伝記

食卓に並べられる青い空
本当はお惣菜がよかった
でも白い雲が出てきて
日々の感傷と一緒に
そのことも
忘れてしまった
窓は破れていて
繋ぎあわせればそれは
地図状になるけれど
何かを盗んだ気がするから
最初から世界なんて
なかったのかもしれない
かつて行き倒れたことがある
知らない人に介抱されるまで
道路の舗装が冷たく
身体を支えてくれていた
介抱してくれた人も
道路の舗装も
今はもう短い伝記になって
本棚の隅に置かれるだけになった
雲を掻き分けるように
一艘の飛行機が空を航行する
そのまま沖の方へと進み
声にならない汽笛を鳴らす
かじかんだ手を振ると
その形はいつも
さよなら
に似ているから
さよなら
と呟く

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