニック(宮城県多賀城市)の今田隆一医師もその一人。「泰は今田先生に会えるのを心待ちにしていました。頼れる友達でした」と両親は語ります。
 入院生活で実際に着用した遠藤秋雄さん(友の会員)は「患者さんの立場で考えられた服。生地の肌触りがいい。服を脱がず、ベッドに横になりながら治療や点滴を受けられる。看護師にも好評でした」と語ります。
 入院生活中でも「心も身体も少しでも普段どおりの日常を」という願いが込められたFudangi。必要とするひとりでも多くの方に届きますように。

全日本民主医療連合会『いつでも元気』(No.357)2021年8月
全日本民主医療連合会『いつでも元気』(No.357)

 丹藤さんのご寄稿には、『いつでも元気』の多くの方から感想が寄せられました。お許しを得てこの感想を次に紹介します。

丹藤さんのFudangi 紹介に対する『いつでも元気』の読者の皆さまの感想
1. 私も7週間の入院経験があり、病着ははだけてしまったり、着脱が大変だったりした思いがあります。
2. 私も3月から4月に2週間あまり入院しました。病衣を借りましたが「皆同じ」にやや抵抗が…もっと多様性があってもいいのではと思いました。
3. 好きになる入院服、あったのですね。何時も点滴の時と着がえる時に困っていましたので、とてもすてきだなあと思います。もう入院したくないですが、もしも入院する時は是非使ってみたいです。
4. 7/15 全身麻酔で手術をした時、術着のままで17時間寝たままの状態は、腰のヒモが胸までずり上がってきて苦しいのでほどきました。すると、なおさら胸がはだけて腹部もあらわとなり、あついのに布団をかけてそれらを隠そうとしました。足から点滴を入れているのでパジャマの下ははいていません。ひどい形です。
 帰宅してこの記事を読み、早くこのFudangi が全国に普及されるといいなーと思ったのです。
 ずっと着ていたい入院服が明るい気分になること請け合いです。
5. 入院着の見直しという視点はこれまで持てたことがなく、とても素敵だと思いました。患者さんのQOLをそういう多様な視点で考えられる医療人になりたいです。
6. 長い闘病生活の中で少しでも明るくなれる入院服…心温まる記事でした。大村さんのお写真に胸が痛みました。人生70年、病院で40年以上働き続け、これといった大病もせず「たまには病気になって入院してみたい」等とグチをこぼしておりました。患者さんの苦しみに寄り添い等と思いつつも、本当に苦しんでいる方々の思い、力になれたかと反省しきりです。今からでも地域に目を向け、共同組織の仲間と頑張ります。
7.Fudangi」素敵です。決まり切ったパジャマは味気なく、入院したらオシャレなんてとんでもない!まるで申し合わせたように!まるで囚人服のようなパジャマでいることを強いられます。
 着替え、点滴、レントゲンが楽そう…ただでさえ憂うつな病院生活もちょっと嬉しい!
8. 着脱が容易なうえ見た目も普段着のよう。入院生活中でも「心も身体も少しでも普段通りの日常を」という願いが込められているそう。私も目の病気で入院した際、身体は元気なのに一日中パジャマ姿でいることに違和感を覚えていたので嬉しいです。
9. 入院中、治療の毎に衣服が不便なことが多い。ご自分の体験をもとに着替えしやすい、治療しやすい服を考えられた方は、闘病の末すでに永眠されたとか。願いをひき継いで販売普及されているというやさしく発展的な話に感動しました。
10. 「好きになる入院服」。入院療養している方が安楽かつ気持ちが明るくなれるのではと思いました。心の元気を考えると、改めて「・食・住」が大事なことを感じました。
11.私も入院した経験があります。二人目の子を妊娠した時に子宮癌が見つかり、闘病しました。
 手術後の体に24時間キープされた点滴。毎日の抗がん剤に疲れた血管。着替えも本当にたいへんでした。
 泰さんのFudangiがあったら、着替えの苦痛から解放されて、普段着のような着心地の良いTシャツを着て、明るめの好きなカラーのT シャツで心も軽くなっていたでしょうね。素敵な心のこもった入院服を作ってくれて有り難うございます。
12.私自身、以前、入院や通院をしているときに、点滴中の病衣の着替えがたいへんだと思ったことが何回もあります。私の場合は、手術後、、毎日着替えをするのに悪戦苦闘(?)でした。入院患者だった大村さんが入退院が続くなか、「もっと明るい気分になれて、ずっと着ていたいと思える入院服を」と考えたのが理解できます。自分だけではなく他の入院患者さんにもそう思って貰えるような入院服!!とても素敵だと思います。

 丹藤さんのご紹介と、読者の皆さまのご感想を拝見すると、改めて泰が長い闘病生活で、どこの病院でも一般的な、前開きひも閉じの病衣になじむことができなかった彼の思いは、同じ経験をした方に共通していることを痛感しました。なじめなかったのは、この種の病衣には、おしゃれ感がないこと、前がはだけてストレスがたまること、点滴をしていると着替えがたいへん、等々の問題があるからだと思います。

 4番目の感想を寄せられた方と、最近、同じ経験をされた方が近くにいます。心房細動のカテーテルアブレーションの手術をしたのでしたが、麻酔が良く効き、寝入っている間にあられもない格好になっていた、そこに診察のために医師と看護師さんが数名で現れ、急に起こされ布団を外され何とも恥ずかしい思いをすることになった、と。

 Fudangi は患者提案型の入院服です。発案者の泰が病床で試作を繰り返し、亡くなる2日前、話すことができた2020年7月17日の朝まで袖丈の長さに関する指示を私たちにしていたのでした。
 最後の指示は逝去する直前の着替えでした。

 泰の考案したFudangi が、少しでも入院患者の皆さんや、肩や腕に障害があり、着替えが困難な皆さまのQOL向上に役立つことができればと思います。

 Fudangi の試作品ができたとき、泰は点滴の一時停止が不要なことを看護師さんに話しておりました。ダブルチェックが不要になるから看護師さんが2人揃わなくとも着替えができる、看護師さんの負担軽減にもなるんだ、というのです。

 Fudangi に託した泰の思いが多くの方に届くことを願っています。

大村泉・陽子

(株)YAS

HP: https://fudangi.jp
連絡先:hello@fudangi.jp
ご注文はHPからお願いします


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?