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タオタオ

可愛い動物を見ると泣けてくる。この現象に名前はあるのだろうか。
可愛いを通り越してこの尊い存在を守りたいとさえ思う。

動物がかわいそうな目に合うのはだめだ。恥ずかしいことだが大人になってからの話で、保護施設のドキュメンタリーを見てしまった夜、うなされた。夢に出てきて、涙を流しながら「うーん、うーん」と呻き目が覚め、こんなドラマみたいなうなされ方ってほんとにあるんだと驚いたほどだ。

これは架空のキャラクターにも当てはまる。むかし、愛・地球博のモリゾーとキッコロという公式アニメがあった。そのキッコロにハマり(当時ストレスを抱えていて疲れていたかもしれない…)、手のひらサイズのキッコロの人形をAmazonで入手して愛でていた。さらにDVDを揃えて一通り鑑賞したが、耐えきれなくて売ってしまった。
キッコロのけなげさと幼さ、可愛さに耐えきれなかった(病気)。おじいちゃんのモリゾーとはぐれて「おじいちゃーん!」とちっちゃい体にリュックをしょって(かわいい♡)探すシーンはぼろぼろ泣けた。が、こちらが胸が張り裂けそうになってついには見れなくなってしまった。可愛すぎて話が始まるとその姿を目で追うだけで涙が溢れてくる。見たいけど見れないがこのままではDVDをつけるだけで自身を消耗してしまう。そんな身勝手な葛藤を抱え、苦渋の判断でブックオフかどっかに買い取ってもらった。

4歳くらいだったと思う。タオタオという名前のパンダのアニメ映画があって、両親と見に行った。中国と日本の友好なんちゃらの映画で前評判を見聞きすることがあり、どうやらタオタオがかわいそうな映画らしいと知った上で気乗りしないまま見に行った。
映画館に入り、上映が始まる。もう気が気でなかった。いつタオタオが哀れなことになるのか。そしてその当時の私は、親の前で映画を見て泣くということがめちゃくちゃ恥ずかしいと思っていた。絶対泣きたくなかった。
映画が始まり丸っこいタオタオが出てきて、飼育員の女性との触れ合いも心和ませられ、非常にやばい状況に追い込まれてきた。もうすでに泣きそうだった。この愛らしいタオタオが、このあと…

タオタオが愛らしければ愛らしいほど、涙腺が刺激される。まだ序盤のなんでもないシーンなのに…
絶対に親に泣いてるところを見せたくなかった私は、強硬手段に出た。

「帰る」
「えっ⁉」
「つまらん、もう帰りたい」
「何言よるの、まだ始まったばかりやん」
「帰りたいー!」

わがままなクソガキに徹する道を選んだのだ。
親の気持ちを踏みにじる心の痛みももちろんあったが、保身に走った末の醜い悪あがきだった。4歳児にできる限界だった。

チケットを買ってわざわざ映画館まで連れてきてもらった罪悪感は甘えという形で許してもらえた。親も「せっかく連れて行っちゃったのに」とぶーぶー文句を言ってたので、それで少しは救われた。(何も言わず見過ごしてくれるよりはずっといい)

そののち、愛情の注ぎ先はペットに向かった。愛することも、失う辛さも知った。亀、金魚、シーモンキー、カブトムシ、雑種犬、柴犬を飼った。今でも亀と柴犬は生きている。
今は動物の動画を見るのは好きだ。ただし「三つ子の魂」何とやらで、安心して見られるものだけ選んでいる。
可愛さに耐え切れなくなっても羞恥心が薄らいできた今なら心置きなく涙を流せるので、存分にやっている。

※タオタオについて調べたところ、マイナーな映画だと思ってたのにデータがあって驚いた。
あらすじは、赤ちゃんの時に母を射殺され、その後日本で芸を仕込まれ人気者になるが戦争により人との別離を味わい、平和が戻っても望郷の念を抱いたまま生涯を終えるらしい。
これは見なくて正解だった。幼い私にはヘビーすぎる・・・
声優陣が大竹しのぶ、賠償千恵子はじめ今では大ベテラン勢の配役で豪華!

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