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皮肉の皮肉

その日少年は小説を書いていた。
その小説は独自のセンスを展開している。
この物語は我々の住む社会に危険信号のランプがあり、それは日々点滅し続けていることについての人類、そして地球にとっての「皮肉」を交えた作品になっている。

作品が完成したので少年は早速、インターネットに投下しようとしていた。

すると、後ろのドアが開いた。

驚いた少年は手を止め、後ろを振り返る。
するとそこには見知らぬ大人が立っていた。

「僕は未来の君さ」

大人はそう言った。少年は突然のことで頷くことしかできなかった。

「今僕は一時的にこの時代にタイムスリップしてきた。君に1つ伝えたいことがあってね。」

未来の自分は困惑している僕にお構いなしに話を続けた。

「今君は、物語を書いているだろう。
それは自分が最も警鐘を鳴らしていることについて危機感を促すように書いている。
今の現状が続くといずれ訪れる恐怖や、それを見越した未来について書かれてある。
それは多くの人に知られることになる。社会に響くまるで電撃のような作品になる。そして多くの人の教訓になると錯覚する。」

だんだん目が怖くなる。

「今痛感する。流れ行く社会に抗ったとしてもその未来は変えられない。
考えてみてほしい。
その作品を書いたとて誰が見るのか。
国のお偉いさんか?
それとも気取ったただの凡人か?
それとも世界を異界で見張っている権力者か?
そんな風刺を書いたところで全ての人類、ましてや全ての生き物がこの作品を見て、感性や感想が一致しなければ、争いや戦争は永遠に起こるものだ。
こんな作品を作った所で根本というのは決して変わらない。」

僕は何も言えなかった。

「もうそろそろタイムリミットが来る。
これからの残りの人生、後悔しないように。

さようなら。」




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