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9月3日~9月9日 はずれなし+学校休み

少年は祈っていた。

20××年、「生徒の祝日」制度が開始される。この政策は、選挙権が12歳までに引き下げられたことによる一種のバラマキの一つである。

今までは票を持つ高齢者におもねる政策ばかりが横行していた。しかし、このままではさらに少子超高齢化が進んでしまうと危惧した政府は、その対策として、選挙権を12歳、被選挙権も16歳からとし、22歳以下の候補者の供託金も20万円に引き下げた。その選挙制度のもと、初めて16歳で衆議院議員になったA氏が掲げていた政策が「生徒の祝日」制度だ。この制度は今までになく斬新であったので、10代の若者に圧倒的な支持を得た。

毎年、ルーレットにより選ばれた一人の生徒の誕生日を休日にするというのがこの制度の内容である。小・中・高で適用される。これが掲げられた建前上の理由は、「命を軽く見がちな若者が、”一人一人生まれた喜びを噛みしめ、命の大切さを実感する”機会をつくる」とされていたが、ただの人気取り政策であるのは明らかであった。

そして、この制度は学校内で多くのドラマを生み出すこととなる。

小学校最後の年、生徒の祝日はバレンタインデーとかぶることとなった。太郎は事実を受け止められず、茫然としていた。中学校は離れ離れになってしまう紗良ちゃん。小学校を卒業をすればもう会うチャンスはないに等しい。だから、今年のバレンタインデーに逆告白をしようと太郎は企んでいた。それゆえ、このまさかの決定に太郎は意気消沈した。しかし、ここでめげないのが太郎である。

「それなら、今日告白してやる!」

放課後、紗良ちゃんを校舎裏に呼び出し、今日の給食のデザートのプリンを手土産に思い切って告白した。

「ずっとオレと日直でいてくれないか?」
「え、嫌。だるい。」

彼のまわりくどい告白は、当然彼女には伝わらず撃沈する。幸せの結末とはいかなかった。

彼は、ここでこの法案をなくすため政治家になることを決意する。これが後の「高校生総理大臣太郎」の初めの一歩となった。

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