【イベントレポート】海外広報 イロハのイ勉強会 〜国内広報と何が違う?ゼロから始めるグローバルPR~
天地人は、2050年にも持続可能な地球環境を目指して活動するJAXA認定ベンチャーです。宇宙ビッグデータをWebGISサービス「天地人コンパス」で解析・可視化することで、まだ誰も気付いていない土地の価値や地球の資源を明らかにするサービスを提供しています。
今回は、9月27日に行われた海外広報勉強会について取り上げます。本記事では、その勉強会の様子や講演内容の一部、さらに参加者同士で共有された気づきについてご紹介します。
海外広報勉強会とは
現在天地人は、東南アジア、ヨーロッパへの事業展開を進めています。しかし、海外広報の経験が少なく、課題が何かさえ明確になっていない状況です。そこで、専門家の方々に知見を共有いただく機会を設けることにしました。
せっかく専門家から勉強させていただくなら、同じ課題感を抱える広報担当の皆さまにも共有したい! そして、共有された知見を実践するプロセスや、気付きを共有し合える場をつくりたい。そんな想いで、今回のイベントを企画しました。
登壇者紹介
今回お招きしたのは、神村優介さん、藤本あゆみさんです!
まず神村優介さんは、世界14カ国で200社以上のPRを支援する「シェイプウィン株式会社」の代表取締役です。メディア露出やSNS、SEOなどを活用したワンストップのPR・デジタルマーケティング支援を行い、国内スタートアップの上場支援や北米ユニコーン企業の日本進出をサポートなどを行ってきました。現在は北米支社で日本企業の北米市場進出を支援しており、本日はリモートでご参加いただきました。
そして藤本あゆみさんは、一般社団法人スタートアップエコシステム協会 代表理事になります。藤本さんは前職で世界60以上の拠点に展開する「Plug and Play」の日本法人で海外PRを担当されていました。Plug and Playはシリコンバレー発のイノベーションプラットフォームとして、グローバルネットワークを培ってきました。今回はご自身のご経験で力を入れた、コミュニケーション戦略を中心にお話していただきます。
北米での広報戦略のイロハ
ここからは神村さんご自身の経験に基づき、北米メインの視点から海外広報について紹介していただきました。特に重要なポイントを取り上げて解説していきます。
今までの前提は通じない!海外のローカライズ戦略
海外広報において、日本の広報と手段における大きな差はありませんが、コミュニケーション戦略において全く異なる認識を持つ必要があるそうです。そのため、人種や言語、商習慣に合わせたローカライズが鍵となります。
例えば、日本は権威性に弱いという特徴があるため、組織のベネフィットを謳う発信の方が受けが良いです。
また北米では、個人主義でローカルニュースやポッドキャストが人気だそうです。
このような地域の特徴、趣向は海外広報において大きく異なるので発信の仕方にも注意が必要ですね。
海外のプレスリリース
日本のプレスリリースを振り返ると、画像を複数載せた情報量の多いリリースが主流だと思います。できるだけ多くの情報を提供し、メディアがその中からピックアップして転載できるようにされています。
一方、海外では情報量が多すぎるリリースは好まれない傾向があります。特に米国ではジャーナリズムが重視されており、記者たちは「自分が書いた記事」であることを強く意識します。そのため、リリースに含める情報は最小限にし、限られた文章の中で自分のオリジナル性を発揮する必要があります。メディアは興味を持った場合に、そこからさらに取材を通じて深掘りしていくのです。
海外のプレスリリースの配信に関しては、BtoBならBusinessWire、BtoCならPRnewsWireの利用がオススメとのことでした。
担当記者の見つけ方
では効果的な発信をしていく中で、どうメディアを探してコミュニケーションをしていくのでしょうか。ここでは、3つの方法を紹介していただきました。
① 記事のAuthorページ
日本と異なり、海外の記事には記者の連絡先が記載されていることが多くあります。よく記載されているのは、メールアドレス、LinkedIn、Facebookなど。そこから直接連絡を取るのが最も迅速で効果的な方法です。
例えば、ある新製品の発表をPRしたい場合、その分野で多くの記事を書いている記者を見つけ、その記者のAutherページで連絡先を確認します。そこからメッセージを送り、製品や取材の依頼をすることが可能となります。
② PRソフトウェアでアドレスリスト購入(CISION, Muck Rack, Agility PR Solutions)
こちらは課金が必要になりますが、すばやく連絡手段を探す方法として効果的です。藤本さんのおすすめはシジョンでした。
③ ソースオブソース
こちらはメディアの検索を無料で行うことができるプラットフォームです。自分が取り上げて欲しいテーマを入力すると、それに関連した記者の情報を提示してくれます。
メディアにでるだけでは海外広報は上手くいかない!時代はマルチチャネル
海外広報においては、単にSNSのような特定のチャネルを極めたり、一度メディアに取り上げられたりしただけで成功するということではありません。ターゲットや目的に合わせて、ポッドキャストやSNS、アワードを取りに行くPRなど、さまざまなチャネルを組み合わせて活用することが求められます。そしてより幅広い層に効果的にメッセージを伝えます。
驚くことに、消費者が購入を決定するまでには、平均して3〜5つの異なるチャネルから情報を得ていることが分かっています。(マッキンゼー調査)例えば、SNSで企業に出会い、次にポッドキャストで深い内容を聞き、さらにアワード受賞などの実績を目にすることで、その企業への信頼感が高まります。つまり、消費者が企業や商品に触れる機会を増やし、様々なチャネルを通じて自社への興味を育むことが重要です。
クロストーク
海外広報の事例を学び終え、次は登壇者によるクロストークが行われました。
このパートでは、参加者から事前にいただいた質問や天地人も聞きたかった質問を取り上げました。今回は、メディアとの距離の縮め方やLinkedInの使い方に関する議論が盛り上がったので紹介します。
海外メディアとどのように距離を縮めているか?
前パートで神村さんにお話いただいた「記者の見つけ方」に続いて、お二人から海外メディアとの距離の縮め方についてお話いただきました。
例えば、思った以上に村社会!
誰の紹介で連絡を取ったのか、過去の実績はどうかといった点が日本以上に重視されることが多く、不十分な説明では相手にされないこともあるそうです。
また個人主義ということもあり、「誰がこの記事を書いたか」という意識は日本より強い傾向にあります。そのため、関係構築をしたいメディアの方の記事を見てなかったらもちろんお話にならないだとか・・・・・・
1対1のコミュニケーションを大切にしており、一括りでこのメディアと捉えてしまうと痛い目を見てしまうそうです。捉え方の違いは海外広報において意識しなくてはならない点ですね。
LinkedInの重要性と使い方がいまいち分からない!
こちらの質問は天地人が非常に悩み続けていた質問でした。海外メンバーも所属しているにも関わらず、LinkedInを使ったコミュニケーション戦略を分かっておらず、なかなか力を入れることができていないという現状がありました。
結論、「海外広報においてLinkedInの活用は必須」でした。
まず、LinkedInの個人ページは名刺と捉える必要があるそうです。
自身の履歴書兼自分のアクティビティを示すものであり、打ち合わせ前には必ず事前にチェックされます。日本でいうFacebookのような感じですね。
そして、LinkedInの企業ページも同様、会社紹介でもあり、さらに広告媒体としても働きます。日本では、LinkedInに対して転職イメージが強いかもしれませんが、そんなことはなく、テレアポのようにセールスの手段としても展開されます。
また、英語で発信すべきかという点についても触れました。
答えは「YES」
もちろん日本語を翻訳してプロフィールを確認してもらうこともできますが、翻訳はニュアンスが変わってしまうことがあり、「うーん、良く分からないからこの人は別に興味ない」と、ネガティブに働いてしまう可能性があるそうです。
認識として、日本の企業はFacebook、海外の企業はLinkedInを使うということを意識する必要がありますね。LinkedInは全部英語に振り切り、Facebookで日本語を使うといった企業もそこそこあるそうです。天地人もこれからは、この使い分けを意識して投稿していきます!
グループ共有&質問タイム
最後に参加者の中でグループを組み、疑問を共有し合う時間がありました。グループ内で解決しなかった疑問は全体質疑で登壇者へ質問します。
ここでは全体質疑で特に理解が深まり、印象に残った質問と回答を紹介します。
LinkedInにおけるコミュニケーションの取り方について
~「日本でよくある一気に会社紹介と提案を送る」VS「じっくり関係構築」~
質問:LinkedInにおけるメッセージの送り方として、対日本企業同様、会社紹介や提案など長文を一気に送ってしまうべきなのか、それともフォローから始めて、じっくりと関係構築をするべきなのか迷っている。また、有料アカウントも使うべきなのか。
藤本さん:自分が一番最初にやるとしたら「アカウントを育てます!」
「自分たちは何者なのか」ということを証明することは関係構築において非常に大切であり、フォローやメッセージが来た際の最初の印象が決まるそうです。
神村さん:「日本人がよくやる最初にたくさん送る手法は海外ではあまり使えない!」「Hi △△! Are you interested in ○○ ?」
のような2行以内のカジュアルなコミュニケーションが主流とのことです。全くカルチャーが異なり、非常に衝撃を受けました。
傾向として、日本はメッセージにおける文章にすべてをこめる印象がありますが、外国ではカジュアルなコミュニケーションをとり、自分のプロフィールや投稿でたくさん書き込むそうです。有料プランにして長文を送るための課金は必要はないとのことでした。
加えて、関係構築に関して「仲を深めて取り上げてもらう」ということはあまりないそうです。単純に事業内容や記事が興味深かったら取り上げるというスタンスだそうです。その点でいうと、非常にフェアな環境ですね。
おわりに
今回の記事では、海外広報勉強会の振り返りとして、ご経験に基づいたコミュニケーション戦略やSNS活用、日本と海外の違いという観点を中心に紹介しました。「イロハのイ勉強会」というタイトルのもと、天地人も0の状態からたくさん学ぶことがありました。特にコミュニケーションの取り方やLinkedInに対する議論は盛り上がり、強く印象に残ったことと思います。
今回のイベントを通しての気づきを手探り状態にはなりますが、アクションに移し、参加してくださった皆様へ共有していきたいと考えております。今後は、同じ日本の海外広報担当として、学びを深め合える関係を目指していきます。
天地人では、衛星や地上の様々なデータとAIを活用して、課題解決に向けて情報分析、ソリューション提供を行っています。ご質問等ございましたら、info@tenchijin.co.jp までお気軽にお問い合わせください。
(記事作成:事業開発インターン 寺田胡桃)
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