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『ゼッタイ!芥川賞受賞宣言 ~新感覚文豪ゲームブック~』(佐川恭一)感想

表題の本を読みました。
ゲームブック本を読むのは記憶する限り生まれて初めてだったのですが、ページを行ったり来たりするのが楽しかったです。

電子書籍版を購入

”TRUE END”, ”END”, ”GAME OVER”すべて合わせて、19種類ぐらい結末がありました。

内容の感想としては、「ただただ面白かった」としか言いようがないです。登場人物の思考や行動の「卑小さ」や「下品さ」に笑わされてしまうのは、いつもの佐川恭一作品と同じで、面白さ以外の文学的な「深さ」などを見出しにくいのも、いつもの佐川恭一作品と同じでした。

以下ネタバレ


















特に僕が心に残ったのは、
「1→13→31→11→35→43」からの17エンド40エンドのコントラストです
(「就活イベントに参加せずに、投稿予定文学賞の表の作成をexcelで行い、小説執筆のノウハウ本を読んだ後、母親からの煽りにブチ切れながらトーストにバターを塗り、美人読書家とディズニーに行く」ルートの2つの結末が、17エンドと40エンドです。)

上記図のオレンジ部分

17エンドは美人読書家と結局結ばれ、出版社を経営することになりますが、芥川賞などの文学賞を受賞することはない

40エンドは逆に、芥川賞など飛び越えてノーベル文学賞まで受賞することになるが、美人読書家と結ばれることはない(というかパートナーすらできない)。

どちらも割とhappy endですが、公的な成功と私的な幸せを両立することができずに、どちらか一方を選択することになるわけです。
その結末が「美人読書家からの自作への批判に、言い返すか/受容するか」で決まるのは面白いなと思いました。

中学受験の単元「場合の数」で
ひたすら樹形図を書いて問題を解いていたことを思い出しました。

 最終選考の日、君はいつもより早く目を覚ます。食パンを焼いて皿に乗せ、テーブルに置く。冷蔵庫を見るといつもは見ない「小倉あん」があったので、おっ、と思いそれを取り出そうとするが、母親に「コラッ」と手を叩かれる。

「なんやねん!」
「あんたはバターにしなさい。まだ余ってるから」
「俺は小倉あんが食べたいねん、別にええやんけ!」
「絶対あかん!勤めもしないくせに、あんたに小倉あんなんて百年早いわ」

11
p.58 
母親からの煽りにブチ切れながら
「トーストにバターを塗る?」or「家を飛び出す?」



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