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割と若くして乳がんになった話② 〜針生検と乳がんの原因〜

針生検とは、腫瘍に太い針を刺して組織の一部を採取し、病理検査で腫瘍の詳細を調べることだ。
まずは悪性なのか、良性なのか。
そして悪性の場合、乳がんでいえばサブタイプといってどのような性質のがんなのか、それから悪性度や細胞の増殖力などを調べることができる。

私は初診の翌日に針生検を受けた。
なかなか太い針を患部に刺すため、局所麻酔をする。
もともと注射が苦手で、数年前に点滴をした際には過呼吸を起こしてしまったような私は、生検の針どころか麻酔の注射にも怯えていた。
S先生と看護師さんが怖がる私を励ましてくれたが、注射を刺されている時間は体感ではとても長く感じた。実際は数秒だったのだろうけど。

麻酔さえ効いてしまえば、針生検自体は何ともない。
ただ、刺す瞬間に「バチン!」という音がするため、それにビックリする人もいるそうだ。
この日は針生検の直前に激痛で有名なマンモグラフィーも受けていたので、私の胸は疲労困憊だった。

S先生に、乳がんである可能性はどのくらいかと聞いた。
先生は「乳がんの可能性が非常に高いです。針生検の結果、ごく稀に違ったということもなくはないけど、本当に稀です」と言った。

ちなみにこの日のマンモグラフィーの結果では所見がなかった。
手で触ってもハッキリ分かるほどの大きなしこりなのに、何も写らなかったのだ。
若かったり乳腺が多かったりする場合は腫瘍が写りにくいと聞くが、何であれ健康診断の乳がん検診の結果を100%鵜呑みにするのは危ないのだなと思った。
ただ、私は健康診断ではエコーしか受けてこなかったので、エコーなら安心なのかと言えばそうとも限らない。

私はこの時、半年前の乳がん検診で腫瘍を見落とされたのだと思っていた。
だってがんが1cmのサイズになるまで10年かかるってネットには書いてあるのに、半年でこんなに大きくなるはずがない。
触った感じでは、どう低く見積もっても2cmはある。
しかし後日、S先生からも、セカンドオピニオンの医師からも、この半年の間に一気に大きくなった悪性度の高いがんだと聞いた。
年に一度の乳がん検診なんて、私のように意味をなさないこともあるのだなぁ。

針生検の結果は2週間後とのことで、この2週間の心境たるや本当に地獄だった。
ただでさえ適応障害で抗うつ薬、抗不安薬、睡眠薬に頼っているようなメンタル状態である。
乳がんかもしれない、でも奇跡的に違うかもしれない。
自分はその「ごく稀」なタイプに入るかもしれない。
ネットで乳がんのしこりはゴツゴツと石のように硬いって書いてあるけど、私のはそんなに硬くない気がする。
がんの場合はしこりの境界が曖昧って書いてあるけど、境界はハッキリしてる気がする。
でもやっぱり硬い気がする。境界が曖昧な気がする。
しこりを指でつまみ、定規で測る。
2cm以下ならステージ I 、2cmを超えたらステージ II。
2cm以下な気がする。
いや、つまむ指をゆるめたら3cmくらいある気がする。
昨日より大きくなった気がする。
小さくなった気がする。

ネットで胸を全摘した人の傷口の写真を見て震える。
抗がん剤の副作用の体験談を読んで震える。
ホルモン療法の副作用を調べて震える。
生存率はウェブサイトによって数字が微妙に違う。
ステージ II の5年生存率は? 10年だと?
そもそも腫瘍が胸壁に固定されているとステージ III になるって書いてあるけど、「胸壁に固定」ってどういう状態?
転移していた場合、一気にステージ IV になるらしい。
ステージ IV の場合、生存率は……。

だけどやっぱり、もしかしたら違うのかもしれない。
「なんだ、がんじゃなかったのか! 良性だったんだ! 良かった!」
そういう結果が出ることを心のどこかで期待してしまって、直後に「そんなわけない」と思い直して打ち砕かれる。
針生検の結果を待つ2週間は、このように心がずっと忙しかった。

同時に、乳がんになる原因を調べた。
遺伝や喫煙習慣などといった原因を除き、これといった明確な原因は今の医学では分からないようだが、いくつか疑いのある要素はある。
ただしエビデンスがあるわけではないので、参考程度にとどめていただきたい。
まずは①食生活。次に②睡眠。そして③運動習慣、④ストレス。
私に関して言えば、4つとも最低・最悪だ。

①食生活
前回述べたように、朝から晩まで何も食べずに仕事をしている日も多かった。
栄養は専らサプリ、ザバス、ウィダーinゼリーから摂取。
眠気覚ましのためにキツめのブラックコーヒーを定期注入。
早朝5時から仕事場で走り回り、23時になってから「あ、今日は水すら一滴も口にしてない」と気づいたこともある。
慌ててカロリーを摂取すべく、コンビニに走ってドーナツとシュークリームを頬張る。
たまにファミレスなどで外食をしても、仕事の連絡がひっきりなしに来るので食べた気がしない。
毎日明け方まで働いているため、小腹が空くたびにその辺に置いてあるお菓子で空腹を埋める。

②睡眠
就寝時間はだいたい朝の4時か5時。
朝は9時か10時に起きることが多いが、その日の仕事の内容によっては午前3時とか4時に起きなきゃいけない日もある。そういう日はもう寝ない。
20時間の現場作業が3日連続という時もあったので、そういう時は移動中の車で寝るか、手が空いた瞬間に5分だけでも寝る。
基本的にぐっすり眠るということはなく、毎日が仮眠状態。
目の下にはくっきりとしたクマが常駐。
休みは月に1日あればいいほう。

③運動習慣
そんな働き方をしていたら、運動をする時間などあるはずもない。
せめてストレッチだけでもしようかと思うこともあったが、そんな時間があれば5分でも長く寝たい。
現場仕事の日は歩き回ることも多かったが、終日座りっぱなしでパソコン作業をしていることも多かった。
座る場所がない環境で働くことも度々あったため、床にあぐらをかいてパソコン作業をしていた。
身体がバキバキに固まって整体に駆け込むと「こんなにひどい人は見たことがない」と言われた。
とある有名な整体師に診てもらったのだが、後日その整体師は、同僚に「きこりさん(=私)の施術をしたあと、3日間ほど腕が使いものにならなくなった」と言っていたそうだ。

④ストレス
抗うつ剤のお世話になるほどパワハラのストレスに悩まされていた。
仕事自体はどれだけ過重労働だったとしても、楽しんでいたからあまりストレスに感じていなかった。
しかし上司が気まぐれな方針転換を繰り返すことや、尊厳が踏みにじられるようなひどいパワハラを定期的に受けたことで精神的にボロボロになっていた。

以上、乳がんの原因として考えられる4つの項目がどれだけ最低・最悪の状態だったかお分かりいただけただろう。

「これは伸びしろしかない!」
そう思った私は、針生検の結果が出るまでの2週間、とにかく生活習慣を改善することにした。

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