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西加奈子『うつくしい人』 繊細な方へおすすめしたい理由

西加奈子『うつくしい人』は、「周りからの評価を気にして殻を何重にも作り込んできた」「壊れる限界まできてしまった」繊細な方に、お勧めする作品です。

この作品には、アイデンティティを見失い一人旅に出た主人公・百合が、二人の青年との出会いから自分を取り戻していく様子が描かれています。
この心情描写がとっても生々しいことが、この作品の何よりの特徴です。

上記のようだと自覚する方にお勧めする、この作品の魅力を三つご紹介します。


〈1〉 繊細な感情表現

魅力の一つ目は、繊細な方なら共感できる場面があることです。
物語の前半は、主人公が鬱で苦しむ場面が続きます。会社でなぜか涙が止まらない場面、旅行先で楽しまなきゃとプレッシャーを感じる場面など。

この作品は西加奈子さんが鬱の経験を基に作られただけあり、その心情描写はとても具体的で現実的です。(リアル過ぎるがために、今まさに落ち込んでいる方は読むのが少し辛いかもしれません。ですので、少し気持ちが落ち着いてから是非読まれてください。)

誰しも落ち込んでいるとき、身に振りかかった出来事だけでなく「感じ方」までも否定することがあるかと思います。そんなとき、この作品は「同じ感じ方をして、同じ悩みを抱える人がいる」とに気付かせてくれ、心を落ち着かせてくるはずです。

また、この物語は落ち込んだ経験を振り返る際にも役立つかと思います。落ち込んでいる真っ最中、頭は働かず「もう感情すらもよく分からない~」となりますよね(私だけかしら笑)。そのときの感覚をこの本が代わりに言語化してくれ、後々自己理解の手助けになるかと思います。


〈2〉 自分を取り戻す様子のリアルさ

魅力の二つ目は、主人公と自分を重ねることで、落ち込む状態から立ち上がるイメージを持てることです。

物語の後半、主人公は二人の登場人物との関わりから、凝り固まった考え・価値観をほぐし自分を取り戻していきます。

この描写もとてもリアルです!読者の方は主人公と自分を重ね、「自分もきっと大丈夫」と心温まるのではないでしょうか。


〈3〉 勇気をもらえる素敵な後書き

最後に、この作品の魅力は後書きも味わい深いことだとお伝えします。この作品を最後まで読むと、グサッっと心に刺さる言葉たちに沢山出会えます。
筆者が好きな言葉をここに少しピックアップしますね。

「明るい未来を想像できなくても、今を必死に生きなくても、思い出があればぐんぐん進むことはできるのです、私たちは。」

「自分で不幸になれる人は、自分で幸せにもなれる人。あなたは変わらないし、変わらなくてもよい。」



こころに寄り添う、優しい言葉を

きっと誰しも人生には波があります。心が弱っているのに、どうしてもそれに向き合うのを避けられずに苦しむときもあります。

そんなとき、『うつくしい人』は本当におすすめ!
どんなあなたもそのまま受け止めてくれる、お守りのような一冊になると思いますよ💐


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