月岡芳年 百の月をめぐる物語【太田記念美術館】
月には不思議な魔力がある。
基本的に人類は太陽の子だ。朝日とともに起き、日没とともに眠る。太陽の巡りを一年とし、光を擬人化して神を見出す。
……ところが、月光愛好者の派閥というのも太古の昔から脈々と途切れず存続しているんですよね。
20世紀の日本だと小説家・稲垣足穂が月光愛好者の頂点になるのでしょうか。彼は何度もエッセイにつづっています。太陽光ではなく、夜のネオンに彩られた菫色の六月の空の下、ダイヤよりガラスを、自然物よりメカニクスを、宇宙的郷愁をかきたてる月の光を。
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