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不思議な鏡



屋敷の裏にこっそりと置かれていた古い鏡。雨風にさらされ続けているのになぜか曇らない。
ケヤキ、クス、マテバシイなどの落葉樹に囲まれて温かい季節はすっかり隠れてしまうけど寒い季節は枝のすき間からよく見える。

どうして家の中でなくて、裏庭に置かれたのか誰も知らない。その鏡はおじいちゃんが子供の頃にはすでにそこにあったという。誰も家の中に入れようとはしないし、でも捨ててしまおうともしない。不思議な鏡。

だから子供たちは宝物を隠す時に鏡の裏とか、鏡の前の地面とか、鏡の周りに生えている樹木のうろとかにしまった。大人たちは来ないし、他の家の子供たちもここを知らない。秘密の場所。




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