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いけばな歳時記

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いけばなに使われる花材は、四季の移ろいを映す「季語」のような、連綿とつながる文化の結び目であり、いけばな作例を使った「歳時記」としてまとめることができます。
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いけばな歳時記 ミモザアカシア

いけばな歳時記 ミモザアカシア

 ミモザアカシアは、早春に黄色の丸い小花を枝いっぱいに咲かせるマメ科の花木です。ミモザと略されることも多いですが、ただミモザだとオジギソウを指しますので、省略しないほうがいいでしょう。
 乾燥に弱く、花展などでいけると花が咲かずバリバリに乾いて枯れてしまいます。葉や蕾もきれいですが、咲く花を見たいなら、硬い蕾・よく咲いた花は避け、咲きそうに緩んだ蕾を選びます。
 花材の管理は、葉を外す・水に入る枝

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いけばな歳時記 モクレン

いけばな歳時記 モクレン

 ふつうモクレンと言えばシモクレンを指し、ハクモクレンと区別したい時にはシモクレンと呼びます。中国原産の美しい花ですが、肉厚の花びらが傷んで変色しやすいのが欠点。
 モクレン・ハクモクレンに比べコブシの花は小さいめ。見分け方は以下。
 コブシ 花色 白・花びらの数6・開ききって咲く。
 ハクモクレン 花色 ほぼ白・花びらの数9。花びら厚く上向き蕾咲き。
 シモクレン 花色 赤紫・花びらの数6。花び

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いけばな歳時記 サクラ

いけばな歳時記 サクラ

 サクラは北半球に広く分布していますがふつうは実のサクランボを採るために栽培改良されてきました。花見目当ての日本のサクラは、花付きが多く華やかで、開花を思いきり使って沸き立つ春を演出するのに向いています。
 ウメ・モモとの区別は花柄の長いこと・花びらの形がハート形などで見分けます。春を告げる花木は人の心を騒がせる力を持っています。年を重ね命について考えることが多くなればなおさらです。
 サクラの枝

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いけばな歳時記 ユキヤナギ

いけばな歳時記 ユキヤナギ

 ユキヤナギはコデマリと同じシモツケの仲間で、春先小さな白い花を一面に咲かせます。枝に粘りが無く折れやすいですが、枝振りの線も動きがありそのまま使って美しい姿が引き出せます。
 上作はユキヤナギの一種いけで、枝の動きを見ながら相互に絡ませて形を作っています。

 上左は、ユキヤナギ・デルフィニウム・スターチスを組んだ私流の立花→広瀬テキスト93p
 上右は、左から、ユキヤナギ・チューリップ・ツバキ

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いけばな歳時記 サンシュユ

いけばな歳時記 サンシュユ

 サンシュユはミズキの仲間で早春に黄色い花を咲かせます。ねばりがあり、サクラ族のようなミシミシ言わせる矯めが利きますので、春先の花木の一つとして枝を曲げる練習に使われてきました。思いきり矯めを利かせるにはもってこいの花材です。
 秋には赤い実がつき、そのエキスが薬用として中国から移入されました。サンシュユのユはそのエキスを指す名前なのでサンシュで止めたり、サンシューと引っ張ったり、人によってはサン

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いけばな歳時記 ジンチョウゲ

いけばな歳時記 ジンチョウゲ

中国原産の常緑樹。春香りの良いピンクがかった白い花が咲き、庭木としては人気がありますが、香りが強く茶花などでは嫌われることもあります。
 ミツマタと同じ仲間。枝の繊維が長く折れないので、矯めがよく利きます。上が重くて立てにくいせいか、花材としてはそれほど出回りません。
 上作は花葉でマスを作り、下のサンシュユ・ストックと対比しています。

 上左は二口花器の上下を使った株分けで、右に伸びるジンチョ

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いけばな歳時記 ツバキ

いけばな歳時記 ツバキ

 ツバキの花は春先かなり早くから咲き始め冬場~早春を飾ります。葉の厚みと艶が花を美しく見せ、葉をうまくカットすれば、枝の線の動きが加わり「一種いけ」も効果的です。枝の粘りはあまり無いので、細い枝は爪を使って「潰し矯め」、太い枝は金づちを使います。
 上記で使ったオトメツバキは、中輪八重咲きで花芯が包み隠された花形が、可憐な乙女を思わせるとしてつけられた名前です。

 上左のヤブツバキは日本の山野に

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