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2023年3月の記事一覧

御本拝読「マダムが教えてくれたこと」ユニカ

「大人の女性」

 マダムとは、フランス語で「既婚、あるいは若くない女性」。マドモアゼル(おじょうさん)、ムッシュ(男性、紳士)と同じ種類の単語である。英語のミズにも相当するらしく、既婚か未婚が分からない大人の女性全般に使える言葉らしい。
 「大人の女性」とは、どういう人だろう。成人している、結婚している、就職している……年齢や肩書きをさておいて、おそらくそういう条件ではないのだと思う。子持ちの兼

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御本拝読「私の小さなたからもの」石井好子

素敵なギャップ

 過日、偶然テレビで1995年の石井好子さんのショーを観た。もちろんご著書はほぼ全て読んだしCDも持っているけど、恥ずかしながらちゃんとしたショーの石井さんは初めて。もう、はっちゃめちゃにかっこよかった。
 なんというか、「芸能の人」という言葉で圧倒される。その歌唱力、表現力、存在感。石井さんの経歴を見るに、本当に良きご家庭で然るべき音楽教育を受け、戦争や別れや修行の困難の多い日

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御本拝読「とにもかくにもごはん」小野寺史宜

食べるは生きる

 たくさんの美味しい料理の描写やレシピとハートフルストーリー……ではない。確かに出てくるごはんは美味しそうだが、本書に出てくるメニューは主に一つ。ある日の食堂の一晩(正確には午後五時から八時の三時間の間)の群像劇である。
 とある住宅街にある、「クロード子ども食堂」。月に二回、高校生までの子どもは無料で、大人は三百円で、定食が食べられる食堂。交通事故で夫を亡くして高校生の息子と二

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御本拝読「小さな星の本」監修:渡部潤一

小さなシリーズ

 小さな恋のうた……ではなくて、小さな本のシリーズ。モンパチも大好きだけども。こちらは、リベラル社の小さな本シリーズの中の一冊です。昨今、こういう、文庫本より一回り大きくて分厚いちょっとしたお菓子箱みたいな本のシリーズ、他からもちょいちょい出てますね。好きです。
 春休み&人事異動でまた繁忙期に入る図書館ですが(また休館日以外朝から晩まで休みのないシーズンに突入……)、こういう時

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御本拝読「パリ流 おしゃれアレンジ!」米澤よう子

軽やかにパリ流

 もともと、長沢節先生や森本美由紀さんが好きです。前回の御本拝読では安野モヨコさんを紹介してますが、ああいう系統のテイストや作品や人物に惹かれるのです。セツ・モードセミナー、行ってみたかったなあ。米澤よう子さんには、それをいい意味でミーハー化した軽やかさがあります。
 独特なこだわりや感性は、芸術には必要でも一般人や貧乏人にはちょっと真似できない。でも、それを良い、美しい、好きだ

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御本拝読「オチビサン」安野モヨコ

モヨコさんのオフ

 「ハッピー・マニア」「働きマン」「シュガシュガルーン」……安野モヨコ先生(以下、モヨコさん)の作品は、いつも明るく爆発的なエネルギーに満ちている。一方、「脂肪という名の服を着て」「さくらん」など、強烈な美や女の性を鮮やかに抉るような作品もたくさんある。
 美人画報や監督不行き届きも好きなのだが、この「オチビサン」以外はおよそ全て「オンの状態のモヨコさん」の手によるものと思われ

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御本拝読「面白南極料理人」西村淳

世界の果てでも

 自宅でも職場でも、お出かけ先でも、前の食事から時間が経てばお腹はすく。お腹がすいたら、ご飯を食べる。予算に制限はあれど、大抵は各々が食べたいものを食べたいときに食べている。
 例えば、学生寮や合宿所では、そこに制限がかかる。自室で3食食べるなら別として、共同の食堂や決められた時間の中でしか、食事ができない。それでも、気に入らなければ外に出る、買ってくる、等の逃げ道はいくつもある

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御本拝読「芸術家が愛したスイーツ」山本ゆりこ

スイーツの意味とは

 生命を維持するためには、みんな何かを食べないといけません。それは穀物だったり野菜だったりタンパク質だったりを主とする、「食事」です。
 一方、「スイーツ」は、なくてもいいもの。むしろ、糖分や油分を含む分、現代人には過剰なカロリー摂取に繋がります。なのに、「スイーツ」は人の心を惹きつけてやみません。
 頑張ったご褒美に、心の慰めに、オンからオフへの切り替えに。食事と一緒に、ま

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