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孤独の阻害 【短編オリジナル小説】第二話


1話 知の誕生児

僕は生まれた。この地球の片隅に。自我のない状態で疑うことを初めて覚えた交換留学生モルレット少年の物語である。
この世の中に生を授かる上で、負の人格が最初に芽生える人間とは選ばれしものである。しかしその一方で人生は生きづらさという代償を味わう。
『僕は人生で受ける祝福のうち一番最初に受けるものとはなにかを考えることがある。多くの人は、生誕の祝福と答えるだろう。神から地の永住権を授かり多くの愉悦を味わうことを許される。
神から切り離され、世俗からも切り離された人間は、人間と呼ぶに値するのであろうか。』
高校1年生であったモルモットは度々疑問を呈した。周囲の人間は皆、青春生活を送っている中、場違いな話題で自己対話を行っていたことから変わり者のレッテルを貼られてしまっていた彼は、寂しさを覚えた。またその一方で孤独感は飽和してしまった。
孤独を至高と捉えたからである。孤立はいけないが孤独は至高ということは実際には的を得ている。
モルレットは、孤独であることは誇りに思っていたが、羞恥心をなぜか感じた。
体育のペア決めで余った末に英語のグループディスカッションでも溢れてしまったから当然である。彼の心は使い捨て雑巾のごとく、ズタボロになってしまっていた。人間の心は唯一無二の存在である。ガラス細工のごとく脆いので簡単に破壊することも出来るのだ。
モルレットの疑問がさらに膨らんだ。彼にとっての疑問とは唯一の友人である。彼がもしも友達と好奇心のどちらが大切か問われたら、後者を選ぶことに疑いはないだろう。彼が留学をした理由も日本の文化に触れたかったからであり、友達は付属品程度に思っていた。
友達をよく思わない彼はさらに孤独になっていった。最終的に彼はとある真理に到達した。人間とは相対的な評価を求める生物であるということであった。ひねくれものであった彼は、友達がいないこと自体が恥ずかしいのではなく、友達がいない奴であると思われることを嫌うとしたのである。つまり絶対的な事実は関係ないのに対して、相対的な評価をなしに人が生きられないと考えたのであった。
モルレットは周囲の雑音の中、自身の机にうつむきになりながら考えた。
『もしも、今ここで大天災があって皆が生命の危機に直面したらどうなるのであろうか』と。
人間という共同体を懐疑的に捉えていた彼は少し口をごもらせた。想像を口に出しかけてしまう癖に悩んでいるさなかである。
彼は協力なんてしなくても生きていくことは出来るが、人を信じないということが与える精神に与える絶対的な不利については考えたくなかった。
彼に足りないことは何かを考えて、誰かが教えてあげる必要があった。しかし、彼は一人で敵のいない第三次世界大戦の幻影を見ているため解決の糸口を見失っていることにも気づかないのである。 

➡続きはここから   

2話 運命共同体の精神

「不安とは傲慢である」 この言葉は、彼の恩師が残したいわゆる名言というものであろう。
彼はこの言葉を胸にしまって生きてきた。異文化交流という閉塞感に苛まれるなか、その事実が反芻されてより強固になったことは言うまでもない。
「人間は不安に感じるから、群れるのである。」永遠に止まる事のない時の中で、自分は何を感じるか….
過去に押される中、未来は手が届きそうで届かない存在。取り留めのない空間を生きる我々はまさに不安のイデアであろう。
しかし、モルレットいはく、「私が救いようのない人間であったならば、
想像をする権利を剥奪されるはず」とのことだ…
愚かな人間が多い中で、私のみが澄んでいるいるという論理を演出している彼を追い詰めたのは神か仏か…..あるいは自分自身なのであろうか….
彼はこの問いに対する答えを知っている。

--The answer is absolutely myself"---

彼はひねくれもので、協調性の欠片もない者であったが、自身の悩みは自分に由来すると気づいていたのである。
精神と身体は一心同体の運命共同体である。彼にとって、交換先の生徒との交流は二の次であり。彼が最も知るべきは、誰でもない「私自身」ということなのであった 2話終了

   次回の物語の進展もお楽しみに

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