『就活闘争20XX』(佐川恭一)感想
表題の本を読みました。佐川恭一の本は割とよく読んでいます。
超異次元の少子化対策が奇跡的にハマり、ウルトラベビーブームになることで競争が激化した時代の人気企業Z社の就職活動がテーマの小説でした。主人公はやはり、勉強しか取り柄のない京大生。
佐川恭一らしい学歴(の小さな差異)に対する異常なこだわりと清々しいまでのステレオタイプ化は、やはり健在で面白かったです。
特に「SNSのフォロワー10万人を24時間以内に獲得することが合格条件のインターンシップ」が印象に残りました。
「自殺配信を行い、(文字通り)犬死する広島大学の学生」や「SNSに投稿予定の漫才のネタがあまりにつまらなすぎて運営に殺される関西大学の学生」などあまりに際どすぎます。。
就職活動がテーマの小説ですが、Z社のそれは志望動機や自己PRなどが求められることがなく、もっぱら不条理な闘争(「OB訪問で自分の大学のOBを探し出せなければスナイパーに射殺される」「面接試験は他の志願者と物理的に戦い、負ければ殺される」など)によって就職試験が進んでいきます。
なので、どちらかといえば大学受験的な色合いが強く、例えば『何者』(朝井リョウ)とかとは全く違う力点の小説だと言えます(『何者』を読んだことがないですが…)
志望動機や自己PRによって他者に説明可能な自己を演出する(型嵌めする)のではなく、命の危機の瀕することで不可避的に得られる自己の本質をexposureすることによってこそ、真に人間が立ち現れてくるということ。
「考えること」や「言語化すること」、「能動性」などが称揚される現代日本の状況に対するアンチテーゼとして面白いと思いました。
またAKBが意外と作中の中の重要なモチーフになっているような気もしましたが、僕はAKBについてよく知らなかったのでわかりませんでした。
(『前田敦子はキリストを超えた: 〈宗教〉としてのAKB48』をまた読んでみるか。)