【管理監督者編⑦】

・損害賠償の考え方

 損害賠償には、大原則があります。

 クレーム対応において、損害賠償や補償といったことは、常についてきます。

 損害賠償においては、誰も「得」をしない。

原状回復以上のプラスαを与えない。これが大原則です。
 
「約束(契約)を守れていない部分についてのみ対応する」
→お客様によって対応を変えない→企業の社会的責任を全うする

 この「約束(契約)を守れていない部分についてのみ対応する」で、過去の私の経験をお話しします。

 当時、私は運送会社の営業部管理者でした。スタッフがお預かりした荷物は、特殊な機械装置で、なんとかひとりで運べるくらいの大きさでした。荷物保険に加入していただいており、保険金額は、上限MAXの500万円です。
 結果この機械装置は、輸送途上で破損し、全損しました。賠償責任は、こちらにあります。
 
 お客様からの請求金額は、740万円でした。当該機械装置は7年前に購入し、当時の価格が500万円。
 なので、保険金額を500万円としたとの事です。
 アメリカでしか生産されておらず、また、当該機種は生産を終了しており、同型の後継機種を新品で購入するしかなく、この金額だ、との事です。

 皆さんなら、どう対応されますか。

 740万円補償するとなると、保険が全額出たとしても、会社が240万円支払わなければなりません。しかしながら「7年落ちの機械装置を、新型機種の新品にしろ」は、ないのでは?

 その通りです。
 
 でも、乗用車などと違い、特殊な機械装置です。どうやって賠償金額を査定しますか。「なんでも鑑定団」に応募する?

 『一般社団法人 日本海事検定協会』というところがあるのです。

 ここに依頼して担当者に同行していただき、当該機械装置を査定してもらいました。

 結果→査定金額120万円 
 
 機械は新品から時間の経過とともに、減価償却(価値が下がっていく)がかかります。この査定金額は、保険会社も文句をいいませんでした。会社負担はゼロ円で、ほっとしたのを今だに思い出します。保険に加入していたので、保険会社に査定依頼することも可能ですが・・・

※通常保険会社が損害額を査定し、支払いますが、被害者側がその金額に納得しない場合、不足額の支払いを、当事者に求めてくることがあります。
 なので、それを防ぐために、まず海事検定さんに査定してもらい、被害者側に正当な金額の証明をしたわけです。
 
 なぜ、「海事」というのか。その時、来て頂いた担当者が、教えてくれました。
  
「昔は、物資の輸送を船舶が担うことが多かった。船が沈むと、積荷がパァになる。そのため、積荷の価値を予め調べておく必要があった。」とのことです。

 ちなみに、美術品や工芸品などは、日本海事検定協会さんでは査定できないため、『株式会社美研鑑定』さんに相談できます。

もちろん、どちら様も査定依頼は有料です。

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