かかりつけ薬剤師契約を増やす方法
かかりつけ薬剤師として顧客獲得したい方向けの記事です。
かかりつけ薬剤師について、かかりつけ薬剤師の要件については別記事を参照ください。
はじめに
2024年度の調剤報酬改定において、「かかりつけ薬剤師のいる、かかりつけ薬局」を評価した改定となりました。
答申を受けて、かかりつけ薬剤師指導料は以下のように変更となりました。
服薬情報の一元的・継続的把握の推進の観点から、同一薬局の利用をさらに進めるため、かかりつけ薬剤師指導料等を算定する患者に対して、かかりつけ薬剤師以外がやむを得ず対応する場合に係る要件について見直す。
かかりつけ薬剤師指導料等を算定する患者に対して、かかりつけ薬剤師以外がやむを得ず対応する場合における要件について、1名までの保険薬剤師に限るとする規定を見直し、当該保険薬局における常勤の保険薬剤師(かかりつけ薬剤師指導料等の施設基準を満たす薬剤師)であれば複数人でも患者にあらかじめ同意を得ることで特例を算定可能とする。
(中医協答申より抜粋)
点数は以下の通り。
・かかりつけ薬剤師指導料76点
・服薬管理指導料(かかりつけ薬剤師と連携する薬剤師の特例)59点
・3ヶ月以内に再度処方箋を持参しお薬手帳を提示した患者45点
・3ヶ月超 59点
点数に変更はありません。
経営の面で考えると、かかりつけ薬剤師指導料は通常よりも31点高く、連携する薬剤師であっても14点アップはうれしいですね。
患者のための薬局ビジョンにおいて、2025年よりすべての薬局をかかりつけにすると示されているため、算定しない薬局の未来は明るくないことがうかがえます。
かかりつけ薬剤師の対象者は?
薬や健康に関する不安(誤薬、飲み忘れ、複数診療科に受診し薬を飲んでいる等)がある人だけでなく、現状大きな問題がなくてもかかりつけ薬剤師のメリットを説明して興味を持たれた方も対象になります。
要するに全国民が対象です。
かかりつけを獲得する事前準備
① かかりつけ薬剤師の同意書
薬局管理:1枚目(かかりつけ薬剤師指導料(かかりつけ薬剤師包括管理料)について)
患者管理:2枚目(かかりつけ薬剤師の情報)
3枚目(かかりつけ薬剤師指導料(かかりつけ薬剤師包括管理料)について<説明用資料>)
薬剤師毎に作成しておきます。
特例の59点を算定したい場合は患者さんの同意が必要なので、確実に説明して同意をいただきます。
② かかりつけ薬剤師・薬局の制度への理解
薬局にいる全スタッフが説明できるように準備します。質問を受けてスムーズに返答できないようでは獲得できません。
説明の仕方によっては不信がられる可能性がありますので、薬局全スタッフでシミュレーションしておきます。
患者さんへのアピール方法
2つの方法で周知・契約を行います。
① 選別
無作為にかかりつけ薬剤師について説明(口頭やポスター)をします。
声かけは全スタッフが行い、反応がよければ薬剤師につなぎます。
特徴は以下の通りです。
・かかりつけ薬剤師について幅広く知ってもらえる
・来店者全員にもれなく説明することができる
・患者さん自身が必要と感じたら声をかけてもらえる
・薬剤師以外のスタッフが待合室で説明すると待ち時間対策にもなる
・説明した回数の割に契約に結びつかない
・ポスターだけでは契約できない
② 薬学的知見に基づき提案
薬剤師視点で契約を行う。来店前からの歩き方や表情、お薬手帳や顔認証システム等で得られた情報、患者さんとの会話で得られた情報から問題解決を行う。
特徴は以下の通りです。
・自然と外来服薬支援料1・2や服用薬剤調整支援料1・2、服薬情報等提供料、在宅獲得ができるようになる
・問題解決をしたそのときが最も契約できるタイミングとなる
・患者さんの金銭負担による罪悪感がない
・より注意深く患者さんを見ることができるようになる
かかりつけ薬剤師を増やすための条件
・信頼されること
自己負担のない患者さんにお願いして増やす方もいますが、本来あるべき姿ではありません。地域支援体制加算の実績だけ満たしたい薬局が営利目的に行っているといわざるをえません。
あくまで薬剤師として信頼されることが「かかりつけ薬剤師」の第一歩です。
信頼していただくための方法として「観察」「傾聴」「服薬フォローアップ」が重要です。
今回は記事にしませんが、自然と外来服薬支援料1・2、服用薬剤調整支援料1・2及び服薬情報等提供料の算定、在宅獲得につながります。
・断られることに心が折れないこと
「かかりつけ薬剤師・薬局」の契約はサービスを売ることです。
相手は必要と感じなければ買いません。
「選別」は成約率が高くないため、制度のご紹介を行うという気持ちで行いましょう。
大事なことは「やめないこと」です。
・患者さんに興味を持つこと
患者さんのニーズが「安心・安全」なのか「スピード」なのか「24時間相談対応」なのか、相手のことを知りましょう。
「安心」を買いたいのに「24時間相談できます」を全面にだして説明しても必要性を感じませんね。
モノではなくヒトを診て気づきを増やしましょう。
知ることで説明の仕方が改善され、成約率は大幅に変わります。
・金額が上がることに負い目を持たない
処方箋受付時にお薬手帳を持ってきたときの点数と比較して60-100円の負担金が増加しますが、必要を感じる方は「安心・安全」のため、かかりつけ薬剤師に会うために処方箋をもってきます。サービスの料金が高いか安いかを判断するのは患者さんです。
・24時間相談対応の薬剤師負担の増加はほぼない
私の実感として、かかりつけになっても緊急電話が来る頻度は全く変わりません。
電話をかけてくる方は、かかりつけでなくてもかけてきます。
・毎回説明しない
同じ人に毎回説明をすると薬局自体を敬遠される可能性があります。
いつ説明を行ったか薬歴やレセコンに記載しておきましょう。手応え次第で時期をみて2回目の声かけをしましょう。
実績のある事例
最近かかりつけ契約を結んだ方の訴えの一部をいくつか紹介します。
① 糖尿病、高LDL血症、高TG血症のため生活習慣の改善が必要。食事や運動のアドバイスをもらいたい。
② 不眠・食欲不振・精神的にしんどい。いつも話を聞いてくれるので楽になる。
③ 複数の病院で薬をもらっていて飲み合わせに不安がある(代理人)。認知機能の低下で誤薬や飲み忘れが心配(本人)。
④ 24時間対応と聞いて安心できる。不安で相談できる人がほしい。
⑤ 残薬が多く、誤薬の恐れがあるため処方薬の一元管理が必要。
⑥ 本人が服薬管理をしており、飲み忘れや誤薬があることを本人・ご家族ともに不安がある。
⑦ 服薬後の体調不良への不安にていつでも相談できる人を探している。
⑧ 病気のことや検査値のことも含めて相談したい。
誤薬や飲み忘れの不安が多いものの、副作用の心配から一元管理の希望、運動・食事療法のアドバイスがほしい方、傾聴してもらえる薬剤師を求める方、様々です。
この中で①③⑤⑥は薬剤師目線で提案した事例、②④⑦⑧は、投薬時にかかりつけ薬剤師の紹介をした事例です。
まとめ
・かかりつけ薬剤師契約者は全国民が対象
・信頼を得ることが重要
・声かけはタイミング
・負担だけを恐れない
・契約するための作業は全スタッフで取り組む
・かかりつけ薬剤師契約を獲得するための作業がその他の加算につながる
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