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映画「さざなみ」 人の心はやわらかくて壊れやすい。すべてを正直に話さなくても…。

『さざなみ』塩辛い映画だった。

長年連れ添った夫婦の関係が1通の手紙によって揺らいでいく様子を通し、男女の結婚観や恋愛観の決定的な違いを浮かび上がらせていく人間ドラマ。結婚45周年を祝うパーティを土曜日に控え、準備に追われていた熟年夫婦ジェフとケイト。ところがその週の月曜日、彼らのもとに1通の手紙が届く。それは、50年前に氷山で行方不明になったジェフの元恋人の遺体が発見されたというものだった。その時からジェフは過去の恋愛の記憶を反芻するようになり、妻は存在しない女への嫉妬心や夫への不信感を募らせていく。「スイミング・プール」のシャーロット・ランプリングと「カルテット!人生のオペラハウス」のトム・コートネイが夫婦の心の機微を繊細に演じ、第65回ベルリン国際映画祭で主演男優賞と主演女優賞をそろって受賞した。

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人生の晩秋を迎えて、45年も寄り添ってくれた妻に全てをさらけ出さずとも良いのになあ。きっと話さないほうが良いこともあるのだろう。

ジェフよ、いくら愛する妻とはいえ、相手の全てを知ることは不可能だし、自分のすべてを同じように理解してもらうことは不可能に決まってるじゃあないか。

人は何らかの秘密を抱えて生きていくもの。そんな話は墓場まで持っていってくれ。

長年連れ添って馴れ合ううちに妻と自分の境界がわからなくなってしまったのか、認知機能の低下ゆえのことなのか、取り戻せない過去にとりさわられてしまったのか。

ケイトが表情で物語る映画だった。よくよく思い出して見れば、爆発するまでは、彼女が一人でいる時に限ってホントの顔が這い出してきていた。リアルで考えても、あちこちで起こっていそうな話であるし、実体験でも思い当たることがあって、なおさらしょっぱさが増した。

それにしても、最初は寛容に許し、和解の手を差し伸べ、その話はやめてほしいと意思表示をしていたケイト。セーフはそこまで、たとえ許されたとしても禍根を残しただろう。ケイトの瞳に諦めの光が宿りだしてからは、負の感情のオンパレードだった。静かな怒り、自分への嫌悪、相手への軽蔑、生理的な嫌悪感が膨らみラストシーンへ。心のなかに棲む鬼が顔を出した。

ビビリの私は瞬殺された。笑

気持ちのすれ違いのまま、このまま一緒に暮らし続けるのも辛いこと。

愛が冷めた後の二人の今後の人生にはどんな結末があるのだろう。百のカップルがあれば百の答えがあるのだろうが…。

「人間の完成は目を閉じる時、未来がなくなり全てが過去になる時」と誰かが言ってた。最後まで気を抜けないのが人の一生だ。

knock on wood


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